LEE Special Interview かけがえのない「刻」を重ねて
ドラマ『黄金の刻〜服部金太郎物語〜』主演
【西島秀俊さんインタビュー】手を差し伸べてくれた人がいたから今の僕があると思う
2024.03.22
LEE Special Interview
かけがえのない「刻(とき)」を重ねて
渋い表情もやさしい笑顔も、すべてが素敵な西島秀俊さん。3月には「東洋の時計王」と呼ばれた服部金太郎氏の生涯を描いたドラマに主演します。ドラマの魅力や、作品にかける意気込みをお聞きしました。
Profile
1971年、東京都生まれ。’94年『居酒屋ゆうれい』で映画初出演。以降、硬派な作品からコメディまで幅広いジャンルの映画やドラマに出演。ドラマ『MOZU』シリーズ、『きのう何食べた?』シリーズなど代表作多数。映画『ドライブ・マイ・カー』(’21年)では、全米映画批評家協会賞でアジア人初の主演男優賞を受賞した。
公式サイト:https://quartertone.jp/nishijima/
「おもしろいじゃん、やってみれば」と、手を差し伸べてくれた人がいたから今の僕があると思う
Hidetoshi Nishijima
人と人が出会うことで生じる、ダイナミズムを表現したかった
日本を代表する時計メーカーの創業者・服部金太郎の生涯を描いたドラマ『黄金の刻〜服部金太郎物語〜』で主役を務めた西島秀俊さん。抜群の経営センスと人を見抜く力で、小さな服部時計店を世界的な企業へと成長させていく金太郎を力強く表現しています。
「丁稚奉公だった金太郎が、明治・大正・昭和という激動の時代を仲間とともに乗り越え、事業を成功させていく。トラブルに巻き込まれてもマイナスをプラスに変えていく金太郎からは、僕も明日へのエネルギーをもらいました。また、金太郎は人が一番の財産だと考えていて、個性豊かで才能あふれる職人を育ててきました。人と人が出会うことで、より大きな力になっていくダイナミズムが表現できていればうれしいですね」
金太郎の妻・まんと、初恋の人・浪子を巡る恋模様も、今作の見どころのひとつ。
「まんは金太郎にとって“同志”のような存在。13人もの子どもを育てながら、金太郎や従業員のことを支え、励まし続けたんですね。一方、浪子さんとは若い頃に『世界で一番の時計商になったときは、また再会しよう』という約束を交わしていて、その約束が金太郎を成功へと導いてきた。二人とも金太郎には欠かせない存在です」
それにしても金太郎の古希の祝いの席に浪子を招待する、まんの度量の大きさには驚かされます。
「まん役の松嶋菜々子さんと話したとき、金太郎とまんは、何十年も連れ添ってきて何にも揺るがないという自信があるから、浪子を呼べたんだろうと。むしろまんは浪子に感謝しているんじゃないかとおっしゃっていて。パートナーを大きく包み込むまんの包容力にあらためて感心しましたし、松嶋さんの大きさも感じましたね」
若い人が可能性を自由に発揮できる現場が一番健全
人とのつながりを大事にした金太郎。俳優という仕事もまた生身の人間がぶつかり合う仕事です。
「俳優さんはみんな個性が強くて、現場ではそれぞれまったく違う解釈をしていることもあり、『えっ、同じ台本だよね?』みたいなことがよく起きます(笑)。でも、そういう中で、みんながガッと火花を散らしながら作品を作り上げるのが一番楽しいところですね」
いいケミストリーを生み出すために、西島さんが心がけていることはあるのでしょうか。
「若い俳優や若いスタッフが楽しそうにしている現場は、いい作品が生まれるんですよね。逆に若いスタッフが疲れた顔をしていて、上の人たちだけが楽しそうな現場はいい作品にならない。
だから僕はとにかく若い人たちに、『自由にやりたいことをやって』と言っています。上の顔色を窺うことなく、若い人たちが自分の可能性を自由に発揮している現場が一番生き生きとしていますね」
西島さん自身も若い頃、「好きにやれ」と言ってくれる先輩方にしばしば助けられたそう。
「自分が信じるものを頼りに突っ走って、無茶なチャレンジをすることがよくありました。『何やってんの? 無理に決まってんじゃん』という人が多い中で、『おもしろいね、やってみれば?』『あとは何とかしてやるからさ』と無償の手を差し伸べてくださる先輩方もいて大きな支えになりました。その経験が、間違いなく今の自分を作っていると思います」
人を愛し、信頼しているから、西島さんのもの作りへの意欲は尽きることがありません。
「一緒に仕事したい監督、カメラマン、俳優さんが星の数ほどいて、時間が全然足りないという感じ。人間って不思議だな、おもしろいなと思うような作品をこれからも作り続けていきたいです」
Information
テレビ朝日ドラマプレミアム
『黄金の刻〜服部金太郎物語〜』 3月30日(土)夜9時~
学業優秀で勤勉な銀座の古物商の一人息子・服部金太郎。14歳で用品雑貨問屋に丁稚奉公に出た彼は、近隣の時計店の技術を目の当たりにし、時計商になることを決意。激動の時代の中で幾多の試練を乗り越えて“東洋の時計王”になるまでを描く。楡周平の小説『黄金の刻 小説 服部金太郎』(集英社文庫刊)を完全ドラマ化。
Staff Credit
撮影/木村 敦 ヘア&メイク/亀田 雅 スタイリスト/カワサキ タカフミ 取材・原文/佐藤裕美
こちらは2024年LEE4月号(3/7発売)「LEE Special Interview 西島秀俊さん かけがえのない「刻」を重ねて」に掲載の記事です。
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