あけましておめでとうございます。
本年も子育てのヒントになる教育や育児のこと、または身近な視点から考える社会課題について書いていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
新年早々、明るい話題で進めたかったのですが、新学期と同時に気がかりな「不登校」について。
昨年10月に文部科学省から発表された「小中学生の不登校」は2021度24万人余りと、過去最多を更新した」という報道に衝撃を覚えました。
小中学生の不登校が過去最多、中学生の7〜8人に1人は不登校傾向に
前年度から25%も増え、中学生の7〜8人に一人は不登校・または不登校傾向で、文科省の見解は「コロナ禍による環境変化が子どもに大きな影響を及ぼした」としています。
コロナ禍だけでなく、阪神大震災や東日本大震災後も不登校は増加傾向にあり、社会的な緊張や大人の不安感が子どもたちに何らかの影響をあたえている、と言われています。
実際、身近なご家庭からも「毎朝、学校を行くのを嫌がる」「コロナの後、しばらく通えなくなった」という声はよく耳にしていましたので、支える親の不安な気持ちや孤独感は想像に難くありません。
学校に通いたくなくなった子どもたちは、どう過ごしていけばいいのでしょうか。
わが子が突然、「学校に行きたくない」と言い出したらどうすればよいのでしょうか。
そんな中、教育ジャーナリストのおおたとしまささんの集英社新書『不登校でも学べる 学校に行きたくないと言えたとき』が昨年出版され、重版にもなり話題です。
子どもにとって「良い教育とはなにか」を本質的に考える
おおたさんといえば教育ジャーナリストとして、数々の育児や教育関連の書籍・記事を執筆されています。
中でも中学受験関連の書籍を多く出されているので、今回のテーマを新鮮に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ちなみに、昨年出版された集英社新書『ルポ 森のようちえん SDGs時代の子育てスタイル』では、幼少期の子どもが過ごす環境について執筆されています(詳しくはこちらの記事をご参照ください)。
子どもにとって良い教育とは? 親としてどう寄り添えばいい?
おおたさんがジャーナリストとして追い求めているのは『子どもにとっての良い教育とはなにか』ということ。
その中で子どもたちの置かれている状況が中学受験だったり、幼少期だったり、不登校だったり…という違いで、根幹にあるものは同じなのです。
ですから、それぞれの状況で親が頭を悩ませたときに「どう捉えればいいか」「子どもにどう寄り添えばいいのか」を本質的に考えることができるのです。(私自身、これまでおおたさんの著書にどれだけ勇気づけられてきたことか…!)
では今回のテーマである「不登校」については、どのような解を見出したのでしょうか。書籍の中身を少しご紹介します。
不登校でも学べる、多彩な学びの場とは? 話題の書籍の内容をご紹介
まずプロローグとして、3人の子どもたちが「学校に行きたくない」となったときのルポからスタートします。
さまざまな理由(もしくは、理由もわからない状況)から「学校に行かない」を選択するまでの親子の葛藤の日々が綴られています。
どのエピソードも同じ子をもつ親なら、その苦しさが痛いほど伝わってくる内容です。
「決して、人ごとではない」と感じたところで第1章、不登校を取り巻く国の姿勢や社会の認識の変化について大枠を捉えます。
第2章では学校以外でスポット的に利用できる学びの場を紹介し、通信教育やオンライン教材など、ホームスクールを実践している方々からの具体的なサービス名もいろいろ掲載されています。
フリースクールや不登校特例校、通信制高校が少しずつ充実!
そして、第3章では学校に所属しながら利用できる施設やサービスの紹介。
「校内フリースクール」という広島の事例や、NPO法人「カタリバ」が行っている仮想空間上にある未来の学校を感じさせるレポートが掲載され、こうした新しい動きを知ることができます。
第4章では、実際に不登校経験者が集う学校としてフリースクールや不登校特例校(学習指導要領にとらわれず、特別な教育課程を編成している学校)などの具体的な事例、そして、第5章でフレキシブルに通える通信制高校が紹介されています。
この本を読み進めると、「学校以外の学び環境って、知らないだけでこんなにあったんだ」と感じました。
そして、取材されているそれぞれの施設の考え方や子どもに対する視点など深い部分で知ることができますし、検討する上での注意点や現状の課題点についても言及されているので、非常にイメージがしやすい内容でした。
学校だけに頼らない、「モザイク模様の学び環境」とは
第6章で学校以外の学びについて、おおたさんは「モザイク模様の学び環境」と表現しています。
モザイク模様というのは自分が学びたいことを学校含めて「いつ・どこで・何を学ぶか」を日々自分でセレクトしてカリキュラム化していく、そんなイメージで描かれています。
想像するだけでもワクワクしますよね。そして、現段階での不登校に対する根本的な解決策をこのように記しています。
学校の中で学びを完結しようとするのではなくて、学びの場の一つとして学校もあるというイメージです。「学校だけに頼らない学習スタイル」が当たり前になれば、「不登校」という概念自体が消滅します。「不登校」という言葉が「学校だけに頼らない学習スタイル」に置き換えられればいいなと思います。
それぞれの得意分野を活かして、手分けして学ぶ時代
そして、これだけ世の中の変化が激しく複雑な社会です。技術や知識が日々アップデートされ続けていく中、一人一人の子どもが学ぶべきことについて。
みんなが同じことを学ぶ前提自体が成り立たない時代なのです。だからそれぞれの得意分野を活かしてみんなで手わけして学ぶのです。生きていくうえで自分が学んでいないことが必要になったら、それを学んだひとに力を借りればいい。自分がもっている力を必要としているひとがいたら、惜しみなくそれをかしてあげればいい。
子どもの学びの環境を考える上で、親である私たちが社会の流れに合わせてシフトしていかなければいけない、と感じました。
「学校だけにたよらない」「得意な分野を活かす」「手わけして学ぶ」これらの学び方が社会に浸透すれば、すべての子どもたちにとって大きなメリットになりますよね。
子どもが「学校に行きたくない」といったら?ウェビナーに参加
そして昨年末、「集英社こどもみらい会議」という集英社の社内向けのウェビナーが開催され、おおたさんが登壇されました。
ここでは新書の内容を紹介しながら、不登校当事者家族からの質問形式で進められました。
ウェビナー冒頭「子どもが学校行きたくないといいだしたらどうすれば?」という問いに対して、おおたさんは「みなさんはどうされますか?」と司会者に逆質問で返します。
「まさにコロナ禍で子どもが、学校行きたくないと言い出したんですが、玄関から追い出すように行かせてしまいました」と司会の方が答えた後、おたさんの回答がとにかく印象的でした。
言葉のラベルに囚われないで、まずは心で感じて対応を
もし旦那さんが「今日、会社行きたくない」と言い出したらどうしますか? おそらく、「今日は休んだら?」とか「あなたにまかせるわ」となりますよね。しかし、子どもには蹴飛ばしてでも学校に行かせる。この差はなんなのでしょうか。
ただ、この質問は『学校に行きたくない』という情報しかないのでトリッキーです。一番大切なのは言葉ではなく『学校に行きたくない』と言った時の表情や子どもの言い方、その言葉の裏側にあるものに気づいてあげること。話を聞いてほしいのか、スキンシップをしてほしいのか、そっとしておいてほしいのか…。言葉のラベルに囚われないで、心で感じることが大事だと思います。
一人の人として意見を尊重することと、言葉の裏にあるものを心でよみとるためにも日々の子どもとの関わりが大切だ、と改めて心に刻みました。
小中学で不登校になっても、「通信制の高校」への接続を目標に
書籍の内容を解説しながら「モザイク模様の学び環境」についても話題に。
ホームスクールやフリースクール、不登校特例校などの学校以外の学びの環境が広がっている中で、それらの境界線も非常に曖昧になっていきているそうです。
フリースクールが一条校(学校教育法第一条に定められた学校)に近づいたり、一条校がフリースクールに近づいてきたり…そういった動きも各地で起きています。
小中学生の不登校に対する情報はまだまだ足りない
とはいえ、小中学生を持つ親御さんにとってはまだまだ情報も少なく、フリースクールの質も千差万別、不登校特例校も全国で21ヶ所と数が少ないので、「現状の悩みは深いと思います」とおおたさんも心を寄せていました。
しかし、高校になればN高をはじめとする、興味のある学びを選択できる通信制が豊富なので、「通信制高校への進学を一つの目標に」今のお子さんの学びの環境を選択するのも1つの手とのこと。
学校の中の窮屈さをなくせば、不登校はなくなる?!
その一方で、学校側も不登校を減らしていくための意識改革が必要、とのお話もありました。
通信制高校やフリースクール、あるいは不登校特例校だといわゆる「フツーの学校」に通えなかった子どもたちも楽しく元気に毎日通えるようになります。また、世田谷区立桜丘中学は公立中学校ですが校長先生の采配で、学校の中の『窮屈さ』を排除することで不登校がなくなりました。やはり、今ある学校の枠組みが窮屈すぎるから、そこから溢れてしまう子どもがでてしまう。そこをゆるめると不登校自体がなくなるのです。
新書のラストにも「学校を心地よい学びの場にするための、たった一つの提案」として非常におおたさんらしい提案がなされてあるので、ぜひご覧になってください。
そして新書のエピローグには「学校を行かない」を選んだ3名の子どもたちのその後が描かれています。
親子で迷いながらもその子どもたちにあった環境を選んで歩んできた強さがあり、なんとも救われた気持ちになりました。
現在、お悩みの渦中にいらっしゃるご家族の方はもちろん、「不登校」という社会課題を誰しも把握する必要があると思います。
また、子どもたちへの寄り添い方のヒントが随所に散りばめられていますし、特に思春期をむかえる子を持つご家庭には心に留めておきたい内容ばかり。
ぜひ多くの方に手に取っていただきたいです。
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飯田りえ Rie Iida
ライター
1978年、兵庫県生まれ。女性誌&MOOK編集者を経て上京後、フリーランスに。雑誌・WEBなどで子育てや教育、食や旅などのテーマを中心に編執筆を手がける。「幼少期はとことん家族で遊ぶ!」を信条に、夫とボーイズ2人とアクティブに過ごす日々。