夫と一緒に家にいる時間が増えたことで、ちょっとした言動にイラッとすることが増えた、という声も多い中。

「子どもに手がかからなくなったら、もう夫との会話なんてないのでは？」なんて不安も･･･

そこで、LEEでもおなじみ、料理研究家の藤井 恵さんに、子育てが一段落した今の過ごし方、これまでのことをうかがいました。

この記事は2021年4月7日発売LEE5月号の再掲載です。

＂子育て一段落＂夫婦の過ごし方
時間と体験を共有して、これからの楽しみを作り上げている途中です

料理研究家 藤井 恵さん

結婚32年／長女29歳　次女25歳
作りやすさとおいしさの両方をかなえるレシピが好評。センスのいい暮らしぶりにも注目が集まる。初心者向けの魚料理の本を近々上梓予定。

この先の人生を考えて長野に山小屋を持つ

昨年、次女が家を出てひとり暮らしを始めてから、藤井さんは夫婦ふたりの時間を少しずつ楽しんでいるそう。

「実は最近、長野に家を持ちました。月に数日、夫と一緒にその家へ行き、建物を修繕したり草むしりしたり……。家を整えながらゆっくり過ごすことが、私たち夫婦の今の共通の楽しみになっています」（料理研究家 藤井 恵さん）

娘さんたちが小さいうちから、料理の世界で第一線を走り続けている藤井さん。
夫は自営業で超多忙のため、子育てもほぼワンオペ状態。仕事に育児に家事に、と夢中で走り続けてきて、この春、子どもたちが独立したのと同じタイミングで、長く続けていた仕事のひとつがひと区切りついたことが、長野に家を持つきっかけになったそう。

「少し立ち止まる時間ができたことで『仕事以外で私がやりたいことって何だろう？』って考えたんです。ちょうど夫にも時間の余裕ができて、自然の中で過ごす？　畑やる？などの話が夫婦の間で出始めていました。
そんな中でご縁があって長野に家を買うことに。今はまだ整備途中で、やることがたくさんあります。薪ストーブの手入れをしたり、壊れた部分の補修をしたり、お互いもくもくと作業しているだけですが、そこに共通の時間が流れているんですね。
本当に自然しかないところで、星がキレイ、水が冷たい、庭にキツツキが来た……そんな他愛もないことを話しながら、静かな環境の中でリラックスしながら過ごしています」（料理研究家 藤井 恵さん）

自然の中で過ごすうちに、夫のいい面が再び見えてきた

こうして夫婦の時間を持てるようになるまでには、「本当にいろいろあった」と藤井さん。「いつ離婚してもいいように、常に家探ししていた」とは（！）。

「特に娘たちが小学生の頃は、夫婦間の雰囲気が最悪でした。
それまで私は一切夫に口ごたえしたことはなかったのですが、ある日爆発して『もう、奥さんやめます！』って宣言したんです。結果的にはこれがいい目に出て、夫も少しずつ変わってきて、娘たちの学校のことなどをやってくれるようになったんですね」（料理研究家 藤井 恵さん）

そこから時間をかけて「お互いに成長してきた」という藤井さん夫婦。
途中、お互いの両親の病気や死別など、一緒にさまざまな出来事を共有し、寄り添い合ってきたことが今につながっている、と感じるそう。

「今でも夫にイライラすることはもちろんありますよ（笑）。でも、ため込まないほうがいいことを私も学んだし、夫も変わってきました。
今、長野で仕事や日常から離れて夫婦みずいらずで過ごす時間が増えたことで、夫のいろいろな面も見え『そうだ、もともとやさしい人だったんだ』とか、いいところを思い出すようになったりも。
これからふたりで、長野の家をベースにもっと楽しみを広げていけたら、とワクワクしています」（料理研究家 藤井 恵さん）

「日常から離れるのは、夫婦の時間を過ごすのにいい手段」と藤井さん。長野の家では家の修繕や整備をしたり、藤井さんは自分と夫のためだけに作りたい料理を作ったり。

撮影／細谷悠美　イラストレーション／えのきのこ　取材・原文／遊佐信子
この記事は2021年4月7日発売LEE5月号『夫ともっと機嫌よく暮らしたい！』の再掲載です。