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LIFE

堀江純子のスタア☆劇場

『FACTORY GIRLS』で芯から女性を表現するソニンさん【堀江純子のスタア☆劇場】

  • 堀江純子

2023.06.07

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“堀江純子のスタア☆劇場”
VOL.20:ソニンさん

ミュージカル界で熱く燃える役者であり、ドラマティックな歌唱で大劇場を包み込むソニンさん。そんな彼女が静かなる炎を滾らせて、繊細なアプローチで臨んだのは、『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』ハリエット・ファーリー。初演は2019年。同年、読売演劇大賞優秀作品賞を受賞した名作が、柚希礼音さん、ソニンさんら初演の主要キャストに、新たに平野綾さんなどを迎えて再演。今年はすでに『大病院占拠』(日本テレビ)、『育休刑事』(NHK総合・NHK BS4K)、『風間公親-教場0-』8話(フジテレビ)と3本のドラマにも出演し、大忙しの2023年上半期!

その小さな体から溢れ出るパワーの秘密と、ソニンさんの役作り法、貴重な休暇の過ごし方までお話を伺ってきました。

そにん●1983年3月10日 、高知県生まれ。2000年音楽ユニットで歌手デビュー。その後テレビドラマ、映画などで演技経験を積み、舞台では2004年より『8人の女たち』で本格的なデビューを果たす。『スウィーニー・トッド』『血の婚礼』『ミス・サイゴン』『モーツァルト!』『嵐が丘』『1789 -バスティーユの恋人たち』『マリー・アントワネット』『キンキーブーツ』など数多くの作品に出演。2015年「第41回菊田一夫演劇賞」演劇賞、2018年「第26回読売演劇大賞」優秀女優賞。

信念を持って何かを伝えようとする表現

──ファクトリー・ガールズたちの寄稿集『ローウェル・オウファリング』編集者として女工たちの憧れの存在であったハリエット・ファーリー。ソニンさんは“伝える”女性の役が多い印象があります。

「何かを伝える女性の役…(笑)。確かに、信念を持って何かを伝えようとする表現が多いですよね、“社会を変えよう、世界を変えよう”(笑)」

──想いを強く訴えかける歌がいつも印象的で。『ミス・サイゴン』のキムも、世界を変えるほどの恋だったし、『FACTORY GIRLS』でもものすごく情熱を注がれたんじゃないかと、初演を拝見して思いました。

「嬉しいです。本当に、激しく、衝動的に本能で動く役を多く演じてきましたが、ハリエットはかなり頭を使いながら、物静かに自分の信念を貫く役で。だからか、初演では私が演じる役としては”意外”って印象を受けた方も多かったみたいで。メッセージの伝え方にしても、私は、強く激しいサラのイメージだったのかな(笑)。行くぞ-!って市民を先導するような(笑)」

──同じ先導をするにしても、ハリエットは内なる情熱を、冷静に分析していた?

「そうなんです。表に出す表現をできるだけミニマムにして、物事を論理的に処理していく…ハリエットを演じるにあたってそのような点を意識しました。実際に発行された『ローウェル・オウファリング』をアメリカのAmazonから取り寄せて拝見したんですけど、彼女が書いた詩や記事は、それはそれはものすごい比率で掲載されていて。文章の力もあって。本当に優秀な女性だったんだなと思いました。今回は主人公であるサラの才能がフューチャーされてますが、ハリエットの編集長という立場での説得力、言葉を巧みに使い、どう言葉を使えば人が動くかをわかっている能力が作品でも描かれています」

 

STORY:19世紀半ばのアメリカ・ローウェル。産業革命により大規模な紡績工場が誕生し、ローウェルには多くの先進的な女性達が集まり、ファクトリーガールズとして働いていた。ガールズたちの寄稿集「ローウェル・オウファリング」は自由を夢見る女性たちにとって憧れであった。サラ・バグリー(柚希)もそんな一人。彼女は貧しい家族を助ける為、そして自らの自由を得る為に故郷を旅立ってローウェルにやってくる。彼女が工場で目にしたものは理不尽な抑圧の中で機械のように働くガールズ。衝撃を受けるサラだったが、ラーコム夫人の管理する寮で仲間たちと心を通わせる。そして、中でも「ローウェル・オウファリング」編集者として女工たちの憧れの存在であったハリエット・ファーリーとサラが出会うことによって、ファクトリーガールズたちは動きだす!

情報は少しでも多く。無駄は削ぎ落とせばいい

──役の周辺の勉強はいつもされるんですか?

「私は、しますね。調べられるだけ調べて、腑に落ちるまで調べます。また時代背景などの史実を追求します。調べれば役の性格が見つかるわけではないけれど、作品の中での自分の役割を把握するために、少しでも多くの情報を知っておいて損はないというか(笑)。必要なければ、それを削ぎ落とせばいいだけなので」

──知識や情報って備えておくだけで、別の事柄、または全体の理解を深めるのに役立ちますよね。

「そう思います。情熱だけでは進められないこともありますしね。自分とは違う情熱を持つ人に対し、何かを伝えようとするとき…どうアウトプットするか。ハリエットは、非常に賢くそのやり方を考える人で、そこがすごくスマート。私も思い立ってすぐ口にするタイプではないけど、ハリエットほどの伝える技術を持ち合わせてはいないので羨ましいです(笑)。ハリエットは、人を動かす力を持つ言葉をわかっているんです」

──本当に頭のいい人って、多くの人に伝えることができる言葉を持っていたり、誰とでも楽しく話せたりしますよね。

「向き合う相手のことがわかってますよね。これを伝えるために、この人にはこういう人だから、こんな伝え方をすれば正しく伝わるだろう。会話を自分が望む方向へと進められるだろう…でも、ハリエットは相手を操作するためにそうしたわけじゃない。結果的には、最大の目的である、女性の権利を得るための筋道のひとつなんですよね。そんな彼女の賢さの説得力を持たせるための努力を、初演ではかなりしました」

 

お客様の普段のうっぷんをすべて受け止めて昇華させる!

──賢く冷静なハリエットも人間味があって、悩みもする。そういうドラマも見ごたえありますね。最終的にハリエットが下す決断は、現代、働く多くの人が共感するだろうと思いました。

「女性だけじゃなく、男性も共感してくれそうですよね。ハリエットの決断…そこも初演から意識して演じたところで。昔の話でフィクションも入っていたりするのですが、お客様には現実的に、より身近に感じていただきたい。ラストは、私がお客様の普段のうっぷんをすべて受け止めて昇華させる!ぐらいの気持ちでやれたらと思っています…結果、そうなれていたらいいなって」

──それぐらい役の人生に寄り添って演じていると、ソニンさん自身もしんどくなる?

「役者って、役に自分を注ぐだけに、自分が体験したのと同じぐらい役の気を自分に寄せちゃうことは、ありますね。『マリー・アントワネット』のマルグリットのように壮絶な人生の役をやっているときは、確かに自分自身もツラくなりますし。『キンキーブーツ』のときはハッピーな役だったので、“このまま1年ぐらいやれちゃうー!”なんて思ったこともありました。どちらかだけだと、違う役が恋しくなっちゃうんです。楽しいコメディでも続けば、壮絶な人生の役もまたやりたくなります(笑)」



何かしらずっと考えてしまうタイプです

──役、作品に囚われず、無になる時間は?

「ありがたいことに、ドラマも含めて、お仕事が続いていて。ずっと考えてるかもしれない。ホントたまに、何も考えなくていい時期はありますけどね。ストレスが溜まってると感じたら旅行に行きます。それ以外は、普段、体のこと、特に喉のことを気を付けているので、好きなもの食べて、ジムにも行かず、目覚ましもかけずに寝たいだけ寝て…何もしない日を過ごします(笑)。とは言え、なかなかないですけどね。表に出ていなくても覚えなきゃいけない、練習しなきゃいけないなど、やるべきことが常にあるので」

──その貴重な何もない日でも、ソニンさんなら、見聞きすることからインスピレーションが生まれて、考えちゃいそうな気が(笑)。

「おっしゃる通り(笑)。癒されるためにマッサージに行ったのに、施術されてる間も何かしらずっと考えちゃうタイプです。先生に、“ほぐす意味がないから、何も考えないでくれないか”って言われました(笑)」

──旅行はどんなところへ?

「心身が疲れているときは自然があるところ。とにかく裸足で土を踏みたいって思ったときは宮古島に行きました。アウトプットしすぎて疲れたーってときは、刺激を求めてニューヨークや韓国にエンタメを観に行きます。旅行するほどの時間がないときは新宿御苑! 人も多すぎず、自然が豊かで好きです。もともと山に囲まれた田舎育ちなので、自然に触れずには生きていけないですね(笑)」

私は”女性“そのものが好き

──仕事以外で、今、大好きなものは?

「仕事のために見ているわけではないってことで…ニューヨークの働く女性の海外ドラマ『NYガールズ・ダイアリー 大胆不敵な私たち』を、毎日のように見て楽しんでます! 程よい加減で、女性の深いところまをリアルに、それをポップに描いているドラマなんですよ。だから女性にはすっごくオススメ!! 結婚、妊娠、ハラスメント、性的指向、乳がんなど、社会における女性の様々な問題が取り上げられていて…こうして挙げていくと、『FACTORY GIRLS』と重なるところ、多いですね」

──時代は違っても普遍的な女性のテーマなんでしょう。

「そうですね。『NYガールズ・ダイアリー』も、パワフルで社会に貢献するポテンシャルの高い女性たちが主人公なので、見ていると自分もデキる女になれた気分になれますね(笑)」

──どちらにせよ、やはり“動く!”女性の物語は面白いですよね!

「会社では声を大にして言えないで我慢していることが、舞台やドラマの中で生きている女性たちが勇気を持って声にして挑んでいく姿に励まされるんじゃないかなと」

──ソニンさんも、役として様々な想いを言葉にすることで、日々の大変さが凌駕されているのかもしれませんね。

「そうかもしれないですね。自分が女性であることと同時に、私は女性という生き物…そのものが好きなんだと思います。女性の生き方、女性シンガー…果てしなく興味深いです」

そんなソニンさんご本人がすごく魅力的な女性だと、お話していて思わずにはいられなかったです。快活で、自分の意見、意志がはっきりとあり、インタビュー中、「わかりません」とおっしゃることはひとつもありませんでした。もし、わからなかったとしても、一度考えて、何らかの答えを導く方であると思いました。バズーカーのような威力で打ち抜いてくるパワフルシンガーだけど、実は大元にショットガンのような鋭さと命中率を持っていて、それを爆発させているのではないかと!

 

ミュージカル『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』

【東京公演】2023年6月5日(月)~6月13日(火)
東京国際フォーラム ホールC

【福岡公演】2023年6月24日(土)・6月25日(日)
キャナルシティ劇場

【大阪公演】2023年6月29日(木)~7月2日(日)
COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール

作詞・作曲:クレイトン・アイロンズ&ショーン・マホニー
脚本・歌詞・演出:板垣恭一
出演:柚希礼音、ソニン / 実咲凜音、清水くるみ・ 平野綾 / 水田航生、寺西拓人、松原凜子、谷口ゆうな、能條愛未 / 原田優一・ 戸井勝海 / 春風ひとみ ほか

A new musical『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』公式サイト ソニン│アミューズWEBサイト

撮影/富田恵

堀江純子 Junko Horie

ライター

東京生まれ、東京育ち。6歳で宝塚歌劇を、7歳でバレエ初観劇。エンタメを愛し味わう礎は『コーラスライン』のザックの言葉と大浦みずきさん。『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』『エリザベート』『モーツァルト!』観劇は日本初演からのライフワーク。執筆はエンターテイメント全般。音楽、ドラマ、映画、演劇、ミュージカル、歌舞伎などのスタアインタビューは年間100本を優に超える。

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