LIFE

不妊治療のリアル ~夫婦関係、お金、治療のやめどき~

どんなに頑張ってもダメなことってあるんだと

不妊治療の末に、女優・瀬奈じゅんさんが選んだ「特別養子縁組」とは?

2024.08.18

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Interview

子どもを“育てたい”のなら

「特別養子縁組」という選択

選択肢のひとつとして、知っておきたい養子制度のこと。特別養子縁組制度で子どもを迎えた瀬奈じゅんさんに、お話を聞きました。

特別養子縁組とは?

さまざまな理由で産みの親が育てられない子どもを家庭で養育できるように、子どもの福祉のために作られた制度。養子となる子どもは、実親との法的な親子関係を解消。家庭裁判所の審判によって、要件を満たす養親と戸籍上も親子関係を結び、安定した家庭環境で育つことができます。

女優

瀬奈じゅんさん

子どもを産みたいのか、育てたいのか、自分の気持ちと、しっかり向き合いました

瀬奈じゅんさん

瀬奈じゅんさん

PROFILE

せな・じゅん●1974年4月1日、東京都生まれ。元宝塚歌劇団月組トップスターで、退団後も女優として舞台などで活躍。2012年に俳優の千田真司さんと結婚。特別養子縁組で2018年に第1子、2023年に第2子を迎える。夫婦の共著に『ちいさな大きなたからもの〜特別養子縁組からはじまる家庭のカタチ〜』(方丈社)。現在、舞台『モンスター・コールズ』に出演中。
公式サイト:https://www.toho-ent.co.jp/actor/1073
Instagram:junsena_official



どんなに努力しても叶わない、不妊治療で心が不安定に

結婚後まもなく、不妊治療を始めたという瀬奈じゅんさん。すぐに心身に負担を感じるように。

「ホルモンバランスはめちゃくちゃになるし、自律神経も乱れてきて。体がつらいので外に出る気力もなく、ソファで横になって天井を見つめていました。着床はするけど育たないことが続き、頻繁に妊娠検査薬を試しては一喜一憂。家族や周りのスタッフの心配すらつらく、みんなが私を腫れ物のように扱っているとも感じていました。私はこれまで、宝塚に入ってなりたい自分になってきて、努力すれば思いは叶うと信じてきた。でも、不妊治療を経験して、どんなに頑張ってもダメなことってあるんだと初めて実感しました」

見かねた夫からこんな提案が。

「体外受精で妊娠に至らず落ち込む私に『特別養子縁組っていう選択もあるんじゃないかな』と。夫はチャイルドマインダーという保育にまつわる資格を持っていて、以前から制度について知っていたよう。このときは『あなたの子どもがほしくて頑張っているのに!』と思ったのですが、その後もいい結果は出ず、半年ほどたった頃にふと『私は、産みたいのか育てたいのかどっちなんだろう』と考えるように。このときに、特別養子縁組についても調べました。そこで知ったのが、親が育てられない子どもが日本に約4万5千人もいるという現実。

ひとりでもこの数字を減らせるならと、私の中で何かが切り替わりました。その後、夫とサポート団体のセミナーに足を運び、実際に特別養子縁組で子どもを迎えた家族に会うことができて。みんな驚くほど感じがそっくりで、血のつながりではなく、同じ食べ物を食べて、笑顔を交わし、一緒に生活することで家族になるんだなと。また、特別養子縁組は子どものための制度ではあるのですが、ある団体で『子どもを育てたいから不妊治療を頑張ってきたはず。その末の選択肢として、特別養子縁組があってもいいのでは』と言ってもらえて気持ちが救われ、私たちも覚悟を決めました」

養子であることは子どもにも周りの友達にもしっかり話す

必要な手続きを進め、2018年に第1子を、2023年に第2子を迎えることになりました。

「上の子は6歳になりますが、たくさん幸せをもらっていて、本当に授かれてよかったなと。コロナ禍で2人目は迷ったのですが、上の子の弟か妹がほしいという思いが強く、昨年迎えたばかり。必死に妹の世話をする上の子がかわいくて仕方ないですね。特別養子縁組では、子どもに事実を話す“真実告知”を行うのですが、わが家では赤ちゃんの頃から『あなたにはママと、産んでくれたママの2人のママがいるんだよ』と話しています。

また、保育園でも最初の挨拶で『特別養子縁組という制度で授かった子どもですが、ほかのご家庭と何ら変わらないので、仲よくしてください』と。みんな気兼ねなく付き合って、気になることは聞いてくれますね。特別養子縁組を知ってもらうために、まずは私たちがしっかり話していきたい。そしてできれば、不妊治療を始める前に、選択肢のひとつとして特別養子縁組も検討してもらえるようになるといいなと思います」

Staff Credit

撮影/名和真紀子 ヘア&メイク/松元未絵 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
こちらは2024年LEE4月号(3/7発売)「不妊治療のリアル ~夫婦関係、お金、治療のやめどき~」に掲載の記事です。

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