【賀来賢人さんインタビュー】Netflixシリーズ「忍びの家」で、主演/原案を務め、新たな境地に!
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折田千鶴子
2024.02.21
自ら企画・プレゼンした「忍びの家House of Ninjas」
この取材の話をしたところ、想像以上に、“賀来さん、ステキよね~♡”と色めき立つ編集者やライターの知人・友人がわんさか!! 確かに年を重ねるごとに、益々素敵になっていくなぁ……と長いこと思って来た賀来賢人さん。余談ですが、自分の中では映画『森山中教習所』(16)でカッコイイ~と痺れ、「宇宙の仕事」(16)でお腹を抱えて笑ったなぁ、という印象が強く残っています。どちらも超おススメなので、賀来さんを深堀りしたい方は是非。 さて今回は、そんな賀来さんが主演のみならず、原案も務めた作品についてお聞きしました! それが、Netflixシリーズの全8話からなる「忍びの家 House of Ninjas」です。
賀来 賢人 1989年、東京出身。2007年に映画『神童』で俳優デビュー。09年に『銀色の雨』で映画初主演。近年の出演作に、ドラマ&映画『今日から俺は!!』(18~20)、ドラマ「ニッポンノワール-刑事Yの反逆-」(20)、「死にたい夜にかぎって」(20)、映画『新解釈・三國志』(20)、ドラマ&映画『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』(21~23)、ドラマ「マイファミリー」(22)など。Netflixシリーズ『忍びの家 House of Ninjas』は、2024年2月15日(木)より世界独占配信中。
まず、“原案”の部分から教えてください。アイディアはどこから生まれたのでしょう?
「僕の中では“忍び”というカルチャーが、日本人にとって当たり前で、どこか“おざなり”になっているように感じられたんです。子供と忍者村に遊びに行った時、そのことを強く感じて。子供はもちろん興奮しているし、周りの外国の方々もメチャメチャ興奮している。でも僕ら大人は、“現実にはいないよな”みたいな感覚になってしまうのが勿体ないな、と。それをエンタメ作品として昇華できたら、きっと世界中が楽しめる作品になるだろうと感じたのが発端です」
そこから企画には、どう起こしていったのでしょう?
「ちょうど緊急事態宣言の時に、「死にたい夜に限って」というドラマでご一緒した村尾嘉昭監督と“何か作ろう”とzoomで話していたんです。当時は時間もいっぱいあったので、2人で色々考えたり話したりしていて。そうして“忍者”、さらに“普遍的なもの”というキーワードが僕の中で生まれたんです。僕にとっての普遍的なものって何だろう、それは“家族”だな、と。そこで、“忍者”と“家族”を合体させることから始めて。ところが村尾さんと話しているうちに、“あれ、俺たち文が書けないぞ”ということに気付き(笑)、役者としても活動しつつ脚本も書ける今井(隆文)君を巻き込んで、僕らが言ったことを彼にひたすら文にしてもらい、企画を提出しました」
「忍びの家 House of Ninjas」ってこんな物語
◆Story◆
ある家業の酒蔵を隠れ蓑に、古い巨大な屋敷に暮らす俵一家は、実は服部半蔵直系の最後の優秀な“忍び一家”。かつては家族全員が“エリート忍び”として忍者管理局から重宝されていたが、6年前に任務の遂行中に長男の岳(高良健吾)を喪って以来、“忍び”を捨て、一般庶民として生きていくことに。しかし国家を揺るがす事件が起き、忍者管理局の指示によって一家は半ば強引に事件に巻き込まれていくーー。心に深いトラウマを抱える“元・忍び”の晴に賀来賢人、その父に江口洋介、母に木村多江、妹に蒔田彩珠、末の弟に番家天崇、祖母に宮本信子。他に吉岡里帆、柄本時生、田口トモロヲ、山田孝之ほか共演。Netflixにて世界独占配信中。
企画を提出した時、既に手応えを感じましたか?
「僕は常に根拠のない自信があるので(笑)、絶対にイケると思って提案しました。直接Netflixの方とお会いしたところ、すごく可能性を感じてくださって。もっとキャラクターとストーリーに広がりが出たら、という話になり、Netflixさんがデイヴ・ボイルというクリエイターに繋げてくれたんです。そうしたらデイヴが、僕たちの企画書を何十倍にも広げてくれて、ゴーサインに至りました。アメリカ人の彼は日本のカルチャーに詳しく、“忍者”にも強い興味を示してくれて。日本人から見た忍者とはまた違う、面白い視点で描いてくれました」
確かに、“観たことのない忍者作品”という印象を受けましたが、“一味違う面白い視点”を、賀来さんはどこに感じましたか?
「例えば、“忍者”って実はすごい縛りがあるんですよ。肉を食べてはいけない、酒を飲んではいけない、セックスしてもいけない等々。そういう面白い縛りを付加して、今回は“とても窮屈な忍者”を表現しています。読んだ時、“なるほど、その手があったか!”と驚きました」
主役兼プロデューサーとして現場に立った感想は?
実際にプロデューサーという立場が加わり、現場では何か変わりましたか?
「スタッフ・キャストの皆さんが、どれだけやり易い環境で仕事ができるか、ということを常に気に掛けました。どんな脚本でも役者が実際に演じようとすると、“これじゃ動けない”とか“会話ができない”という状況が生まれるものなんです。そういうことを僕が現場で見ているので、誰かが迷いを感じていたら、すぐに飛んで行きました。とはいえ僕は監督ではないので、基本はデイヴら監督に任せ、僕はあくまでディスカッションの場を作ることに注力しました」
同時に主演の立場としても、現場のムード作りをされましたか?
「僕、主演作でも普段からそういうことをやらないのですが、僕が楽しそうだとみんなも楽しそうになる、ということは勝手に信じているんです。それは今回も忘れなかったです」
実際に自分が晴を演じる時は、どうでしたか。
「自分が(製作段階から)自分の役にも関わっていましたが、自分に寄せた役ではないので難しいかと思いましたが、役に対する理解がすごく深かったので、なんら迷うことなく演じられました。だからデイヴとも現場で、“こういう撮り方をするけど、どう?”という話し合いや、“真逆の表情も撮ってみよう”といった提案も出来ました。ただ次は、プロデューサーだけに専念してみたいな、とも思います」
次は監督にも挑戦を?
「みなさん、“もしシーズン2が出来たら、次は自分で撮れよ”と言って下さるんですが、主演と監督を兼ねるのは無理っす! そうしたら自分の(役の)準備ができなくて、どっちもおろそかになりそうな気がするので……。監督のみなら出来るかもしれませんが……う~ん、それにも経験値が足りないかな」
可愛い家族にしたかった
シリアスな展開の中にも、コメディ要素が随所に挟まれています。そうした方向性も最初から決めていましたか?
「ですね。僕は、俵一家を“可愛らしい家族”にしたかったんです。懸命に生きてる人たち、且ついろんな世代によって構成されている家族を僕が見たかったんです。だから末っ子の弟は赤ちゃんに毛が生えたみたいだし、ティーンの長女がいて、僕がいて、6年前に亡くなった兄がいて。そして父と母、さらにお祖母ちゃんがいて。全世代を網羅しました」
その家族のキャラが、みなユーモラスです。特に江口洋介さん扮する一家のお父さんが、家族みんなに分かってもらえていない“ちょっと孤独を感じる”姿に、つい噴き出してしまって。家族の描写としては、どんな点にこだわりましたか?
「なるべく説明セリフをなくす、ということ。いかに説明をなくし、空気感と短いセリフと表情で家族というものを伝えられるか。それはチャレンジでした。一応は僕が主役という形になっていますが、家族みんなが主役である、というのも今回のテーマでした。だから出演シーンの分量も、ほぼ全員に均等に割り振られているんです」
「みんなそれぞれ葛藤を抱えていますし、謎も抱えています。その辺りを丁寧に、少しずつ描くことにもこだわりました。最初から“この人はこうだ”と打ち出すのではなく、少しずつページがめくれていく感じーーある種、最も難しいやり方をしてしまったな、と思いましたが(笑)。でも、だから視聴者は回を追うごとに、どんどんこの家族に共感してくれると思います」
全世代が一緒に暮らしているという“古き良き家族の形”であると同時に、キャラクターはみな“今”を映していますよね。例えば、お母さんの、実は跳ねっ返りで少しエキセントリックなのが、とってもキュートです。現代的な味つけにも、こだわったのでは?
「そうですね。先へ進めば進むほど、女性の方が強いんですよ(笑)。それは結構大きなポイントですね。ただ、やっぱりお父さんがバッと出てくる時は、家族を守る一番のヒーローになる。そこで少し娘が父親を見直す、みたいな構造も作りたかった。何より注目して欲しいのは、お祖母ちゃん。何気に最強だったりするんですよね(笑)」
一方で、忍びという“影で生きる報われなさ”みたいなことを、俵家の面々は感じてもいるのでしょうか?
「俵家って、普通になろうとしている人たちです。元が普通じゃないというか、忍びって、上から「殺せ」と言われたら、殺さなきゃいけない世界。そういう環境の中で育ってきた人たちが、普通になろうとしても普通になれるわけがない。でも今は無理して普通になっていて、彼らが誰よりも“普通ってなんだろう!?”と思ってると思うんです。だからお母さんも万引きしちゃうし、妹も宝を盗んでは返す行動に出たり、おかしな行動に出ちゃう。みんな自分のルーツというか、「血」を捨て切れない。根っこは忍びであるわけです。そうした葛藤から彼らはどうするのか、中盤以降で大きく変わっていきます」
意外に女性陣が動けてビックリ!
当然、殺陣等々のアクションもふんだんに盛り込まれています。肉体作りやアクションの事前準備は相当されましたか?
「アクションも半年前ぐらいから少しずつ、コンディションを上げていきました。だいぶ前から、この作品があると分かっていたので、肉体改造も同時に行って。1度15キロぐらい体重を増やして筋肉を大きくしてから、また落とす、ということもしました。自分的にも、15キロの増減は初めての経験でしたが、僕が出来ていないと他の人もヤル気にならないと思ったので、最低限のことはやっておこうと頑張りましたよ!」
アクションとはいえ、忍者アクションはまた一味違いますよね。
「今回はド派手なものではなく、地味で実践的な殺陣でした。忍者の表現に関しては、妥協せずにリアルを追求しました。忍者=スパイという表現は、本作では絶対にやってはいけないと思って。あくまでも“忍者”をちゃんと表現しないと、忍者にも失礼だし、世界の人がガッカリすると思ったんです。だから、いわゆる魔法使いみたいなアクションではなく、伝統的なものにして。しかも俵一家って、伝統から抜けられない古い忍者ですから。そんな彼らが令和に生きている、というのが面白いんです」
意外に女性陣も本気印のアクションをされていましたね!
「そうなんですよ、特に多江さんがアクションをされるイメージがなかったので、何であんなに動けるんだろうって驚きました(笑)。蒔田彩珠ちゃんも最初は体が硬かったのに、ストレッチから入って、すごい動けるようになって。後半戦は、さらに大アクションになっていくんですよ」
ちなみに現場は、どんな感じでしたか?
「メチャクチャ、和気あいあいとしていましたよ。もう、みんなでキャッキャしながらやっていましたね(笑)」
みんなで一緒にアクションの練習をされたり?
「いや、アクションシーンを、家族で一緒にやるシーンって滅多にないんですよ。それぞれが活躍する作りになっているので、1人ずつのアクションシーンになっているので。だから一緒にトレーニングすることはあまりなかったです。ただ最後だけ、全員で“あるところに”乗り込むんです。終盤はその“大アクション祭り”になっているので、そこは本当に楽しみにして欲しいですね。そのシーンの練習は、みんなで楽しくやりました!」
子どもが生まれてから作品選びにも変化が!?
ちなみに、お子さんが忍者村で興奮していたそうですが、なぜ子供って忍者が好きなんでしょうね?
「子供もそうかもしれませんが、海外の人からすると、忍者って“神秘”でしかないらしくて。神秘的な存在をカッコいいと思うようです。だから子どもも、そんな感じじゃないかな、と」
今回も“忍者”という子どもが大好きなものを題材に据えましたが、やはり自分の子どもたちの存在によって、作品選びも変わったところがあるのではないですか?
「確かに、子どもに見て欲しいな、と思う作品を選ぶことがあります。今回も割にハードな物語ではありますが、あくまで子どもに見てもらえるギリギリのラインで作っているんです。バイオレンスシーンもありますが、出る血の量でレーティングが決まるんですよ。だから子どもが見られるレーティングに下げるため、血の量を調節したり。子どもが見られるギリギリのラインで攻めました」
例えば「映画 おかあさんといっしょ すりかえかめんをつかまえろ!」に出演されたのも、意外というか印象的でした。
「単純に子どもと一緒に子ども番組を観ていると、僕も番組のファンになっちゃうんです(笑)。だから出たい、という。そういう意味では、声優を務めた「劇場版 SPY×FAMILY CODE: White」もそうですね。僕が作品を好きになっちゃったから出たいし、出ると子どもも喜ぶという、一石二鳥みたいな仕事なんです。それに僕、子どものコンテンツって、素直にスゴイと思っていて。実は一緒に見る大人も楽しめるようにも作られているんですよね。だから、作る人の目線がすごい勉強になるんです。もちろん刺さる人に刺さればいいエンタメもあれば、全世代に合わせて作って全世代に刺さる、誰が観ても楽しめる作品もあっていいですよね」
最後に、見どころたっぷりの「忍びの家」について、推しポイントがあれば教えてください。
「超一流スタッフが結集してくれたことですね。それこそ日本映画界オールスターみたいなスタッフさんが集まってくれて、僕みたいなピヨピヨの奴とやってくれました。撮影監督の江原祥二さん、美術の林田裕至さん、「キル・ビル」で美術・衣装を担当された小川久美子さんをはじめ、みなさん素晴らしくて。林田さんが作ってくれた俵家のセットも、本当に住めるくらいのクオリティで家を一軒建てています。そういう日本人スタッフとアメリカから来たクリエイターが組み合わさって、僕らの想像をはるかに超える画作りを、毎回、毎シーンで作ってくれて。本当にスタッフのみなさんに感謝しかないです。“こうして0から1になるのか。一流ってスゲ~な”と本気で感動しました」
“忍び/忍者”って、なぜか聞くだけでワクワクしちゃいますよね。しかも本作は、“令和の日本で忍びが暗躍している”という倍増した興味を裏切りません! 観始めたら最後、その先が早く観たくてウズウズ状態になりますよ。
アクションあり、家族ドラマあり、ハラハラドキドキのサスペンスフルな展開あり。是非、家族みんなでお楽しみください!
Netflixシリーズ「忍びの家House of Ninjas」
出演:賀来賢人、江口洋介、木村多江、高良健吾、蒔田彩珠、吉岡里帆、宮本信子、山田孝之ほか
原案:賀来賢人、村尾嘉昭、今井隆文
監督:デイヴ・ボイル、滝本智行、 村尾嘉昭
製作:Netflix
2月15日(木)よりNetflixにて世界独占配信開始
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写真:菅原有希子
スタイリスト:小林新/UM
ヘアメイク:西岡達也/leinwand
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折田千鶴子 Chizuko Orita
映画ライター/映画評論家
LEE本誌でCULTURE NAVIの映画コーナー、人物インタビューを担当。Webでは「カルチャーナビアネックス」としてディープな映画人へのインタビューや対談、おススメ偏愛映画を発信中。他に雑誌、週刊誌、新聞、映画パンフレット、映画サイトなどで、作品レビューやインタビュー記事も執筆。夫、能天気な双子の息子たち(’08年生まれ)、2匹の黒猫(兄妹)と暮らす。