飾るだけで部屋の空気が変わる、自分だけのとっておき。そんなアイテムはどこで、どう探せばいい? この連載では、注目のショップやギャラリーを巡りながら、唯一無二の品との出会い方を教わります。初回は話題の下町、蔵前へ。
石井佳苗さん/Kanae Ishii
雑誌や書籍、広告など多岐にわたって活躍するインテリアスタイリスト。初心者にもわかりやすいオンラインレッスンも好評。「オブジェは、触れると作家さんの力を感じられるところが好き」(石井佳苗さん)
Instagram:kanaeishii_lc
公式サイト:https://kanaeishii-stylist.com
vol.1 | area: 蔵前 | Hunting item: オブジェ
気軽なアート、「オブジェ」が見つかる蔵前のギャラリーへ
アートに“慣れる”。まずはそこからスタートです
最初入るときは緊張するけれど、ギャラリーは、実は誰でもウェルカムな場所。「ものを買う“お店”と考えるから、緊張してしまうんですよね。ギャラリーは、たとえるなら小さな美術館。どんどん入って、アートに触れることに慣れて。オーナーは皆さん、アートが好きな方々。たとえ購入しなくても、作品への思いを聞いているだけで、楽しい時間が過ごせます。そこから得られる情報や知識もたくさん。“買わなきゃ”と気を張らず、散歩気分で立ち寄って」(石井佳苗さん)
Hint-1
自分好みのアーティストを紹介している、信頼できるギャラリーを見つけて
「この作家さんが気になる……と意識していると、『水犀』で展示が始まることも多くて驚くんです」と石井さん。「アートは実用品ではないから、手に入れたくなる条件は“心に響くかどうか”だけ。信頼できるギャラリーがあると、素敵な出会いの確率がぐんと高くなります。そんな場所を見つけるには、とにかくたくさん巡ること!」(石井佳苗さん)
「水犀」オーナーの光本貞子さん(中)と進藤尚子さん(左)。「アートと工芸の間に存在するような、垣根のない作品を多く扱っています。強いエネルギーを持っているけれど、アピールが苦手な作家さんたちを応援していきたくて」(石井佳苗さん)
この日展示されていたキムホノさんも、石井さんが「水犀」で知ったアーティスト
取材時はキムさんの作品が並んでいたが、通常は常設展示をしているスペース。「個展で訪れた際、このコーナーで新たに気になるアーティストに出会うことも多々」(石井佳苗さん)
キムホノさんは陶の作品を中心とした作家。「作風の幅がとても広いので、見ているだけで楽しいし、圧倒されます」(石井佳苗さん)
Hint-2
「かわいい!」と思う気持ちに正直に。器の延長で選んでいい
“オブジェ”というと「アートのことはわからないし」と尻込みしてしまうけれど……。「そんなに緊張しなくても大丈夫! 美術的価値などは意識せず、直感が大切。器や服選びと同じ気分でいきましょう」。ちなみに、今回の展示では1万円以下の作品もちらほら。「もっと気軽に、『家に置いたら、なんだかかわいいかも』くらいの気持ちでOK」(石井佳苗さん)
石井さんが手に取ったのは、陶器でできたバッグ“のようなもの”。「そのまま置くだけで存在感があるし、中に何か入れてもいいし……」(石井佳苗さん)
Hint-3
その後、置く場所や飾り方を考える
心動かされるものに出会えたら、次は持ち帰った後をイメージ。「これを飾ったら、空間がこんなふうに変わりそう……そんな具体的なイメージが浮かんだなら、それはもう、手に入れるべきもの!」(石井佳苗さん)。
とはいえ石井さんも、予算などの理由でいったん保留にする作品もあるそう。「落ち着いて考えてみても、やはり離れがたい魅力を感じるのなら、それを信じて。アートは一期一会です」(石井佳苗さん)
食卓の真ん中に飾りたいな
重ねて飾ってもいい!
ピンとくるものがあったら、質感を確かめつつ、自宅にある様子を想像。「実際に触れるうちに、思いもしない魅力に気がつくことも」(石井佳苗さん)
Hint-4
小さなものでもいいから連れて帰る
実用的な用途も期待できる、ちょっと気になるアイテムを連れて帰るのも、“アート慣れ”するにはいい方法。「ものを入れる器的な使い方ができるものだと、ハードルはぐんと下がります。自分の暮らしに無理なくなじませていくことで、インテリアにアートを取り入れる下地が自然にできるんですね。まず、一歩を踏み出すことが大切」(石井佳苗さん)
楽しい柄入りの作品は、いれものとして飾ってもいい!とピンときて
「カード入れとペン入れにも使えそう」と選んだ2つ。「アート作品は自分の生活に引き寄せて選んでみると、身近な存在になります」(石井佳苗さん)
この白のオブジェのシリーズも会期初日にゲット済み
Hunting item オブジェ
キャビネットに置いたり、デスクに戻したり。新入りオブジェそれぞれが、一番心地よさそうな場所を探ります。
飾り方1
もったいぶらずに実用品として取り入れる
何かを“入れられる”ものなら、とにかく入れてみる。「見慣れた部屋の中では、ギャラリーよりもさらに、オブジェの存在感を強く感じます。いつも使っているペンやアクセサリーが、そこに入るだけで不思議と意味ありげというか、魅力的に見えてくるんですね。実用品として日々触れて目にすれば、愛着もいっそうわいてきます」(石井佳苗さん)
以前買ったキムさんの作品はお香立てに
アクセサリー置きに
名刺とペン入れに!
いれものとして“作品”を使えば、周囲がアートの空気をまとう。「“そこにあることが当たり前”なほどなじんだら、場所を変えたり、別のものを入れたり。作品だけをシンプルに飾ってみることも」(石井佳苗さん)
飾り方2
一番目に入る場所で見て、愛でる
そこに存在するだけで、空気を変えるオブジェ。「まずは棚上や壁など目立つ場所に飾り、その効果を味わって。特に立体作品は、角度や光の加減など見る時間帯によって表情が変化。とにかくよく眺める、空気感も含めてよく味わう。それが、オブジェを飾る何よりの楽しさ」(石井佳苗さん)
壁掛けと右側のオブジェはキムさんの新作。「持っているアイテムと合わせてスタイリングを考えるのも、帰ってからのお楽しみ」(石井佳苗さん)
今回のHuntのまとめ
ひとつのオブジェがインテリアに与える影響は、絶大です
Kanae Ishii
オブジェは不思議なもので、ひとつ手に入れると、弾みがついたようにいろいろ“わかってくる”んです。好みが具体的な形として見えることで、インテリアの作り方も見えてくる。お気に入りが一点あると、それを軸にして空間を整えたくなるんですね。まずは心動くオブジェをひとつ。その出会いのためにギャラリー巡りを始めてみて。
Hunting Spot
水犀(みずさい) mizusai
DATA
陶の作品を中心としながらも、ジャンルを問わず作家が自由に表現し発表できる場、そして訪れる人が新しい視点に気づける場を目指す。12月18〜26日は、LIVINGSTONEの個展を開催。東京都台東区三筋1の6の2 3F ☎︎03・5846・9118 営業時間:12:00〜19:00(企画により変更あり。お問い合わせを) 不定休 https://mizusai.jp/
撮影/宮濱祐美子 取材・原文/福山雅美
LEE2022年1月号『スタイリスト石井佳苗さんのINTERIOR Hunting!』より
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