Sexy Zone佐藤勝利さんが『ブライトン・ビーチ回顧録』で見せた役者としての決意表明【堀江純子のスタア☆劇場】
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堀江純子
2021.10.01
“堀江純子のスタア☆劇場”
VOL.9:『ブライトン・ビーチ回顧録』
皆様こんにちは。“堀江純子のスタア☆劇場”は、私独自目線のインタビュー記事をお届けしてきましたが、この回からシアターコラムもプラスしていくことなりました!
新型コロナウィルスの流行がなかなか収束せず、残念ながら公演の中止、延期が続きましたが……日本のエンタメ界は強かった。制作陣、出演者、スタッフの方々が熱い想いと長年培った知恵、技術を駆使し、どうすれば安全に上演できるか考え抜いた尽力の結果、現在、コロナ前とほぼ同様に全国の劇場は息づいています。しかし、さまざまな事情で県を跨いだり、劇場やイベント会場へ出向くことが難しく、観劇が叶わない方々がいまだ多くいらっしゃると思います。
皆さんの心の中にあるエンタメの灯が消えぬよう、“スタア☆劇場”では公演写真と、私が観劇して芽生えた気付きや見解、感動をコラムにしてお届けしたいと思います。
初回は、Sexy Zone佐藤勝利さんストレートプレイ初出演にして主演! 取材会でのコメントを交えながら、東京芸術劇場 プレイハウスで現在上演中の『ブライトン・ビーチ回顧録』をご紹介します。
念願の初ストレートプレイ・初外部舞台・初単独主演!
佐藤勝利さんとはSexy Zoneデビュー時から仕事上でご縁があり、初舞台となる2012-13年、帝国劇場『JOHNNYS’ World -ジャニーズ・ワールド-』初演の頃よりステージに対する真摯な想いを伺ってきました。取材で近況を訊ねれば、大小にかかわらずマメに劇場に足を運んで演劇を楽しみ、学んできたことを目を輝かせてお話してくれて。彼もいつか、よき時期によき作品に恵まれたらいいな……ジャニーズのショーエンタメの次は、ストレートプレイの舞台に立つ佐藤勝利さんの姿を観たいなと、勝手に願っていた私は、彼に巡ってきた初単独主演作品の一報を聞いて、胸が躍りました。人間の機微を面白く細かく、生きた台詞のやりとりで描くニール・サイモン作品『ブライトン・ビーチ回顧録』で外部作品、初主演!!
『ブライトン・ビーチ回顧録』は『ビロクシー・ブルース』『ブロードウェイ・バウンド』と併せて、ニール・サイモン“B・B三部作”と呼ばれる3作の1作目。佐藤さん演じるユージンは、ニール・サイモン自らの投影と言われ、今回演じたのは14歳の少年期。
現場でメキメキ進化していく佐藤勝利!
野球選手に憧れているユージンの登場は、ひと目で「可愛い!」と言いたくなる様で、野球帽をかぶった14歳の少年そのもの! しかしそれは彼の愛くるしい顔立ち、華奢な体型という容姿をただ活かしての表現ではありませんでした。くるくる変わる表情、幼さがうかがえる落ち着きのなさ(笑)。ユージンが日々書き留めている回顧録のノートの持ち方、少し高めに掲げた腕の位置さえ大人に見えてしまう仕草はなく、それは細かなところまで行き届いた動きの表現に寄るもの。
言いたいことがいっぱいあって、まくしたてるシーンが多いうえに、自伝的回顧録ならではのストーリーテラーとしてのセリフも膨大。しかし台詞の流れは淀みなく、しっかりと気持ちや状況を伝えてくる滑舌と発声の良さ。家族の病名を観客に伝える際のささやき声は、デビュー曲『Sexy Zone』で幾度となくファンを魅了してきた名台詞を思わせるウィスパーボイスでしたが、劇場中の隅から隅まできちんと通る! ひいき目なしにお見事でした。歌舞伎界でいう口跡の鮮やかさは、相当稽古を積み重ねて、ユージンを自分のものにしないとできないこと。休憩20分を含む、約2時間55分の上演時間を通してまったく破綻のない台詞回しは、これが現場でメキメキ進化を遂げるジャニーズの真髄か……と唸らされました。
場は、家族が住む一軒家の様子のみで舞台転換はなし。ユージンは家族みんなにいいように、半ば雑に扱われながら、家族それぞれから発生する問題にあれやこれやと巻き込まれます。膨大な台詞量を請け負い、家族たちの攻めの演技を逃がさず受け止め、打ち返す役目のユージンを演じていれば、約3時間もの間、彼の感性は少しも休む間がなかったと思います。上手い役者たちの攻防戦は観ているこちらの感性も一瞬も休ませてくれず、結果、大好きなニール・サイモンの世界にどっぷり浸かった満足感が残りました。
「説明台詞も含めて、台詞の量はたくさんあって。ドキドキしながらやってますね」(佐藤さん)
「初めてという感じは稽古の最初から全然していなくて、みなさんよくご存知だと思いますが、センスがすごいので。日々新しいことがたくさんあったかと思いますが、いつのまにか凄まじい勢いでどんどん良くなっていくので、毎日私も稽古場に行くのが楽しみでした。毎日本当に全然違うんです」(演出家・小山ゆうなさん)
いつの時代もどこの国でも母は強し
私が『ブライトン・ビーチ回顧録』という作品からもらって帰ったものには、どこの国のどこの家族でも変わらない、“母たる者の強さ”もありました。父・ジャック(神保悟志)、母・ケイト(松下由樹)、ユージンの兄・スタンリー(入野自由)の4人家族に、ケイトの妹・ブランチ(須藤理彩)とその娘2人、ノーラ(川島海荷)とローリー(岩田華怜)。計7人で暮らす一家ですが、家族に何があろうと、その時間がくれば発せられるケイトの「ご飯にしましょう」のひと言がとても印象深く………同じフレーズでも、その時の一家の在り様に応じて、言い方、声色には様々な趣があり、松下由樹さんの人としての奥深さが滲み出るようでした。
何があっても食卓に家族が集い、おなかを満たせば問題は解決すると言い聞かせるような母、ケイトのその言葉には、家族の胃袋を守る……イコール母の家族を守る想いの強さがあり、私も自分が育った家での「ご飯よ~」の響きを思い出しました。調理に足りないものがあれば、近所に買いに行かされるユージンの姿もノスタルジックで、彼がことあるごとにボヤく様子に幼い頃の私や兄弟の姿もよぎったりして。時代や生活様式は違っても変わらない夕食時の風景は心に響き渡りましたね。
「こういう時期ですので、稽古場では皆さんマスクして多くを語ったりはできないですけど、家族のシーンを通して話すことで、より深まっていくというのが強かったように思います」(松下さん)
「僕が本読みから緊張して心が震えているときに、松下さんは、この作品はコメディだと。最初からそのトーンで読んでいらして。……この時、松下さんに付いていこうと。お母さんに付いていこうと! 松下さんには本当に支えていただきました」(佐藤さん)
14歳弟、18歳兄の持ちつ持たれつは、佐藤勝利と入野自由でも⁉︎
ユージン14歳。スタンリー18歳。どちらもまだまだ未完成で、一家の中では互いに協力し合う弟と兄。同居するいとこたち…特に、すでに成熟し始めている姉、ノーラの魅力に悩殺されがちな思春期の14歳。そのあたりの性の目覚めを先に乗り越えた18歳の兄の、弟をスマートに教え導く姿が頼もしい(笑)。ヌード写真をエサにユージンを釣り、まんまと乗っかる弟。”男子”と呼ばれるのがまだ似合う兄弟は、”男子”ならではの愛らしさを香らせて、兄弟の会話の大半を占める(笑)性的な表現も不快感を残さない。むしろ、青春そのもので微笑ましい。
「実年齢より10歳若い14歳のユージン。無理して子供っぽくしないようには気を付けました。そのほうが14歳ってことが純粋に伝わるかなと。実際、自分自身が14歳だったときも、自分を大人だと思ってたと思うし。14歳は僕がジャニーズ事務所に入った年齢なんですよ。Sexy Zoneは10周年、今回初舞台で10年前の年齢の役をやるというのは感慨深いなと思いましたね」(佐藤さん)
「ユージンとスタンリーの関係性と、僕ら、一緒だなって思います(笑)。スタンリーは兄であるんですけど、弟のユージンにいろいろ助けてもらって、兄として立ててもらって。(佐藤を見て)……めちゃくちゃ助けてもらってます」(入野さん)
誰に心を寄せるかで感じ方が変わってくる『ブライトン・ビーチ回顧録』。私はまずユージンに引き込まれ、突然命じられて買い物に行かされる子供の頃の気持ちが甦りましたが、ユージンからケイトに気持ちが移動する瞬間もあり、この振り幅が家族を描く物語の醍醐味! そして、日常の何気ない物語に普遍的な価値を与えてくれるニール・サイモンの作品はやはり魅力的だなと。
佐藤勝利さんきっかけで、何が何でも観なくてはと劇場へ向かいましたが、おかげで、秋の気配の中、また良作に出会えたことを幸せに思います。できれば三部作とも、この素晴らしいキャストで拝見したい! スタッフの方々が尽力してくださることを願ってます。この家族の、次のストーリーをぜひ見せてください。
『ブライントン・ビーチ回顧録』現在絶賛公演中!
作:ニール・サイモン
翻訳:青井陽治
演出:小山ゆうな
出演:佐藤勝利(Sexy Zone)/ 松下由樹 入野自由
須藤理彩 川島海荷 岩田華怜 神保悟志
●9/18~10/3◎東京公演 東京芸術劇場 プレイハウス
〈料金〉10,000円 (全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉東京公演 パルコステージ 03-3477-5858 (時間短縮営業中)
●10/7~13◎京都公演 京都劇場
〈料金〉10,000円 (全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉キョードーインフォメーション 0570-200-888(11:00~16:00日曜・祝日は休業)
撮影/富田一也
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堀江純子 Junko Horie
ライター
東京生まれ、東京育ち。6歳で宝塚歌劇を、7歳でバレエ初観劇。エンタメを愛し味わう礎は『コーラスライン』のザックの言葉と大浦みずきさん。『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』『エリザベート』『モーツァルト!』観劇は日本初演からのライフワーク。執筆はエンターテイメント全般。音楽、ドラマ、映画、演劇、ミュージカル、歌舞伎などのスタアインタビューは年間100本を優に超える。