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映画『CLOSE/クロース』大親友の13歳少年同士の成長と揺れ、そして悲劇

2023.07.16

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CINEMA Culture Navi

『CLOSE/クロース』

『CLOSE/クロース』

© Menuet / Diaphana Films / Topkapi Films / Versus Production 2022

大親友の13歳少年同士の成長と揺れ、そして悲劇

第75回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞、“観客が最も泣いた映画(英BBC)”と評された本作。この年代特有の残酷と純真さ、揺れと戸惑い、他者との関係性etc.……などコトの大小こそあれ、成長過程において誰しも、“永遠に忘れられない傷、あるいは罪の意識”に、身に覚えがあるのではないだろうか。大人になって薄まったそれを、まさに本作はうずかせる。

美しい自然が広がるベルギーの小さな町。家も近所で遊ぶのも寝るのも一緒、毎日がお泊まりごっこのように育ってきた幼なじみのレオとレミは、13歳になり中学校に入学する。レミはオーボエの演奏が上手で、レオはその演奏旅行に同行する将来を夢見たりしている。ところが親密すぎる2人は、クラスメイトから“恋人みたい”とからかわれてしまう。それに反応したレオは、運動好きな男子とつるむようになり、一緒にアイスホッケーを習い始める。

レオのよそよそしい態度に気付きながらも、レミはそれまでと同じように接しようとする。だがある朝、レオは黙って先に通学し、それをとがめたレミとみんなの前で大げんかになってしまう。

クラスや仲間内における自分の立ち位置を必要以上に意識し、自分の居場所を躍起になって確保しようとしてしまうこの年代。レミのように自分を貫こうとする姿勢を、大人になった今なら勇敢で素晴らしいとまぶしく思える。でもレオの保身ともいえる身の処し方に、後ろめたさを覚えながら“わかる~”とうなってしまう人も多いハズだ。青天の霹靂のごとく繊細なレミが突きつけられた“孤独”、そんなレミを追いつめたレオの消えない“後悔”が、観ている間中ずっとギュウギュウ胸を締めつけ、いろんな感情がうごめく2人の瞳から目が離せない!

レオがどうしても言えなかったこととは──。仲のよい2家族同士、双方の感情も痛いほどしみてさらに涙腺を刺激する、忘れ難く鮮烈な思春期映画。監督はデビュー作『Girl/ガール』で、第71回カンヌ国際映画祭カメラドールを受賞したルーカス・ドン。

・7月14日より全国公開
公式サイト

『裸足になって』

『裸足になって』

©THE INK CONNECTION – HIGH SEA – CIRTA FILMS – SCOPE PICTURES FRANCE 2 CINÉMA – LES PRODUCTIONS DU CH’TIHI – SAME PLAYER, SOLAR ENTERTAINMENT

傷ついた少女の再生とダンスに育まれるシスターフッド

北アフリカのイスラム国家アルジェリア。バレエダンサーを夢見るフーリア(リナ・クードリ)は、ひょんなことである男に恨まれ、突き落とされ重傷を負う。トラウマで声を失った彼女は、心に傷を負ったろう者の女性たちとリハビリ施設で出会い、踊りを教えることに。不条理な父権的社会に押し潰されながら、傷ついた者同士が手を取り合い立ち上がる姿、その踊りに胸が熱くなる。『パピチャ 未来へのランウェイ』の新鋭ムニア・メドゥールの新作。

・7月21日より新宿ピカデリーほか全国公開
公式サイト

『アイスクリームフィーバー』

『アイスクリームフィーバー』

©2023「アイスクリームフィーバー」製作委員会

川上未映子の短編「アイスクリーム熱」を原案に映画化

夢半ばに破れアイスクリーム屋でバイトする菜摘(吉岡里帆)は、ミステリアスな客(モトーラ世理奈)がどうにも気になる。その近所に住む優(松本まりか)は、転がり込んできた姪(南琴奈)の父親探しを手伝う羽目に。人生に軽く行き詰まった4人が、相手そして自分とあらためて向き合い、一歩踏み出すまでを等身大に描き出す。なんとなく抜けない心のとげ、漠然とした不安に共感。何気ない会話、彼女たちの関係性、カラフルな映像や、やわらかな空気感に魅せられる。

・7月14日より全国ロードショー
公式サイト

※公開につきましては、各作品の公式サイトをご参照ください。


取材・原文/折田千鶴子
こちらは2023年LEE8・9月合併号(7/7発売)「カルチャーナビ」に掲載の記事です


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