外出時には消毒スプレーを携帯し、公共の場に出入りする際の手指消毒は当たり前の生活に。1日に何度も手洗いや消毒をするので、この時期の手はカサカサになりがちですが、新型コロナの感染に備えて日々対策に取り組んでいます。
でも、実はこの新しい衛生習慣、コロナ以外の新たな健康リスクに繋がる可能性があることをご存知でしょうか?
コロナ禍の衛生意識の高まりが、アレルギーリスクにつながる?!
「コロナ禍での衛生習慣によって、近い将来アレルギーリスクが上がるのではないかと予想しています」と語るのは、赤坂ファミリークリニック院長の伊藤朋子先生。
感染対策として、手洗いや手指消毒を何度も繰り返すこと、場合によっては生態系への影響が強い消毒液を散布することは、今世界中で行われています。
しかし、菌やウイルスをできるだけ排除する生活は、腸内細菌の環境に大きな影響を及ぼし、それがアレルギーなどの健康リスクを引き起こす原因に繋がるのではないか?と考えられているのです。
腸内細菌の多様性はアレルギーと密接に関係している
そもそもアレルギーは、免疫細胞のバランスが崩れることにより生じるもの。そしてその免疫のバランスを安定させることに大きく関わっているのが腸内細菌の多様性です。腸内には多様な微生物が存在していますが、この多様性が低いほど、免疫細胞のバランスが悪くなると考えられています。
「長引くパンデミックの生活で、手指消毒や、あらゆるものに強い殺菌をすることが続くことにより、腸内細菌の多様性は損なわれつつあると考えられます。また、腸内環境をはじめ健康に良いとされる運動も、外出自粛やリモートにより減少傾向です。
もともと先進国では、清潔であることに加え、自然が少なく、エサとなる食物繊維の多い伝統的な食品の摂取が減っていることなどから腸内細菌は減りつつあリました。
その中で起こったパンデミック。度重なる消毒のほか、ソーシャルディスタンスで人に触れる事が少なくなり、様々な感染症対策として抗生物質の使用量も増加しています。その結果、日常生活の中で多様な菌に接触する機会は一気に減少しました。
こうして腸内細菌の多様性が失われていくことによって、近い将来アレルギーリスクが上がるのではないかと予測されています。特に子どもは要注意。成長期の腸内細菌は、大人以上に影響を受けやすいのです」(伊藤先生)
すぐにできる具体的な対策「発酵性食物繊維」に注目!
とはいえ、消毒や手洗いを控えることのできない今、腸内細菌の多様性を実現するためには、どのような対策をすればいいのでしょうか?
伊藤先生は日々の食事の中に「発酵性食物繊維」を取り入れることも有効な手段の一つだと話します。

我が家が早速取り入れた「発酵性食物繊維」を含む食材。ブロッコリーやキウイなどは、子どもが好きなためよく購入します。発酵性食物繊維を含む食材は、どれも手に入りやすい、扱いやすいものばかり。
「腸内細菌の多様性はアレルギー予防に重要な条件の一つ。まず第一に、発酵食品などを通じて、善玉菌を取り入れることを思いつく方が多いですよね。
腸内微生物には、乳酸菌やビフィズス菌など、1000種類ほどの細菌が存在します。しかし、その腸内環境を整えようと思って善玉菌を取り入れても、そのエサとなる食物繊維が足りないと、増えずに減ってしまうのです。食物繊維をしっかり取ること(1日18gが推奨)は腸内環境を整える上でとても大切です。
中でも腸内細菌の多様性に有効とされているのが「発酵性食物繊維」と分類される食物繊維。「発酵性食物繊維」とは、よく耳にする、「水溶性」「不溶性」で分類された食物繊維ではなく、腸の中で腸内細菌によって代謝され、発酵する力を持った食物繊維のこと。
これを多く含む食品を摂取することで、腸内細菌の多様性が増し、また、アレルギーをはじめとした健康と密接に関連する酪酸、酢酸、プロピオン酸などの短鎖脂肪酸を畜生する細菌も増えるとされています。
そして、その中でも特に酪酸を増やすことは、アレルギーの炎症、過剰な免疫の働きを抑える制御性T細胞を増やすことにも繋がるという研究結果が示されています」(伊藤先生)
発酵性食物繊維が多く含まれる食品は?
「短鎖脂肪酸」は他にも、脂肪合成を下げる、悪玉菌が増えるのを抑えるなど私たちの身体に様々なメリットが!
主な発酵性食物繊維は下記の通り。特にアレルギー炎症に有効とされる酪酸は、玄米や全粒粉など腸の奥で発酵する茶色い穀物(アラビノキシランを含む食品)を取り入れることで増えることもわかっているそうです。

100gあたりの発酵性食物繊維含有量
これらの食材は、手に入りやすく、サッと作れてテーブルに並べられる扱いやすい食品ばかり。早速教えていただいたレシピを我が家でも作ってみました。
レシピ①
小麦ブランシリアル朝食ブッダボウル
材料・2人分

火も使わず、シリアルに放り込むだけのお手軽レシピ。砂糖や蜂蜜を入れなくても、オーツミルクそのものの甘さで美味しく食べられます。ナッツや抗酸化作用の高いラズベリーなどをトッピングして栄養価も見た目もグッとアップ。忙しい朝にはぴったり!(写真は1人分で作りました。)
- 小麦ブラン(小麦ふすま)のシリアル………40g
- バナナ(小)………2本
- オーツミルク………400ml
- シナモン………少量
- ミントリーフ………少量
- ミックスナッツ(無塩、ノンフライ) ………適量
- ラズベリー………少量
作り方
- オーツミルク以外をボウルに入れて、シナモンをふる。
- オーツミルクを入れる。
レシピ②
オートミールとシーチキンボール
材料・2人分

お弁当の具にも最適なボール。味付けは黒胡椒だけなのにしっかりした味わいです。 シーチキンを使うので、洗い物の負担も少なく、あっという間に作ることができました。
- オートミール………30g (大さじ5)
- シーチキン………70g (小缶 1 個)
- 卵………1個
- たまねぎ………1/4 個 (大き目のたまねぎの場合)(小さな玉ねぎなら1/2)
- 黒コショウ………適量
- オリーブオイル………大さじ1
作り方
- ボウルに卵を割り入れてほぐす。
- オートミールを1のボウルに入れる。
- シーチキンを1のボウルに入れる。
- みじん切りにした玉ねぎを1のボウルに入れ、よくこねてまぜて 5 分ほどおく。
- 胡椒をふる。
- ボウルの具を一口大に丸める。
- フライパンを中火に熱してオリーブオイルをひいて、6を焼く。
- お好みのソースでいただく。
その他にも、発酵食品の味噌を使う根菜たっぷりの豚汁もおすすめだそう。白米を玄米ご飯や押し麦入りのご飯にするなど、ちょっとした工夫でも取り入れられそうですよね。
発酵性食物繊維は、日常に気軽に取り入れられるものばかり!

LEE100人隊の間でも度々話題になっていたオーツミルク。おうち時間でのカフェオレを牛乳からオーツミルクに変えてみました。
今年の冬も、まだまだ念入りな手洗いや消毒は欠かせません。そんな状況の中でも、自分の家族、自分たちの腸内細菌の多様性を守り、増進させる。発酵性食物繊維が含まれる食材は、今までも食べたことのある手に入りやすいものばかりです。
まだまだつづくコロナ禍ですが、日々の食事の中に意識的に取り入れて、楽しみながら腸内環境を整えていきましょう!
教えてくれたのは?
伊藤明子先生

小児科医。赤坂ファミリークリニック院長。NPO法人 Healthy Children, Healthy Lives 代表理事。東京大学医 学部附属病院 小児科 医師。東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学/健康医療政策 客員研究員。
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高木綾子 Ayako Takagi
ライター/LEEキャラクター
1981年生まれ。百貨店バイヤー、ヴィンテージショップなどファッション業界を10年経験。その後、LEEキャラクターになったことをきっかけに同世代の女性に役立つ情報を伝える仕事に興味を持ち、ライターの道へ。夫の仕事の関係で2020年より東京から香川へ移住し、ファッションや子育てのほか、四国地方についても執筆。2児の女の子ママ。