週末のプチ贅沢、どんなワインを選ぶ?
『ワイン迷子のための家飲みガイド』著者である、ワイン&フード ジャーナリストの安齋喜美子さんに“家飲みワインのコツ”を教えていただく短期連載。vol.1ではワイン初心者におすすめ、かつ、入手しやすい4本をご紹介。前回のvol.2では「いつもの平日をアップデート」をテーマに、普段の食事にワインを合わせるペアリングのコツを教えていただきました。今回のテーマは「週末に飲みたいワイン」。家族でちょっぴり贅沢をしたいときや、仲の良い友達を招いたとき。プチ贅沢な食卓に合わせるワインについて、安齋さんにお聞きしたいと思います。
ひとりの時には手に取らないもの、でも無理のない価格帯で
──ちょっと手間をかけた食事でゆっくり過ごしたい。遊びにきたお友達へカジュアルなおもてなしをしたい。そんな週末は普段手にとるものより、すこしだけ背伸びをした一本を楽しめたらいいのですが、いざ選ぶとなると難しいものです。今回は2〜3千円台で手に入るワインをセレクトしていただきました。
安齋さん「今回選んだのは、リースリング(白)、ボルドー(赤)、そしておもてなしの席に欠かせないスパークリングの三本。どれも普段使いにはちょっと贅沢かな、と思うくらいの価格帯ではないでしょうか。ぜひ、ご友人を招くときや、家族でゆっくり過ごすときに楽しんでもらえたら嬉しいです」
──秋は連休が重なっていて、久しぶりに友人を招いたり親戚と集まる。そんな機会も多くなりますね。私もぜひ参考にしたいです。早速ご紹介をお願いします。
ペアリングの幅広さが、持ち寄りパーティにぴったり
ドメーヌ・ツィント・フンブレヒト リースリング テュルクハイム
──一本目に選んでいただいたのは、リースリング種の白ワインです。
安齋さん「ドメーヌ・ツィント・フンブレヒトは、仏アルザス地方で12代続く老舗。 “アルザス最高峰”とも呼ばれるワイナリーです。そのなかから今回はリースリング種を選びました」
──リースリング種については、書籍のなかで「時に爽やかで時に甘やか。ペアリングの幅広さがリースリングの楽しさ」と表現されていましたね。いろいろなテイストの料理が集まる持ち寄りパーティーに活躍しそうだな、と感じました。
安齋さん「はい、幅広い料理に対応できる品種だと思います。アップルパイやレモン風味のスイーツのような甘酸っぱいスイーツとの相性も良いです。リースリング種は手頃な値段のワインでも味わいが上質なものが多いのですが、そのなかでもドメーヌ・ツィント・フンブレヒトというチョイスは、通な印象を出せるかもしれません」
ドメーヌ・ツィント・フンブレヒト リースリング テュルクハイム
生産国/フランス
「アルザス地方で1620年からワイン造りに携わってきた ツィント・フンブレヒト。現在は自社畑全てを、有機栽培よりもさらに厳しい規定に沿ったビオディナミ農法に転換。柑橘類のアロマ、凝縮した果実味のある豊かな表情が感じられ、繊細でエレガント」(公式資料より抜粋)
間違いのない、お得感のある格付けの味
シャトー・ラネッサン
──続いては赤ですが、ボルドー産のシャトー・ラネッサンを選んだ理由はどんなところでしょうか。
安齋さん「ボルドーは本当にたくさんのワインが造られているのですが、その中でひとつ選ぶ基準になるのが格付けなんです。シャトー・ラネッサンはボルドーのクリュ・ブルジョワという格付けに選定されたこともあるほか、有名なワイン評論家ロバート・パーカー氏がプライベートで好んでいるというワインでもあります。裏付けされた間違いのない味なのに、手の届くお値段で楽しめる。非常にお得感のある一本だと思います」
──格付けの味わいを気軽に試せるのは嬉しいですね。ボルドー地方の格付けについては『ワイン迷子のための家飲みガイド』のなかでも詳しく解説されています。(書籍102ページ「フランス①ボルドー地方」参照)
安齋さん「一言で格付けワインといっても、全てが高額という訳ではありません。手ごろなカジュアルラインも存在していて、きちんとした品格ある味わいを感じられますので、ぜひ試していただきたいです」
シャトー・ラネッサン
生産国/フランス
「シャトー・ラネッサン名門ブテイエ家が所有し、お値打ちなボルドーワインとして確固たる地位を築くシャトー。クランベリー、ブラックベリー、プラム、ブラックカラントなどの濃厚な果実のアロマ。そこにハーブ、スパイス、土っぽさのニュアンスが加わり香りを複雑なものにしています。タンニンは非常にしなやかで、適度な酸を保持。凝縮した果実の旨味と熟成感が絶妙に調和した1本」(公式サイトより)
家族や友人と楽しみたい、華やかなスパークリング
エスパス・オブ・リマリ スパークリング・ロゼ
──おもてなしに欠かせないスパークリングですが、カジュアルにも楽しめる手堅い一本を知っておきたいです。
安齋さん「エスパス・オブ・リマリ スパークリング・ロゼ は、なによりこの華やかなボトルがいいですよね。ピンクのラベルといい、一瞬で楽しい雰囲気が伝わる一本だと思います」
──冷蔵庫から出したときに、家族からワッという歓声が上がりそうです。このスパークリング・ロゼはどのような特徴があるのでしょうか。
安齋さん「チリ最大のワインメーカー、コンチャ・イ・トロが手掛けるワイナリーです。リマリ・ヴァレーという冷涼な土地にあって、その気候を生かして造っているスパークリング・ロゼは、二千円を切るコスパの良さ。それなのにこの味わいなの、と驚きがあります」
──おもてなしはもちろん、家族で過ごす週末にも気軽にいただけるのは嬉しいですね。前回の「いつもの平日ごはんをワインでアップデート!」のなかでも、その魅力について紹介しましたが、ロゼは赤と白のいいとこどりでオールマイティ。きりっと冷やして夏のプチ贅沢な一本として使ってみたいです。
エスパス・オブ・リマリ・スパークリング・ロゼ
生産国/チリ
「グラスに注ぐと、淡いピンク色が印象的で、スグリや白い花、そして豊かな土壌に由来するミネラル感のあるストロベリーやチェリーなどの赤い果実のアロマ。フルーティーな味わいで、バランスに優れた酸とキリリとしたフィニッシュが魅力的です。スモークサーモンや生春巻きなどと特に相性が良く、日常の食卓を鮮やかに彩ってくれます」(公式サイトより)
──おもてなしでちょっといいワインを、となると気になってくるのはワイングラスです。良質な一脚が欲しいとき、どのように揃えていったら良いでしょうか。
安齋さん「まずは白赤兼用のグラスを選んでみてはどうでしょうか。お子さんがいらっしゃるご家庭なら脚のないグラスは安定感があります。リーデルは有名なブランドですが、そのほかツヴィーゼルもおすすめです。良いグラスで飲むと、不思議とワインの味わいも変わるものです。美味しいワインが手に入ったら、グラスもちょっとだけ背伸びしてみてはいかがでしょうか」
──ありがとうございます。次回はこの連載の最終回。両親の記念日、お世話になった方の退職祝い、大切な方に贈る「とっておきの一本」を選ぶコツに関して教えていただきたいと思います。安齋さんの著書『ワイン迷子のための家飲みガイド』では、安齋さんおすすめの家飲みワインを紹介しています。ぜひ記事と併せてご覧ください。
『ワイン迷子のための家飲みガイド』
1760円(税込)/集英社
四六判/208ページ
安齋喜美子(あんざいきみこ)
ワイン&フード ジャーナリスト。一般誌やワイン専門誌で料理やワイン、旅、お取り寄せなどを幅広く執筆。国内外のワイナリーや醸造家、レストランの取材も多数。日経電子版『SPIRE(スパイア)』で「家飲みが楽しくなる! お酒に合う絶品お取り寄せグルメ」を連載中。著書に『葡萄酒物語』(小学館)。シャンパーニュ騎士団シュヴァリエ。
お問い合わせ先
・ドメーヌ・ツィント・フンブレヒト リースリング テュルクハイム
日本リカー株式会社
03-5643-9770
https://www.nlwine.com/ (代表)
https://maru-miyataya.com/products (通販サイト)
・シャトー・ラネッサン
・エスパス・オブ・リマリ・スパークリング・ロゼ
エノテカ株式会社
0120-81-3634(フリーダイヤル)
https://www.enoteca.co.jp/
ぜひ、併せてお読みください!
『ワイン迷子のための家飲みガイド』をチェック!
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峰典子 Noriko Mine
ライター/コピーライター
1984年、神奈川県生まれ。映画や音楽レビュー、企業のブランディングなどを手がける。子どもとの休日は、書店か映画館のインドアコースが定番。フードユニットrakkoとしての活動も。夫、5歳の息子との3人家族。