まだまだ低いiDeCo(個人型確定拠出年金)の知名度
2017年1月から誰でも利用できるようになったiDeCo(個人型確定拠出年金)ですが、その知名度はまだまだ低いようです。
家計簿アプリ Zaimのアンケ―ト調査によると、iDeCoを「知っている」と回答したのは全体のおよそ2割 にとどまる結果に。iDeCoとは老後資金を作るための有利な制度だという説明をしたうえで、「やってみたいと思う」と回答した人が26%と、およそ4人に1人。最も多かった回答は「わからない」(39.4%)という結果だそうです。
前回、この制度は「老後資金は年金に頼るだけじゃなく、自分でも準備してくださいね」という国からのメッセージだと前回(今年から専業主婦も加入できるiDeCoって?」)書きましたが、なかなかそれを受け止めてもらえていないようですね。たしかに、iDeCoを使って老後資金を準備しようと思った場合、「わからない」ハードルがあるようです。
その1「預貯金以外でお金を運用した経験がないのでわからない」
その2「どこで始めていいかわからない」
その3「どんな運用商品を選んでいいかわからない」
大きなところは、この3つではないでしょうか。
まず、「確定拠出」とは、出す掛け金が決まっているという意味で、受け取れるお金は運用次第で増減します。受け取れるお金が決まっている=確定給付型とはそこが異なります。となると、預貯金ではなく投資信託などの値動きがあるもので運用した方が将来の受取額が増える可能性が高いのです。しかし、これまで値動きのある投資商品を買った経験がない人は、ここでためらってしまうのでしょう。しかし、これから預貯金の金利が上がるには、企業の儲けが増え日本経済が好転し物価がぐんぐん上がり…を待たなくてはなりません。株価に連動した投資信託なら、長期で見れば預貯金の金利を上回る利益が期待できますし、海外の株式を組み合わせた商品を選べば日本の経済がいまいちでも他国の経済が好調ならトータルで価額が上がることもあります。iDeCoは毎月5000円から始められるので、最初は少しの掛け金で投資に慣れるというのもひとつでしょう。
次の二つ「どこで始められるか」「どんな運用商品を選んでいいか」は、同時に考えたほうがいい問題です。iDeCoを利用するには、銀行、証券会社、保険会社などの金融機関(運営管理機関)を一か所選び、口座を開く必要がありますが、各金融機関ごとに毎月かかる口座管理手数料と、取り扱っている商品の内容が異なります。口座管理手数料は、このところ金融機関の競争が激しくなるにつれ値下げ中。NPO法人 確定拠出年金教育協会の「iDeCoナビ」や、モーニングスターの個人型確定拠出年金ガイドなどのサイトで金融機関ごとの手数料が一覧できるので参考にしましょう。
選ぶ金融商品は手数料次第で増え方が変わる
口座管理手数料が安いところを選ぶのもポイントですが、その金融機関で扱っている運用商品の内容をチェックすることも大事です。
とくに投資信託の場合は、保有している間にかかる手数料「運営管理費用(信託報酬)」に注意。これがなるべく安くすむ投資信託をそろえているかどうかが、第二のポイントになります。なぜなら、同じように資産が増えていっても、手数料が高いと儲けはその分目減りしてしまうから。信託報酬は資産の総額に対する割合でかかるので、資産が増えるほど引かれる金額も大きくなり、いっそう差が出てしまうのです。
なお、iDeCoで選ぶことができる投資信託には様々な種類があります。日本の株式や債券に投資するもの、海外の株式や債券に投資するもの、そのミックスなど。いくつかの商品を組み合わせてもいいですし、国内外の株と債券をミックスしたバランス型と呼ばれるものをひとつ選ぶ方法もあります。いろんなパターンがあるので正解はひとつではありませんが、他に投資をしていない人にはバランス型をおすすめする専門家が多いようです。一度決めた金融機関を変更するのは何かと大変なので、スタート時は慎重に選びましょう。
iDeCoをスタートするための3つのハードルは越えられそうでしょうか?
一番大事なことは、「わからない」で済ませずに興味を持つことです。iDeCoで作る老後資金は他の誰のためでもなく、自分のためのお金。お金をより有利に増やせる仕組みを使う人と使わない人では、将来大きな差が出てしまいます。老後に不安を感じているなら、iDeCoの記事を読んだりセミナーに参加して、わからないことを少しずつ解決していきましょう。じっと見守っているだけではお金は増えない時代です。自分もお金と一緒に育っていこうという意識で、前向きにiDeCoを利用してもらえればと思います。
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松崎のり子 Noriko Matsuzaki
消費経済ジャーナリスト
消費経済ジャーナリスト。雑誌編集者として20年以上、貯まる家計・貯まらない家計を取材。「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。