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モヤモヤしているのはうちだけ? パパとママのジェンダー問題

社会学者 藤田結子さんが解説!なぜこうなる?日本の夫婦ジェンダーギャップの今

  • LEE編集部

2021.09.24 更新日:2022.05.18

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夫婦間のジェンダーバイアスには、社会的な背景が大きくかかわっているはず。

長年、ジェンダーや日本の若者研究を続ける、社会学者の藤田結子さんにお話をうかがいました!

この記事は2021年8月7日発売LEE9月号の再掲載です。


社会学者 藤田結子さんが解説
意識調査では男性も家事・育児負担の男女平等を支持。でも行動が伴わない

社会学者 藤田結子さん

社会学者 藤田結子さん

明治大学教授。日本や海外の文化、ジェンダー、若者などについてフィールド調査を行う。著書に『ワンオペ育児』(毎日新聞出版)、「ファッションで社会学する」(有斐閣)などがある。

“性別役割分業”が根づきなかなか変わらないのが現状

ジェンダーやワンオペ育児など、夫婦間の問題に詳しい藤田さん。あらためて、“ジェンダー”という言葉が指し示す意味とは?

「ジェンダーというのは、性にかかわるあらゆる知識のこと。日本だと女性差別のみを示すと勘違いされがちですが、LGBTQなどすべてを含めた性にまつわることを指します。
ジェンダーバイアスというのは、性にかかわるステレオタイプや偏見。男は男らしく、女は女らしくという考えはもちろん、社会に男女しか存在しないというのもLGBTQの考え方だと大きな偏見です」(社会学者 藤田結子さん)

日本のジェンダーギャップ指数は先進国の中で最低レベル!

世界のジェンダーギャップ指数のランキングでは、先進国の中で日本が最下位。この結果には、社会的な背景が大きく影響。

ジェンダーギャップ指数(2021)上位国及び主な国の順位

ジェンダーギャップ指数(2021)上位国及び主な国の順位

出典:世界経済フォーラム ジェンダーギャップレポート2021より

「経済参画」「教育の到達度」「健康」「政治参画」の4つの分野で、男女不平等の度合いを指数化したジェンダーギャップ指数。日本の順位は低く、2020年は153カ国中121位、2021年は156カ国中120位と先進国では最下位。

「ランキングが低い主な理由は、女性の政治家が少ないことと、経済界で女性の管理職がいないこと。男性中心社会で、主要な役職は男性ばかり。男性が外で働いて、女性は家事・育児を担当してサポートするという“性別役割分業”の意識が根強いことが主な原因です。
戦後の高度成長期に多くの男性がサラリーマンになり、女性が専業主婦となったことで役割分業が定着しました。 ’70年代からはパート主婦が増えたものの、親世代から根づく性別による役割意識は、なかなか変えられないのが現状です」(社会学者 藤田結子さん)



ジェンダー平等の意識は高まっても、夫の家事・育児負担の割合は少ないまま!

夫婦の1日の平均家事時間

夫婦の1日の平均家事時間

出典:国立社会保障・人口問題研究所「第6回全国家庭動向調査」より引用

夫婦の1日の平均育児時間

夫婦の1日の平均育児時間

出典:国立社会保障・人口問題研究所「第6回全国家庭動向調査」より引用 ※育児時間の調査は、妻の年齢が50歳未満で、12歳未満の子どもと同居している世帯が対象

平均家事時間は、妻は平日263分、休日284分。夫は平日37分、休日66分。また、1日の平均育児時間は、妻は平日532分、休日680分。夫は平日86分、休日322分。妻への圧倒的な偏りが近年のデータでも明らかに。

解消には、男性の行動改革と子ども中心主義の見直しを

解消には、男性の行動改革と子ども中心主義の見直しを

現在は過渡期だ、と藤田さん。30~40代では共働き家庭が多く、家事・育児に積極的な男性も増えています。

「意識調査をすると7〜8割の人が『家事、育児は夫婦で平等に分担すべきだ』と回答するんです。これは男女で大きな差はなく、どちらもそう答えています。
でも、データにあるように、実際はまだまだ家事、育児の大半は妻が担っていて、夫はお手伝い程度。男性も平等のほうがいいと感じているのに、行動するかどうかはまた別の話に。ここが埋まらないと、本当の意味での夫婦間ジェンダーバイアスの解消は難しいのでは」(社会学者 藤田結子さん)

さらに、日本は「子ども中心主義」が色濃く、母親が子どもに時間を割いてしまうという傾向が。

「データを見るとここ数年の女性の家事時間は減っているのに、育児時間は増加。少子化が進んで、習い事や受験など、育児にコストと時間をかける家庭は多い。
悪いことではないのですが、それで女性の負担が増えては本末転倒。親が子離れできず子どもが病んでしまう『ヘリコプターペアレント』などの問題も。家庭内ジェンダーバイアス解消のためには、女性が家事・育児をある程度手放す勇気も必要かも。
専業主婦、パートで稼ぎが少ないからと家事・育児を頑張る女性は多いのですが、それは主婦の労働を評価せず、非正規雇用の賃金が不当に低い社会の問題。女性のせいではないので、遠慮なく夫や周りに家のこと、子どものことを任せてほしいですね」(社会学者 藤田結子さん)

日本の夫婦ジェンダーギャップ【まとめ】

1. 日本は要職の女性が少なく性別役割分業が根強い

2. 理想はあっても、男性の家事・育児時間は少ない

3. 女性が育児に時間を割きすぎている傾向も


イラストレーション/朝倉千夏 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
この記事は2021年8月7日発売LEE9月号『パパとママのジェンダー問題』の再掲載です。

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