『偶然と想像』

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“偶然”から転がっていく、好奇心を刺激する3つの物語

『ドライブ・マイ・カー』がカンヌ映画祭で脚本賞など4冠、本作がベネチア国際映画祭で銀熊賞（審査員グランプリ）を受賞するなど、世界が最も注目する一人に躍り出た濱口竜介監督。長尺のイメージが強いが、本作は3つの物語から成る短編集。誰もが経験したことのある“偶然”の悪戯や皮肉にクスッと笑いが漏れる、軽妙な人生讃歌だ。

第一話『魔法（よりもっと不確か）』は、親友と元カレとまさかの三角関係!?という物語。仕事帰り、モデルの芽衣子（古川琴音）はヘアメイクのつぐみ（玄理）から、最近出会った気になる男性の話を聞く。だが聞けば聞くほど、元カレ（中島歩）と重なる。つぐみと別れた後、芽衣子が向かった先は――。

第二話『扉は開けたままで』は、就職をフイにしたと教授（渋川清彦）を逆恨みする男子学生（甲斐翔真）が、教授に色仕掛けで罠を仕掛けるよう、同級生（森郁月）に頼む。ハラスメントに敏感で、学生が訪ねると絶対に扉を開けたままにする堅物教授が、次第に彼女の朗読の声と内容に魅せられ、感じ始める表情から目が離せない！　

第三話『もう一度』は、高校の同窓会で目的の相手に会えずにガッカリする夏子（占部房子）が、翌日ばったりその相手（河井青葉）と出くわす。話に花を咲かせるが、次第に雲行きが怪しくなり。

『魔法』の“あるある”なムズがゆい女子トークに、ニヤニヤが止まらない！　ドラマ『コントが始まる』の好演も記憶に新しい古川琴音が、絶妙なふてぶてしさで演じる、元カレに理不尽な主張をぶつける芽衣子のキャラが最高におかしい。どの話もふとした偶然で、幸運だったり不運だったり、予想外の方向へコロコロ転がっていく。そのたびに、つい飛び出すリアルで人間臭い反応に、噴き出したり、イタタと苦笑したり。しょっぱい思いを噛みしめつつ、それでも人生は続いていくというポジティブさと強さが漂う。だから楽しい。なるほど人生、偶然と選択にあふれている。彼女たちのその後に後ろ髪を引かれつつ、なんか得した気分！

・12月17日よりBunkamuraル・シネマほかで公開
・公式サイト

『悪なき殺人』

© 2019 Haut et Court – Razor Films Produktion – France 3 Cinemavisa n° 150 076 ©Jean-Claude Lother

驚きが増幅する“偶然の連鎖”がもたらす結果に絶句！

フランスの山中の寒村で、ある女性が失踪。彼女の死体を見つけた羊飼いの男は、急に訪ねてきた不倫相手アリスに驚き、とっさに死体を隠す。一方アリスの夫はネット上で美女に貢ぎ、その美女を装って詐欺を働くのはアフリカの青年で――。誰のどんな行動がどう関係し、冒頭の死体までたどり着くのか。

各人の視点から同じ出来事を映すたび、新たな事実が明らかになり、驚きが増す。その偶然が連鎖していく構成が見事。

・新宿武蔵野館ほかで公開中
・公式サイト

『浅草キッド』

原作×監督×演者、才人が生み出す美味なる笑いと感動！

昭和40年代、大学を中退したタケシ（柳楽優弥）は、“笑いの殿堂”浅草フランス座に飛び込む。憧れの師匠・深見千三郎（大泉洋）に弟子入りし、鍛えられ、才能を開花。だが演芸場からテレビへ人気は移り、フランス座の経営は悪化、タケシも活躍の場をテレビに移す。ビートたけしの自伝を、劇団ひとりが脚本・監督。

売れっ子になるまでの歴史に興味津々＆爆笑、タケシの葛藤、厚い人情や師弟愛が心にしみ、ジワリ感涙！

・12月9日よりNetflixにて独占配信
・公式サイト

※公開につきましては、各作品の公式サイトをご参照ください。

取材・原文／折田千鶴子