『スペンサー ダイアナの決意』
ダイアナの人生を大きく変えた“3日間”に肉薄!
没後25年にもなるのに、色あせず人々の心に生き続けるプリンセス、ダイアナ。本作の監督が語るように、王妃の座を捨ててでも母として、一人の人間として生きようと王室を去る決断をするのは、容易なことではなかっただろう。本作は、彼女が決意を固めるに至る姿、ロイヤルファミリーが集うクリスマスの3日間を、心の中を覗き込むかのように肉薄し映し出す。
’91年、クリスマス。王室の人々は慣例で、女王の私邸サンドリンガム・ハウスに集う。だがダイアナとチャールズの関係が冷え切っているこの年は、緊張感が漂っていた。道に迷って遅刻したダイアナは、待ち構えていた世話係の少佐にチクチク言われ、王室のしきたりを強要され、イライラが募る。
さらに不倫相手と同じ真珠のネックレスを贈られたことに憤るダイアナは、晩餐の席でそれをつけるだけでも心がわななく。唯一心を許せる衣装係のマギーだけは、“あなたらしく振る舞って”と優しく励ます。しかし晩餐を中座したダイアナは、そのままパウダールームに閉じこもってしまう。
『トワイライト』シリーズで人気を博したクリステン・スチュワートの、本人としか思えないような憑依した熱演に脱帽! 夫の裏切りに傷つき、執拗なパパラッチや王室のしきたりにストレスを抱え摂食障害にあったこの時期、まさに四面楚歌の状態で、さらに追い詰められていくダイアナを息遣いまで体現、観る者の心をガクガク揺らす。
息子たちと過ごす心休まるほんのひと時、その息子を巡るチャールズとの対立、逐一監視されているような注意、さらにマギーが勝手に解雇される事態に至っては、怒りで動悸が速まってしまうほど。
一方、庶民にはうらやましい限りだが、朝食にはじまり、行動ごとに着用する衣装(CHANEL製作のイブニングドレスはじめ感嘆必至!)が決められていることにも驚かされる。自由を奪う包囲網がジリジリ迫りくる中、遂に母・ダイアナが決意する。吹っ切れ、決然とした力強い歩みに、快哉を叫ばずにいられない。
・10月14日より全国ロードショー
・公式サイト
『アフター・ヤン』
静謐さと優しさに満ちた、不思議な感触のSF感動作
人型ロボットが一般化した近未来。ジェイク(コリン・ファレル)一家も、ヤンというロボットと家族同然に暮らしていた。だが故障で動かなくなり、彼を兄のように慕う幼いミカは激しく落ち込む。ジェイクは修理に奔走する中で、ヤンの体内に記録されたメモリを発見する。数十年以上さかのぼるヤンの記憶――過去に仕えてきた家族と過ごした愛しい時間、彼らに向けられた優しい眼差しに、言いようのない切なさが募る。
・10月21日より全国ロードショー
・公式サイト
『もっと超越した所へ。』
4種の恋愛バトル、男のダメぶりに“あるある”満載!
クズな男を引き寄せる女性4人が、彼らに振り回されながらも悪縁を断とうともがき、遂に決断――する!? 刻々と本音や秘密が炸裂し、物語は予想外の方向へ勢いよく転がっていく。デザイナー(前田敦子)×ヒモストリーマー(菊池風磨)など、豪華キャストによる人間誰しもが持つ“面倒くささや身勝手さ”が、おかしいやら共感するやら。伝説の同名舞台を劇作家・根本宗子が自ら脚本化。妙にパワフルで、勇気が凛々湧いてくる!
・10月14日より全国ロードショー
・公式サイト
※公開につきましては、各作品の公式サイトをご参照ください。
取材・原文/折田千鶴子
こちらは2022年LEE11月号(10/6発売)「カルチャーナビ」に掲載の記事です。
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