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KANAE’s MASTERPIECES────Interior Items
スタイリスト
石井佳苗の「インテリア名品」
テイストの変遷や引っ越しを重ねた今も、手元に残る大切なもの。石井さんのスタイルを形作る名品を、毎月一点ずつ紹介します。今回は石井さんが推し続ける照明の中でも、特に存在感の大きいフロアランプについて。
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09.
[フロアランプ]Floor lamp
Brand:LE KLINT
レ・クリント
Item:SNOWDROP Floor lamp
スノードロップ フロアランプ
100年を超える伝統の技と新たなデザインが見事に融合した、近年の名作ランプ
私が心地いい空間について考えるとき、欠かせないのが照明の存在です。あえて天井から照らすダウンライトを使わず、お気に入りの照明を組み合わせるスタイル。すると空間に陰影の濃淡が生まれ、インテリアにも深みが出せるのです。
2009年に発表され「スノードロップ」と名付けられたこのシリーズは、デンマークを代表する照明ブランドのひとつ、レ・クリントのもの。スノードロップとは、日本語で待雪草(マツユキソウ)。長い冬を越す北欧の人々にとって春を告げる花として思い入れのある花だそうで、そんなエピソードもまた心惹かれる理由です。曲線のポールが茎を、シェードが花を思わせるシンプルなデザインは、同社の代名詞的存在のプリーツシェードの美しさを存分に引き立てています。
しかも、120年以上の歴史を持つ、プリーツによる繊細な陰影が美しいこのシェードは、今も職人による手折り。先日、現地でその作業を見学する機会があったのですが、目の前でスピーディかつ繊細に仕上げられる職人技は、実に圧巻でした。
加えて大きな特徴が、ポールが傾けられること(下の写真1枚目)。フロアランプとして空間を照らすだけでなく、シェードを引き寄せ、手元を明るく照らすことも可能。まさに、美しさと実用性が両立する逸品です。
照明は実用品であり、空間の印象を左右するオブジェ。素敵なフロアランプはそこにあるだけで、インテリアのスキルが数段アップしたかのような絶大な効果をもたらすのです。
ポールが好きな角度まで傾く根元の設計で、読書灯も兼ねられるのが秀逸。シェードはPE樹脂製とペーパー製(デンマーク取り寄せ品)の2タイプから選べる。「私は、冬場は光がやわらかな色合いになるペーパーを、夏場は光がクリアに見えるPEを使いたくて両方入手。付属のLED電球は、スマホと連動させて調光できます」(石井佳苗さん)
近くで眺めてもプリーツの美しさにほれぼれ。「溝にほこりがたまらない?と時々聞かれますが、柔らかいデスクブラシを使うと手入れはラク」(石井佳苗さん)
Designer:
Harrit Sørensen + Samson
Denmark, 2009
明かりが灯っていても、いなくても。そこにあるだけでインテリアの主役に
1943年に創業されたレ・クリント社。プリーツシェードの歴史はさらに長く、1901年に建築家であったP.V.イェンセン・クリントが日本の折り紙をヒントに作ったのが始まり。「スノードロップ」シリーズは、トーマス・ハリット、ニコライ・ソーレンセン、キム・サムソンの3人によるデザイン。フロアランプ(H119〜155×W35〜135㎝ ※ポール可動による)¥176000/スキャンデックス(レ・クリント)
Staff Credit
撮影/宮濱祐美子 取材・原文/福山雅美
こちらは2023年LEE11月号(11/6発売)『スタイリスト石井佳苗さんの「インテリア名品」』に掲載の記事です。
※商品価格は消費税込みの総額表示(掲載当時)です。
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