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LIFE

CULTURE NAVI「CINEMA」

映画『オートクチュール』ディオールのアトリエを舞台に、お針子と不良娘の人生の交差、美と技の伝承を描いた物語

2022.03.10

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Cinema Culture Navi

『オートクチュール』

『オートクチュール』

© 2019 – LES FILMS DU 24 – LES PRODUCTIONS DU RENARD – LES PRODUCTIONS JOUROR

神技級お針子と不良娘の人生の交差、美と技の伝承

すっと姿勢を正し、ひそやかに呼吸するような気分にさせる、上品さと端正さ、同時にぬくもりに包まれた優しい感触の作品だ。主な舞台はクリスチャン・ディオールのアトリエ。だが物語の発端は……。

ディオールのオートクチュール部門アトリエ責任者のエステル(ナタリー・バイ)は、引退前最後となるコレクションの準備に追われている。

ある朝、若い娘が弾くギターにふと足を止めて聴いていると、どこからともなく現れた若者に鞄をひったくられてしまう。実は、ギターを弾くジャド(リナ・クードリ)こそが万引きの主犯で、移民が多く住む郊外の団地から遠征に来ていたのだった。エステルは地団駄を踏むが、後の祭り。しかし鞄の中身を見て恐れをなした親友に説得され、しぶしぶジャドは返しに行くことに。

ハイブランドが軒を並べるモンテーニュ大通りの雰囲気にのまれそうになりながら、ジャドはやっとのことでエステルに鞄を押し付ける。怒り心頭のエステルだったが、ふとギターを器用に弾き鳴らしていたジャドのなめらかな指に、お針子としての秘められた素質を直感し――。

優美なドレスを縫い上げることに人生をかけてきたエステルと、鬱病の母親の世話をしながら捨て鉢に生きてきたジャド。まるで別世界の出会うはずのない二人が巡り合い、師弟関係を結ぶことに。もちろん予想どおり、厳格なエステルと短絡的かつ衝動的に反応するジャドはぶつかり合い、関係も破綻しかける。それでも“美しいものを作り出す指”の才能や欲求は、それを持たぬ者の理解を遠く超えたところで、深く結ばれる。

技を継ぎたい、継いでみたい。互いに引き合うその絆――敬意が互いの家族に向けられるのも心地よい。環境や生い立ちや偏見を打ち破る、自分の腕で生きる覚悟と技術。新しい人生の始まり。静寂の中、優雅な生地をお針子たちの針と糸が滑る音、生み出される魅惑のドレープやプリーツにため息を漏らしながら、じんわり胸が熱くなる。

・3月25日より新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマほかにて公開
公式サイト

『林檎とポラロイド』

『林檎とポラロイド』

©2020 Boo Productions and Lava Films

どこかシュールで懐かしい、記憶と人間を巡る詩的な考察

突如記憶喪失になる奇病が蔓延した世界。バスで目覚めた男も、何も覚えていない。回復プログラムの指示で、「自転車に乗る」「ホラー映画を観る」などのミッションをこなし、ポラロイドに記録し続けるが――。

記憶がない心もとなさ、新たな経験は人間をどう形成するのか、元の人間性と何が違うのか。少し哀しげで何かを探るような彼の姿に、どことなくユーモアも漂う。ギリシャ出身の新鋭監督の独特の世界観に心奪われる。

・3月11日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開
公式サイト

『SING/シング:ネクストステージ』

『SING/シング:ネクストステージ』

© 2021 Universal Studios. All Rights Reserved.

5年ぶりの続編も最高にゴキゲンなミュージカル感動作!

前作でコアラのバスターが再建した劇場は大盛況! しかし世界的なエンターテインメントの聖地でショーをする、という次なる夢を膨らませていた。バスターとその仲間たちは、情熱を胸に大都会に繰り出すが――。

開催にこぎつけるか否かの大騒動、“さすが本場!”なスペクタクルショーにワクワク。アニメでしか表現し得ないゴージャスで芸術性の高い舞台にうっとりし、U2のボノやホールジーらが加わった豪華な楽曲にも歓喜。

・3月18日より全国ロードショー
公式サイト

※公開につきましては、各作品の公式サイトをご参照ください。


取材・原文/折田千鶴子


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