カルチャーナビ : 今月の人・今月の情報
あるときはコミカルな弁護士、またあるときは妖艶で危険な香りのする隣人。どんな役を演じても観る人の心をぐっとつかみ、さらには声優やナレーションなど声の仕事、エッセイ執筆と、できないことはないのでは?という活躍ぶりの中村倫也さん。次に挑戦するのは本格ミュージカル『ルードヴィヒ~Beethoven The Piano~』。タイトルロールであるルードヴィヒ(ベートーベン)を演じる。
僕が先輩としてできるのはどんどん恥をかくこと
────中村倫也さん
「演出の河原雅彦さんは、僕が映像では数シーン程度の役しかもらえない時代に舞台に呼んでくださって、間違いなく僕の舞台俳優としての道を開いてくれた方なんです。ただ、これまではバカバカしいノリの作品が多かったので、今回みたいなまじめな作品でご一緒するのは、お互い照れくさいですね(笑)。きっと稽古場でソワソワ照れくさそうにしてる僕と河原さんがいると思います」
今ではドラマや映画で重要な役割を担う中村さんだが、ルーツと言える舞台にも毎年出演している。
「舞台は育った場所とも言えますけど、結局のところ好きだからやってる感覚かな。でも楽しいのは一瞬で、本当は人前に出るのも恥ずかしいし、怖いし、9割5分はしんどい。ただ、観終わった人の表情や拍手から、こちらが想定した以上のものを受け取ってくれたのがわかると、頑張った意味があったと思えます」
観る人の反応をリアルタイムで感じられるのは舞台ならでは。本番中にも反応を意識している?
「作品にもよりますが、反応を感じながら微調整することも。以前出演した『怒りをこめてふり返れ』では、舞台に出ている間ずっと“絶対にこっち観るんじゃねえ!”って思ってましたけどね(笑)」
舞台に立っているのに“観るな!”とはどういうこと!?
「もちろん演技そのものはお客さんに観てもらうためにやってるんですけど、そう思いながらでないと表現できないものもあるんですよね」
現在35歳。気がつくと、現場のキャストやスタッフが年下であることが多くなってきた。先輩として、意識して振る舞うこともありますか?
「この前のドラマなんて、半分以上の人が年下でしたから。先輩として……あるとすれば、できるだけダメな部分も見せることかなと。“こんなの無理!”って弱音も吐くし、愚痴もじゃんじゃん言っちゃう」
中村さんが後輩たちに“ダメな自分”を見せるのは、若手時代の自分の経験があるからこそ。
「僕自身が弱音を吐いたり、周りを頼ったりするのが苦手だったから、それをできない人の気持ちがわかる。若い人たちが“大丈夫です”って無理して引き受けて、後になって結局キャパオーバーになるよりも、気軽に“助けてください”って言えるほうが、関係性としてもリスクヘッジとしても絶対いいじゃないですか。だから先輩である僕が率先して弱音を吐くことで、“無理です!”って言いやすい空気を作りたくて」
座長的なポジションでもある『ルードヴィヒ』の現場では?
「(木下)晴香はジャスミンだし(映画『アラジン』の吹き替えで木下さんはジャスミン、中村さんはアラジンを演じた)、ミュージカル経験が豊富だし。福士(誠治)くんはアニキ肌ですし。共演者が頼りになりますから。僕は積極的に恥をかいていきます」
なかむら・ともや●1986年生まれ、東京都出身。2005年のデビュー以来、ドラマ・映画・舞台を中心に声優、ナレーション、エッセイ執筆等多方面で才能を発揮。ʼ14年の初主演舞台『ヒストリーボーイズ』で読売演劇大賞優秀男優賞を受賞。『仮面ライダーBLACK SUN』が10月28日よりPrime Videoで配信開始。
Twitter:senritsutareme
公式サイト:https://topcoat.co.jp/tomoya_nakamura
MUSICAL『ルードヴィヒ~Beethoven The Piano~』
2018年~19年に韓国で初演された、ベートーベンを取り巻く愛や運命を描くミュージカル。日本版上演台本・演出は、中村さんとは7年ぶりのタッグとなる河原雅彦さん。共演にミュージカルを中心に活躍する木下晴香さん、俳優のほか音楽でも才能を見せる福士誠治さんが。10月29日~11月13日 東京芸術劇場プレイハウス チケット発売中 大阪、金沢、仙台公演あり
撮影/yoshimi ヘア&メイク/松田 陵(Y’sC) スタイリスト/戸倉祥仁(holy.) 取材・文/古川はる香
こちらは2022年LEE11月号(10/6発売)「カルチャーナビ」に掲載の記事です。
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