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LIFE

堀江純子のスタア☆劇場

『ニュージーズ』主演、SixTONES京本大我さん。コロナ禍の中止を乗り越えさらに開眼!【堀江純子のスタア☆劇場】

  • 堀江純子

2021.11.11

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“堀江純子のスタア☆劇場”
VOL.10:ミュージカル『ニュージーズ』

皆様こんにちは。今回は10月に東京・日生劇場での上演を終え、現在、大阪・梅田芸術劇場で公演中のSixTONES京本大我さん主演、ディズニーミュージカル『ニュージーズ』のレポートをお届けします。

『ニュージーズ』は、同名の映画を原作にし、のちにディズニー・シアトリカル・プロダクションズ制作でブロードウェイで初演。トニー賞・最優秀オリジナル楽曲賞を始め、数々の栄誉を集めた、音楽性に富んだ名作です。

当初2020年5月に上演を予定していたものの、新型コロナウィルスによって中止となってしまい、そこから約1年半後の2021年10月9日に待望の初日を迎えました。多くの劇場で中止、延期が続いた混乱のなか、2年、3年先まで主要役者や劇場のスケジュールは大方決まっていると言われているステージ界で、主要キャストそのままで大作ミュージカルを1年半後に移動できたのは奇跡! おそらく関係各所、スタッフの尽力、ご苦労は想像を超えるものだったと思われます。そんな製作、出演者サイド、そして楽しみにしていた観客の強く熱い想いが集結した日本版『ニュージーズ』。

小池修一郎さんに見い出された、京本大我さんのその才能

京本さん主演によって、日本初上演が発表された頃、先にブロードウェイで観劇していた役者の友人は、「名曲揃いだけど、難曲揃い。この作品を任される京本大我くんはすごいね」と。その名曲にして難曲を生み出したのは、『美女と野獣』『アラジン』など、時に音楽が独り歩きするほどメガヒットを飛ばしたソングメイカーであり、ディズニーミュージカルファンなら知らない人はいないアラン・メンケン。

そして、演出・日本語訳・訳詞を手がけたのは『エリザベート』『モーツァルト!』『ロミオ&ジュリエット』など世界の大人気ミュージカル日本版にはこの方ありの小池修一郎さん。小池さんは、『エリザベート』のオーディションを受けた京本さんを見出し、皇太子ルドルフに起用した、まさに“ミュージカル俳優、京本大我”の師とも呼べる方。過去に京本さんに伺ったエピソードによると、実は一度、オーディションには落ちたものの、「やはり京本を!」と思い直した小池さんに呼び戻されて、足りないところがあれば自分が育てると宣言……そんな演出家魂によって、京本ルドルフは誕生したとか。

初めてルドルフに挑戦する際にしたインタビュー時の、京本さんの姿を今も覚えています。ミュージカル界のレジェンドたちの渦へ畑違いの自分が挑んでいく怯えは感じられましたが、その瞳は澄んでいて真っ直ぐ! ジャニーズの大作舞台には立ってきた経験はあってもこれから自分が挑戦するミュージカル『エリザベート』では、自分は初心者であると真摯に受け止め…一から歌を勉強したいと語る、非常に真面目で謙虚な姿が忘れられません。

結果、時に偏見になりかねないジャニーズという大きなフィルターを外させ、2015年、ミュージカルファンを納得させる京本ルドルフは誕生しました(当時のWキャストは古川雄大さん)。その後2016、2019年の『エリザベート』にもルドルフとして参加。京本さん初演は悲劇の皇太子の儚さと切なさが心に残りましたが、公演を重ねるごとにハプスブルグの未来を危惧し、革命を起こそうとする皇族としての力強さ、皇帝ルドルフの覚悟と情熱が際立つ成長を見せ、自分を見い出し、信じ育ててくれた師の期待に応えた京本さん。その師が次に与えた大いなる課題、壁が『ニュージーズ』であると思いました。

STORY:1899年、ニューヨーク。新聞販売少年たち”ニュージーズ”。孤児やホームレスの少年たちは、新聞を仕入れて売ることで得るわずかな手数料でその日暮らしをしていた。ニュージーズのジャック(京本大我)の仲間には足の不自由なクラッチー(松岡広大)、父親の失業によって加わることになったデイヴィ(加藤清史郎)と弟レスらがいた。ジャックはいつかその日暮らしから抜け出て、サンタフェに行く夢を描いているが、ニュージーズでの稼ぎはたかが知れている。しかも、「ワールド」紙のオーナー、ピュリツァー(松平健)は、販売価格はそのまま、ニュージーズへの新聞卸値を引き上げると画策。ジャックたちは、大人たちの横暴に従うことなく、自分たちの生活と権利を守るために、ストライキを決行! 権力者とニュージーズの闘いが始まる。

アンサンブルに至るまで優秀な舞台人が勢ぞろい

男性ながら色白で美麗の京本さんではありますが、京本ルドルフが打ち出した国家を守る皇族としての強さが『エリザベート』ファンとして大のお気に入りだった私は、貧しい少年たちのリーダーとなり、権力者と闘う……ルドルフとは真逆の強さをジャックとしてどう作るのかを楽しみにしていました。

まず、ジャックを囲み、共に闘うことになるニュージーズたちが揃いも揃って優秀! 群舞には生命力が溢れ、そのなかから抜きん出て跳ぶ人、回る人、アクロバティックな人と皆技術点も高く、見た目に派手さがない貧しい少年の衣装でも、持ち合わせたパワーと技術で生き生きとした明るさが花咲く舞台。コーラスも歌唱力がある上に、粗暴さ、野良育ちさの演技力も加わって、これぞミュージカル、演じる歌唱‼

『The World Will Know』では若者たちの憤りと戦闘力に圧倒されました。さすが、ヒットを生み出し続ける小池修一郎さんのもとに集まる若手はアンサンブルに至るまで素晴らしい。逆に言えば、京本さんをミュージカル界に放った小池さんのこれからの若手を見抜くセンサーの感度はお見事過ぎます。

「この人についていこう」と思わされる京本ジャックのカリスマ性

そのパワーの坩堝の真ん中に立ち、ニュージーズたちが「この人についていこう」と難なく思わされるカリスマ性も備えた男。それが京本さんのジャックでした。その姿は、少年でありながらまさに”男”。ルドルフで生まれながらに負った責任と役目、血筋までも物語る決意を見せてくれましたが、ジャックは生きるか死ぬかの状況下に立たされ、究極のピンチに男としてどう行動するか。

男も女も惚れてしまう決断力と行動力には、未来、ジャックがサンタフェでいい暮らしをするどころか、アメリカ大統領になる次のストーリーさえ見えてくるようで。自分の信念を貫くことで多くの仲間たちも救うヒーロー、それがジャックでした。台詞も太く、影を見せても消え失せない頼もしさ。京本さんは技術をアップさせただけではなく、中止から再上演への苦難を乗り越え、人としても大きくなった……そうでなければ醸し出すことができない包容力がありました。

彼の歌声は漲る力を存分に出すだけじゃなく、『Santa Fe』では嘆きの色も香らせていて。猛スピードで伸びていく表現力は、SixTONESとしてデビューし様々な曲と出会い、歌唱力の幅を広げたこと……そして、ひと回り大きくなったように見える彼の体格を見て、待ちの時間に己をあらゆる面で鍛えてきただろうことが窺えました。

京本さんで『レ・ミゼラブル』のマリウスを見たいなぁなんて夢がありましたが、ジャックを経ての革命家アンジョルラスも見たい、とプラスされましたね(笑)。何ならさらに何年か先にバルジャンだって見たくなるほどです。



名役者たちのスキルの競演

こちらも、大きな拍手で称えたのは、デイヴィを演じた加藤清史郎さん。小さな店長だった加藤さんは、『レ・ミゼラブル』ガブローシュ、『エリザベート』少年時代のルドルフと、ミュージカル界でも名子役ぶりを発揮し、中学卒業後はイギリスに留学。英国演劇も学んで、帰国後、最初のミュージカルが『ニュージーズ』となりました。子役時代もその噂は轟いていましたが、今も上手い。上手すぎる。なめらかな滑舌、しっかりと届く台詞、明瞭な歌。他のニュージーズとは違う家庭事情での育ちも演技力で伝え、まだ20歳という年齢を加味しても末恐ろしいスキルメンです。今後、気になった作品に”加藤清史郎”という名があれば、ものすごく積極的に観ます(笑)。

女性陣は、ニュージーズを応援する記者、キャサリンに咲妃みゆさん。ジャックの才能を認めニュージーズを助けるバーレスクのスター、メッダに霧矢大夢さん。宝塚で娘役トップスター、男役トップスターに輝いていたスターのお2人ですが、こちらも宝塚が誇るスキルジェンヌ! 歌、踊り、芝居3拍子揃ったスターとして活躍し、そのスキルを『ニュージーズ』でも存分に活かしておられました。

新型ウィルスが収束を見せ始め、我々の生活も少しずつ元通りにはなってきましたが、まだ安心できない世界で生きる私たち。そんな時代に、生活を命を守るために闘った少年たちを描いた『ニュージーズ』は、生きていく力をくれた作品でした。このような状況下で人を勇気づけるために企画された上演ではないでしょうに、結果、時代にピタッとハマった『ニュージーズ』……持ってる! 京本大我持ってる!!  ジャニーズ、SixTONESとしての魅力と平行しながら、違う味わいの歌をミュージカルで楽しませてくれる人です。

ミュージカル『ニュージーズ』大阪公演中!

◎梅田芸術劇場メインホール
2021/11/11(木)~2021/11/17(水)

作曲 アラン・メンケン
作詞 ジャック・フェルドマン
脚本 ハーヴェイ・ファイアスタイン
演出・日本語訳・訳詞 小池修一郎(宝塚歌劇団)

出演:京本大我(SixTONES)/咲妃みゆ
松岡広大 加藤清史郎 霧矢大夢
松平健 ほか

料金:S席 14,000円 A席 9,500円 B席 5,000円 (全席指定・税込)

●お問い合わせ 梅田芸術劇場メインホール  06-6377-3800

主催 梅田芸術劇場製作東宝/TBS

ミュージカル『ニュージーズ』公式サイト

写真提供/東宝演劇部

堀江純子 Junko Horie

ライター

東京生まれ、東京育ち。6歳で宝塚歌劇を、7歳でバレエ初観劇。エンタメを愛し味わう礎は『コーラスライン』のザックの言葉と大浦みずきさん。『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』『エリザベート』『モーツァルト!』観劇は日本初演からのライフワーク。執筆はエンターテイメント全般。音楽、ドラマ、映画、演劇、ミュージカル、歌舞伎などのスタアインタビューは年間100本を優に超える。

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