『スーパー30 アーナンド先生の教室』

© Phantom Films, N＆G Ent, Reliance Ent, HRX Films.

超格差社会インドで厚い壁をぶち破った奇跡の実話

驚くべきことに実話、それゆえの強靭な物語に、インド映画らしいコテコテな演出を施して勧善懲悪ものに仕立て、観る者の気分を存分に高揚させてくれる。

貧しい家庭の生まれだが天才的な数学の才能を持つアーナンドは、難問の解法を英国ケンブリッジ大学に送ったところ、入学を許可される。しかし渡航費を工面できず断念。追い討ちをかけるように父親が心臓発作で亡くなり、研究の道を閉ざされて細々と行商で日銭を稼ぐことに。そんな彼を、進学予備校を経営するラッランが、“数学オリンピックで優勝した男だ”と気づいてスカウト。アーナンドを売りに塾は繁盛し、彼も随一の人気講師となって豊かな生活を手に入れる。

だがある日、仕事を手伝いながら路上で勉強する若者に出会い、忘れていた情熱が燃え上がる。貧しさゆえに学ぶことができない才能ある子どもたちに、無償で家・食事・教育の提供を決意し、最高峰のインド工科大学進学への私塾“スーパー30”を開設。しかし、ラッランがあの手この手で妨害し、やがて資金も尽き始め……。

貧しいが勉学への熱をたぎらせる若者たち。ある者は何日も徒歩で、ある者は盗んだ鶏を売ってバスで各地から駆けつける。そこから選抜された30人の若者たちが目を見開かされ、さまざまな知恵を絞って知識を身につけていく様にワクワク！　例えば高価な本が1冊しか買えなければ、知恵を出し合ってプロジェクターを作り、壁に映して貪るように読み合う姿に。

前半はアーナンド自身の運命に地団駄を踏み、中盤は生徒らの学ぶ姿に鳥肌が立ち、後半は私塾を潰しにかかるラッランや汚職高官らとの闘いに全身が燃える。終盤、雇われた悪漢らを、武器を持たない彼らがいかに迎え撃つか。“あのとき、教えられた知識がこんなふうに!!”と、まさに目から鱗が落ちる。教育の大切さ、人間の可能性、理念を守り抜く尊さがガツンと心に叩き込まれる、興奮必至の熱き感動作。果たして合格できるのは……。それは観てのお楽しみ！

・9月23日より全国順次ロードショー
・公式サイト

『デリシュ！』

©︎2020 NORD-OUEST FILMS―SND GROUE M6―FRANCE 3 CINÉMA―AUVERGNE-RHôNE-ALPES CINÉMA―ALTÉMIS PRODUCTIONS

人が集まり自然とレストランになっていく過程も楽しい！

フランス革命前夜の美食の国を舞台に、世界で初めてレストランを作った男のその経緯が、ドラマティックに紐解かれる。宮廷料理人マンスロンは、自慢の創作料理が貴族らの意地の張り合いで酷評される。田舎に戻った彼の元に、弟子にしてくれと謎の女性が現れ……。特権階級の鼻持ちならない美食家らに辟易し、おいしいものを食べると誰もが幸せになる姿に喜びが満ちる。階級を越え人々が集うレストランに乾杯！

・TOHOシネマズ シャンテほかで公開中
・公式サイト

『犬も食わねどチャーリーは笑う』

©2022 “犬も食わねどチャーリーは笑う”FILM PARTNERS

香取慎吾×岸井ゆきの×市井昌秀監督による夫婦コメディ

裕次郎と日和は、結婚4年目。周りからは仲よし夫婦と見られているが、日和は鈍感な夫にイライラ。その鬱憤をSNS〈旦那デスノート〉に書き殴る。それが人気となり、ひょんなことから裕次郎の知るところに……。いろんな妻たちのデスノートでの暴言が、“夫婦あるある”満載で爆笑！　夫婦のガチバトルの最中に、二人に溝ができた理由が次第に明らかとなる。そして、空回りに近いケンカの後の気づきに至る過程にホロリ。

・9月23日より全国ロードショー
・公式サイト

※公開につきましては、各作品の公式サイトをご参照ください。

取材・原文／折田千鶴子
こちらは2022年LEE10月号（9/7発売）「カルチャーナビ」に掲載の記事です。