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LIFE

映画ライター折田千鶴子のカルチャーナビアネックス

いい男vsダメ男対談!? 香取慎吾さんは夫・裕次郎を叱咤、市井昌秀監督は擁護のワケ【犬も食わねどチャーリーは笑う】

  • 折田千鶴子

2022.09.19

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主人公の裕次郎は、草彅剛みたい!?

多くのLEE読者はきっと、岸井ゆきのさん演じる妻・日和が、香取慎吾さん演じる夫・裕次郎に対する不満や溜めていた怒りをSNS“旦那デスノート”へ書き込む、その舌鋒鋭い川柳に、思わず“あるある!!”、“分かる~”と爆笑しちゃうかも!? いやぁ、楽しかった!!

『箱入り息子の恋』や、『台風家族』(草彅剛さんとの対談はこちらから)など、オリジナル脚本で勝負してきた市井昌秀監督の新作『犬も食わねどチャーリーは笑う』は、日ごろ私たちが感じている、夫やパートナーへの苛立ちを一緒に共有して笑っているうちに、なぜか感動してホロリ…。やっぱり今回も最後は、ポッと温かくなってウルッとしながら微笑まずにいられない、“何かちょっといい、すっごく愛すべき映画”でした。

左:香取 慎吾
1977 年1 月31 日生まれ、神奈川県出身。91 年にCD デビュー。主なドラマ出演に、「新選組!」(04)、「西遊記」(06)など。主な映画出演に、『THE 有頂天ホテル』(06)、『ザ・マジックアワー』(08)、『座頭市 THE LAST』(10)、『人類資金』(13)、『クソ野郎と美しき世界』(18)、『凪待ち』(19)など。日本財団パラリンピックサポートセンターのスペシャルサポーター、及び国際パラリンピック委員会特別親善大使、ディレクター。「JANTJE_ONTEMBAAR」を展開、ルーヴル美術館で個展も開く。
右:市井 秀昌 
1976 年4 月1 日生まれ、富山県出身。劇団東京乾電池を経て、ENBU ゼミナールを卒業。初長編『隼』(05)がぴあフィルムフェスティバル準グランプリ、他を受賞。『無防備』(07)がぴあフィルムフェスティバルでグランプリを受賞。初商業映画『箱入り息子の恋』(13)がモントリオール世界映画祭ワールドシネマ部門に正式出品、日本映画監督協会新人賞を受賞。ドラマW「十月十日の進化論」(15)でギャラクシー賞奨励賞ほか多数の賞を受賞。他に草彅剛主演の『台風家族』(19)など。

超マイペースで妻の負担なんて気にしたこともなく、長時間にわたる筋トレのせいで既にブランチの時間なのに、「これは朝食でしょ。昼はキーマカレーがいいな」とか、どこか鈍くてカッコ悪い裕次郎を、まんま“そんな人!?”と思わせちゃうほどの香取慎吾さんの演技にも大注目です。『凪待ち』(西田尚美さんと登場してくれた記事はこちらから)の時の、やさぐれた男くさいダメっぷりとは、また真逆のダメさで……。

そんな風に妻を苛立たせる主人公の裕次郎を演じた香取慎吾さん、それを不思議な感動へと導いた市井昌秀監督に、“またまた面白い映画が出来ちゃった裏話”を聞いちゃいました。

──悪い奴じゃないけれどダメなんだよな、という裕次郎のモデルとなる人物は、自分を含めて周囲にいますか?

香取「今、初めて思いつきましたが、草彅剛じゃないですか(笑)。ちょっと近いですね。いい奴なんだけど、つい“何やってるの!? ”と言いたくなるような奴。でも満面の笑みで、“え?”と言いながら、注意されたことにも気づいていない、みたいな(笑)。そうなると、裕次郎に近い草彅剛がこの役をやった方が、良かったんじゃないですか?」

市井「いやぁ、それは考えていなかったですね。書いているとき既に“慎吾さんがやったら”と思いながら、ほぼ当て書きだったので。そこに“ほぼ”と余地を残しているのは、これだけ愛情あふれる慎吾さんみたいな方が、裕次郎のカッコ悪さをどう出してくれるのか、本番当日まで分からなかったから。ビジュアルまで想像して当て書きできたわけではなくて、“慎吾さんがコレ言ったら面白いな”と思いながら書いていました」

モグモグ食べている裕次郎を、憎々しそうに見つめる日和(笑)!このシーンだけでも、つい噴いてしまいそう。

──書いている際に裕次郎のモデルとなったのは、ご自分ですか?

市井「全くその通りです (笑)。僕、今日も妻に駅まで送ってもらったのですが、その前に“服を変えた方がいい”と言われて、すごく揉めたんです。結果的に今着ているのは、中3の息子のシャツなんですよ。そんな風に小さなことでケンカをすると、その瞬間は気遣いや愛情が不足しているんだな、と反省して。だから今、控室で“ごめんね”と電話してきました」

香取「ハハハハ(爆笑)! このホン(脚本)を書いたのが監督なので、やっぱり本当に(裕次郎は)監督なんですよ。だって、裕次郎の(日和を苛立たせる)口癖の、“いい意味で”というのを現場で監督が言ったの覚えていますか?」

市井「はい、覚えてます!」

香取「演出しながら、ゆきのちゃんと僕に対して、“次のシーンは、ここでこうして欲しいんです。いい意味で”と言ったんですよ(笑)!! ものすごくビックリして、ゆきのちゃんも僕も、“監督、今のマジですか!?”と言ったくらい。そうしたら監督は気づいてなくて、“何が?”みたいな反応で。だから、 “今<いい意味で>って言いましたよ!!”って」

市井「(爆笑)! それ、妻も嫌いなんですよね。日常でも僕が結構、無意識で言っちゃうので。でも、僕のことを嫌いなわけじゃない、というか……」

『犬も食わねどチャーリーは笑う』はこんな映画

(C)2022“犬も食わねどチャーリーは笑う”FILM PARTNERS
9月23日(金・祝)より全国ロードショー

裕次郎(香取慎吾)と日和(岸井ゆきの)は結婚4年目。周りからは仲良し夫婦と思われているが、妻の気持ちにまるで鈍感な裕次郎に、日和は鬱憤を溜めていた。そんなときに出会ったのが、SNSの「旦那デスノート」。妻たちの本音や怒りが炸裂した「旦那デスノート」の中でも、日和の絶妙にブラックな書き込みは人気となっていく。ところが偶然、裕次郎は自分のことかと思わせる書き込みを見つけてしまう。しかもハンドルネームは、2人が飼っているフクロウの名前【チャーリー】。それから裕次郎は、チャーリーの投稿を追うようになり……。夫婦のゆずれない、ゆずらないバトルを描いたブラックコメディ。

──監督の中から出てきた、裕次郎という人物についてお聞かせください。また香取さんは、どう裕次郎に近づいていったのでしょう。

市井「単純に悪い人ではなく、とても一般的というか平凡な人物であり、でも追いつめられると愛情を忘れてしまう、愛情が薄まってしまう人。周りにもよくいると思いますし、自分でもそういう瞬間が良くあるな、と。誰しもが起こり得る人物を書きたかったんです」

香取「でも、僕とは違います!」

市井「確かに慎吾さんは懐がすごく深くて、気遣いもとても細やかな方なので」

香取「その通りなんですよ、僕、いい男なので……(笑)! だから、もう本当に、こいつダメな奴だな、と思いました。でも、そこを面白がれました。裕次郎はカッコ悪いですが、それをカッコいい人が演じてしまうと、カッコ良さが残ってしまうというか、カメラの前だとカッコ良くいたくなっちゃうんですよ。そこを拭い去る作業が、楽しかったですね」

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──香取さんの“拭い去る作業”について教えてください。演出的にも、監督は何か指示はされましたか。

香取「ほんのちょっとしたことなんです。お芝居って、自らやることでもありますが、本番の短い中で起こる“偶然”も一杯あるわけです。例えば歩いているシーンでも、“たまたま、つまずいちゃったらいいのにな”と思いながらやっていました。でも、そんな偶然の芝居というのは、自分だけでは出来ない。そういう偶然が、あればあるだけいい役でした。例えばポケットからスマホを取り出す際も、ちょっと引っ掛かるようなことが起きて欲しかったのですが、色々な経験値で上手く取り出せちゃうわけですよ(笑)。そうすると、今のは違うな、と思ったり……。それも含めてお芝居ではあるけれど、わざと引っ掛かるようにするのも違う。フと出る感じなんですよね」

市井「基本的に裕次郎という役は、岸井さん演じる日和とのやりとりが多いわけですが、香取さんも岸井さんも役のことをすごく把握されているので、僕としては正直、それを楽しんで見ていた、という感じでした。慎吾さんが言われるように、カッコ悪さって、ちょっとした仕草や表情で生まれるもの。そういうディテールを、演出でチクチク操作するのはあまり良くないと僕自身は思っているので、2人から“フと出て来てしまうこと”を楽しんでいた感じです」

“フと出てしまう”ようなお芝居とは!?

──でも、フと出るものを待つ、フと出るように心がけるというのは、非常に難しいですよね。しかも、微妙な匙加減が重要です。

香取「今、思い返してみると、全体的にずらしていく、という感じだったかもしれない……。気持ちよく感じられる正解のセリフのテンポなど、いつの間にか経験から出来ちゃうものなんですよ。それをズラそう、ズラそう、としていた気がします。日常においては、ドラマでよく目にするようにスムーズには会話って進まないものですよね。そういう、ちょっとしたズレが生っぽさに繋がるのかもしれないな、と。セリフの言い合いだったら、この“間”で言いたいところを、ちょっと待ってから言う、とか。同様に動きにしても、傍から見ると“もう少し速く動けよ”と言いたくなるように、1テンポ遅くする。あまり強く押し出したわけではないですが、思い返すと、そうやっていた気がします」

市井「お芝居としての技術かもしれないですが、例えば裕次郎が結婚式のスピーチメモを忘れるシーンにしても、慎吾さんがそういうことを丁寧にやって下さったから、“ほんまに忘れたんやな、カッコ悪いな”とちゃんと思えたんですよね。そういうところが、いいなぁ、と思いながら見ていました」

──その、後輩(井之脇海)の結婚式のスピーチのシーンが、またとても素晴らしかったです。スピーチ原稿を失くしたために、その場で思いついたことを裕次郎が語り始める。その挨拶が、まさか夫婦の神髄を突くとは、という驚きと感動のシーンになっています。つい、フッと泣けてビックリしました。

市井「後輩の結婚式というオフィシャルな場でありながら、ちゃんと本音を出すシーンでもあるわけですが、あの場で裕次郎が言ったことは、僕自身が思っていることでもあるんです」

香取「本作はホラーのようなコメディ映画であるはずなのに、あのシーンでは自分も涙腺が刺激されました。とはいえ裕次郎としては、涙腺が緩んでいる場合じゃない、ということでもあったわけですが……。好きなシーンでもあるけれど、同時に不思議なシーンでもあり、僕は“これぞ、市井監督!”という感じがしました」

市井「そうですか!?」

香取「読み解けない、というか……。“緑色のソファ、セラミックのフライパン”等々、家にあるものを言っているだけなのに、涙腺を刺激されて胸がグッとくるなんて……と。大抵、胸がグッと来るのって、この流れで来るとこうなるな、と自分でも答えが分かるものですが、あのシーンは、それがちょっと分からない。どうして人がグッとくるのか、分かるんだけれども、分からない感じが市井監督の映画だなと感じて、すごく好きでした」

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──裕次郎が勤めているホームセンターでの人間模様も面白い。後輩に井之脇海さん、店長に的場浩司さん、同僚に余貴美子さん。つい、プッと噴き出してしまう人物描写があり、みなさん顔芸も含め、最高でした!

市井「ハハハ(笑)。実は、余さんも的場さんのシーンも、敢えて「ヨ~イ」から「スタート!」と言うまでの“間”を、長く取っているんですよ。「スタート!」が掛かって俳優が芝居を始める、その一瞬前の表情が、すごく良かったりするので、今回もそこを使わせていただいたりしているんです。本当の驚きは、その瞬間にあった、というようなことがあるので。本人に言ったら怒られちゃうかな……」

香取「なるほど、そうだったんですね。あの職場の仲間たちの感じ、僕もすごく好きなんです。結婚式で撮った写真が職場の壁に飾られているのですが、それを見ても、そんな深い仲に見えないのが良くて(笑)。でも、きっと彼らの人生においては、すごい親友っぽいと思うんですよ。でも同時に、ちょっと薄っぺらそうにも見える。その辺が、なんかすごくリアルで、熱い友情じゃないところがいいな、と。それでも人って互いに支え合っていて、こういう仲間がいるからこそ乗り越えられる何かがあるというか。ドラマみたいな友情じゃない、リアルな感じがすごく好きでした」

デスノートの夫ディス川柳が最高!

──“旦那だけ カミナリ直撃 良い意味で”など、旦那に対するデスノートの川柳が爆笑を誘います。そんな感情に至るまでを“あるある”と思いながら観ているので、余計に笑えたりしますが、男性はそれをどう観るのか興味が沸きます。

香取「僕はいい男なので、裕次郎を本当にダメな男だな、と」

市井「やっぱり僕は嫌いにはなれないです。ダメだとは分かっていますが……」

香取「だから日和にあんな風に書き込まれちゃうの、ちょっと当然だと思っちゃう(笑)」

市井「っ……」

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香取「だって愛がない。例えば、家の中での気まずい空気に凹みながらも、次の日の朝には何事もなかったかのように、職場で“お早うございま~す。ちゃんと仕事出来てるか?”みたいに、いい副店長のように振る舞っちゃって。誰も慕っていないのに」

市井「慕われてはいないまでも、でも憎めない人にはなっていますよね!?」

香取「でも、そこも好きなんですよ(笑)。普通のドラマだと、前日のことをもう少し引きずったりする描き方もあると思いますが、裕次郎は全く引きずっていない。いつもより明るいでもなく、本当にいつも通り平坦に“おはよ~ございま~す”とやって来るのが好きでした。そこで名前を呼ばれ、後輩に“ここでは副店長って呼べよ!”なんて言っちゃって(笑)」

市井「確かにそういうのも、小っちぇえな、とは思われてはいるでしょうね(笑)」

──でも、そんなダメな裕次郎の姿から、色々考えさせられもしますよね。

香取「人って“言わなくても分かる”ではなくて、“言わなきゃ分からない”ものだと思います。僕はいい男なので、常日頃から言葉にすることが大事だと思っていて、恋人、友だち、職場など色んな場所で、ちゃんと言葉にするようにしているんです。“こうしたいけれど、どう思う?”とか“今、これで僕は合っているかな?”など、たくさん言葉に出すようにしています。声にしないと分からないことの方が多いと思っていますが、それをしないと裕次郎みたいになっちゃうんじゃないかな。彼って自分のことしか見えていないようで、自分のことも見えていない。あ……なんか、すごい監督が怒られているみたいになっちゃいましたね(笑)」

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──そんな裕次郎ですが後半に向かってどんどん、全身から悲しみが放たれている感じがして、観る方も何だか半べそ状態になってしまいました。そして遂に、感情が抑えきれずにウッとなる裕次郎に胸が揺れて……。

市井「終盤でのやりとりは、裕次郎も日和も、本当に剥き出しでしたね。理屈じゃない剥き出しになったシーンを、何度も繰り返させていただきました」

香取「最後の方でドバーッと感情が来るシーンでも、監督の演出が面白いと思いました。実際の僕は観客と同じように気持ちがジワジワ来ているのに、表現の中ではそんなにジワジワ来ていない感じで、それがリアルでもあって。心の奥底に来ているジワジワした表情を、ずっと見せてこなかった日常がそこにあるわけです。でも、それがあふれ出てしまう瞬間の演じ方、その演出がすごく好きでした。あのシーンの裕次郎は、ちょっと僕に似ているかもしれないな。唯一の類似点と言えるかもしれません。我慢して我慢して涙が溢れる瞬間の裕次郎は、自分に似ている……。うん、あの限界の感じは僕ですね

市井「とはいえ僕は、まったく泣かせるつもりで作っていないんです。むしろ笑えてしまってもいいかな、と思うシーンでもありました。あくまで僕はフラットに、笑ってしまうだけで終わらせてしまってもいいと思いながらやっていました」



俳優、監督の互いの評価

──俳優として、監督として、この作品を通して、改めてお互いに感じたことを教えてください。

市井「最初に、裕次郎のようなダメなところや情けないところは、どんなに小さくても慎吾さんの中にもきっとあるから、それを何とか抽出して虫眼鏡で広げてくださいとお願いしたんです。そうしたら、現場で本当にカッコ良さを消してやっていただけたのが何より嬉しかったです。その芝居のセッションを見て、信頼していただけているんだな、と思えました。慎吾さん自身、アイドルであると同時に、ご自分でも作品を創作するアーティストでもあるので、こちら側の意図がすべてわかっている。カメラの位置やサイズ感も含めて、“スタート!”と同時に空気を変えちゃうんですよ。その空間把握能力がスゴイと改めて思いました」

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香取「監督は映画が本当に好きで、色んなことをやりたいという思いがすごく詰まっていると思いました。市井監督がやりたいことを、みんなが作っていく感じがすごくした現場でしたね。でも、すごいこだわりがあるハズなのに、急に止めたりすることがあって(笑)。みんなが、監督はどうするんだ?と待ち構えていると、“あ、やっぱり、いいや”みたいな感じに急になったりして、みんなでズコ~ンとズッこけたりしました(笑)」

市井「それも、ちゃんと信念のもとに決めているんですよ!」」

香取「確かに信念のもとなんだけれど、なんとなく、そういう完璧じゃない感じがいいな、と(笑)。いい意味での“初心感”みたいなものが、すごく新鮮でした。周りのスタッフみんなが監督に注目していて、みんなで答えをその場で探っていくのを感じたんですよね。鶴の一声系の監督ではないけれど、また別のカリスマがあるというか」

市井「僕は助監督を経て今に至っているわけではないので、原作や脚本が元からあって、その上でいい映画に仕上げることができる職人的な監督ではない、という自覚があるんです。でもオリジナルだから自分が監督するのが一番いいだろう、となるわけで。そういうのが、周りのみんなに伝わっているのかもしれないです。狙っているわけではなくて、みんなに助けられて、ここに今いさせてもらっているんだ、と思っています」

果てさて、フクロウのチャーリーを連れて家を出てしまった日和の心を、裕次郎は取り戻すことが出来るのでしょうか!?

夫婦って段々と新鮮味が薄れてくるだけではなくて、長く一緒に過ごせば過ごすだけ、あまりに日常に溶け込み過ぎちゃって、少しでも波風が立ちそうなことを「いちいち言わなくてもいいか」と飲み込んだり、言うこと自体が面倒くさくなっちゃったりするんだよな、と日和に自分を重ねたり……。でも、“不満の根”って、どこかにちゃんとあったりもするんですよね。一番分かって欲しい気持ち、気づいて欲しいこと。

そんな日和の心、孤独や不満を、こんな風に描いてしまえる愛妻家・市井監督、やっぱりステキです。『台風家族』で草彅さん、本作で香取さんと来たら、次は稲垣さんのためにオリジナル脚本を書いて欲しいですよね!!

そしてもちろん香取さんは、相変わらず作品ごとに“濃厚な味”を出されていて、俳優として素晴らしいのはもちろんですが、こうして取材でお会いすると、その場に居る誰もを惹き付けてしまうカリスマを感じました。みんなを“楽しい!”って気持ちにさせてしまうスゴイ人。

本音をぶつけあった末に裕次郎と日和が求める2人ならではの幸せの形に、希望がパーッと差し込むような、そんな気持ち良さを覚えさせてくれる本作。是非、夫婦やパートナーと一緒に笑い泣きしてください!

映画『犬も食わねどチャーリーは笑う』

2022年/日本/117分/配給:キノフィルムズ

監督・脚本:市井昌秀

出演:香取慎吾、岸井ゆきの、井之脇海、中田青渚、小篠恵奈、松岡依都、的場浩司、眞島秀和、きたろう、浅田美代子、余 貴美子ほか

9 月23 日(金・祝)、TOHO シネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

(C)2022“犬も食わねどチャーリーは笑う”FILM PARTNERS

★併せてお読みください

【草彅剛さん×市井昌秀監督】『台風家族』の銭ゲバ家族大バトルに泣いて笑って感動!?

【香取慎吾さん×西田尚美さん『凪待ち』インタビュー】 香取さんの“ろくでなし”熱演が泣ける!

『犬も食わねどチャーリーは笑う』公式サイト

写真:菅原有希子

折田千鶴子 Chizuko Orita

映画ライター/映画評論家

LEE本誌でCULTURE NAVIの映画コーナー、人物インタビューを担当。Webでは「カルチャーナビアネックス」としてディープな映画人へのインタビューや対談、おススメ偏愛映画を発信中。他に雑誌、週刊誌、新聞、映画パンフレット、映画サイトなどで、作品レビューやインタビュー記事も執筆。夫、能天気な双子の息子たち(’08年生まれ)、2匹の黒猫(兄妹)と暮らす。

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