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18歳の夏、恋の予感。ときめきが止まらないところに、“乳がん検診の再検査”のお知らせが届いたら……。当事者の娘、見守る母親、どちらの立場でも胸に迫るものが。そんな母娘のひと夏を描く映画『あつい胸さわぎ』で娘の千夏役を演じる吉田美月喜さんは、公開待機作を含めて、すでに主演映画4作品という注目の19歳。
仲がいいからこそぶつかる母娘関係は自分と重なります
────吉田美月喜さん
「私にとってこの作品が主演としての初めての撮影だったので、“主演は現場の空気感を作らなきゃ”と意気込んでいたのですが、自分の役に精いっぱいで。母親役の常盤さんは大先輩ですし、最初は緊張していましたが、現場で常に私のお母さんのような存在でいてくださって。共演シーンが多い常盤さんとの場面もリラックスして演じることができました」
撮影中の常盤さんとの思い出にも、“母”を感じるものが。
「サーカスを観に行くシーンのときに、そこでグッズとして販売されていたTシャツをプレゼントしてくれたんです。さらっと買ってくださった感じが本当にかっこよくて!」
娘、千夏と母、昭子のテンポのよい会話は作品を支える要素のひとつ。東京出身の吉田さんが自然な関西弁を話し、関西育ちの常盤さんとやりとりをする様子は聞いているだけで楽しい気分に。プロフィールにも「方言:関西弁」と書かれていますが、もともと関西と何か縁が?
「関西に住んでいたわけではなくて、関西弁の役をやらせていただくことが多かったんです。今回も自分の身についているものと、事前にいただいた音源を聞いて挑みました。現場で常盤さんに“発音、これでいいですか?”と教えていただいたことも」
姉妹のように仲がいいからこそ、時にはぶつかる。そんな千夏と昭子の母娘関係は、実際の吉田さんとお母さんの関係に近い部分もあるそう。
「職場の上司に惹かれている母親のことが心配だけど、それを素直に伝えられないところとか、距離が近い分、ぶつかったときにお互い譲れない感じはすごく共感できました」
吉田さん親子の場合は、お風呂で何気ない話をするのが定番。
「私がお風呂に入っていると、母が湯船のふちに座って“今日何かおもしろいことあった?”って聞くんです。その流れで仕事の悩みを話すこともありますし、母の仕事の話を聞くこともあります」
テニス、バスケ、バレエ、水泳、そろばん、体幹トレーニングと、子どもの頃から吉田さんが「やりたい」と希望した習い事はすべてやらせてくれ、さまざまな経験をさせてくれた。そのお母さんが違う反応を見せたのが芸能の道に進むこと。
「小学生の頃に一度芸能事務所に入れる機会があったとき、母から“あなたが本当に希望するならまたチャンスが来るから、今は勉強したほうがいい”と言われて泣く泣く諦めました。それをすっかり忘れて学校生活を満喫していた中3の終わりに今の事務所からスカウトされて、本当にチャンスが巡ってきたんです。今思うと、最初のときは私がそこまで本気じゃなかったのを、母は見抜いていたのかもしれないですね」
現在は吉田さんの活躍を誰より喜んでくれているお母さん。
「まだ頼る部分もあるけど、今年20歳にもなるし、少しずつ支える側になっていきたいです。なんて、母の前では言わないですけど(笑)」
よしだ・みづき●2003年生まれ、東京都出身。2017年にスカウトされデビュー。映画、ドラマを中心に活躍し、頭角を現す。今年は『あつい胸さわぎ』のほか『パラダイス/半島』『カムイのうた』と主演映画が公開に。2月25日よりスタートのドラマ『沼る。港区女子高生』(日本テレビ 14:30〜15:00)に斎藤麻里香役で出演。
Instagram:mizukiyoshida_official
公式サイト:https://www.stardust.co.jp/talent/section2/yoshidamizuki/
『あつい胸さわぎ』
演劇界で注目を浴びる横山拓也が作・演出を務めた舞台作品を映画化。港町の古い一軒家に母娘2人で暮らす千夏(吉田美月喜)と昭子(常盤貴子)。小説家を目指して芸大に入学した千夏は、苦い思い出のある初恋相手と再会。一方、昭子も職場に赴任してきた上司に惹かれ始める。そんな矢先、千夏に乳がん検診の再検査通知が届き、2人の胸の高鳴りは、胸さわぎに変わっていく。新宿武蔵野館、イオンシネマほかで公開中。
撮影/田上浩一 ヘア&メイク/田中陽子 スタイリスト/岡本純子 取材・文/古川はる香
こちらは2023年LEE3月号(2/7発売)「カルチャーナビ」に掲載の記事です。
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