今年に入って食品の値上げが続々と
家計を直撃する食品値上げはまだまだ続き、ビールやペットボトル飲料などがこの10月出荷分から値上げされます。
そこに影響してくるのは、半年に一度の輸入小麦の政府売渡価格の改定です。
小麦は需要の約9割を輸入に頼っており、政府が大口の購入者となることで、より安定的に小麦を買い付けることができるようにと「政府売渡制度」をとっています。
売渡価格は、直近6カ月間の買付価格の平均額に経費等を上乗せして算出され、4月と10月の年2回に価格改定が行われる仕組み。
そのため、この10月の改定ではウクライナ情勢で上昇していた小麦価格の影響を大きく受け、一段と上がることになるのではと考えられていました。
それが食品値上げのさらなる要因になると思われたのです。
来年のパン値上げは避けられそうか
小麦はまず製粉会社が製粉し、その後に小麦粉としてパンや麺類、菓子などの製造メーカーへと渡り、製品に加工されます。一部は味噌や醤油の加工用にもなるそうです。
10月の政府売渡価格が引き上げになっていれば、2023年1月ころから消費者が買うパンや麺などが再々値上げされる可能性が大きいはずでした。
また、中華麺やうどんの価格が上がれば、外食産業にも影響が。なるべく安い価格のままメニュー提供しようとすればするほど、利益を圧迫し、そこで働く人の給料も上がらない――という悪循環を起こしかねません。
さすがに物価への影響が大きいということで、政府はこの10月の政府売渡価格を据え置くとの考えを示しました。消費者としては嬉しいニュースです。
ロシアのウクライナ侵攻を受けて今年3月に急上昇した国際価格が、ウクライナからの穀物輸出が再開したことやアメリカの小麦の生育が順調との見通しなどを受け、軍事侵攻前の水準まで下がってきている点も大きいのでしょう。
食品値上げの要因は小麦だけではありませんが、毎日消費するパンや麺の値上げが一服するのであれば朗報です。
為替やエネルギー価格の動向も気になりますが、できれば生活必需品の値上げはそろそろ落ち着いてほしいところですね。
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松崎のり子 Noriko Matsuzaki
消費経済ジャーナリスト
消費経済ジャーナリスト。雑誌編集者として20年以上、貯まる家計・貯まらない家計を取材。「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。
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