相性ピッタリのコーヒー×チョコ。
より美味しく楽しめるペアリングって?
一日の始まりや、仕事中の集中力アップに。おやつと一緒にホッと一息つきたいときに。コーヒーラバーな皆さん、“お供”にはどんなものを選んでいますか? 今回は日常ののコーヒータイムから一歩アップグレードし、コーヒー×チョコレートのペアリングのコツを紹介。未知なる世界へ導いてくれたのは、日本初の世界チャンピオンを輩出するなどバリスタ教育の第一人者としても活躍している㈱アクトコーヒープランニング代表の阪本さんと、スペシャルティチョコレート「Minimal -Bean to Bar Chocolate-(ミニマル)」の代表・山下さんです。お二方のトークイベントから、LEE読者の皆さんにもペアリングのコツをご紹介したいと思います。
ホットコーヒーは相乗効果に、
アイスコーヒーは余韻に注目しています!
阪本「コーヒーのペアリングって、まだ確立されてない部分が多くて、専門書がほとんどないんです。どうやって相性のいいペアリングを探しているのか、私のやり方を紹介しますね。まずは
①コーヒーを飲み、アロマや甘さを感じる。次に
②チョコレートを口に含んで、味や鼻腔から上がってくる香りを分析。チョコが口に残っているうちに、
③もう一度コーヒーを飲みます。
口の中に残っているチョコレートとコーヒーの成分が合わさった時にまず、どのような相乗効果があるのか。これを繰り返して、相性のいい組み合わせを探しています。」
山下「私も同じです。コーヒーだけでなくて紅茶の場合も、チョコの前後で挟む。ただ、冷たいドリンクの場合は、チョコレートが完全に無くなってからドリンクを飲むようにしていますね。チョコレートの融点は30~33℃のため、口の中の体温で溶けるんですが、冷たいドリンクの場合、口の中でチョコレートが口の中で固まってしまい心地良くないんです。」
阪本「そのとき、相性はどのように判断しているのですか」
山下「最後の余韻に注目しますね。食感とか気分的なところにも差が出ると思うので、そこにも目を向けます」
Minimal山下さんが教える、もっと簡単なペアリング方法
山下「個人でも簡単にできるペアリング方法を教えましょう。コーヒーとチョコレートを建物に見立てて、土台の強さを合わせるというものなんです。上の図を見てみてください。建物で表現した場合、1階の土台に当てはまるのは、コーヒー=焙煎の度合い。チョコレート=カカオの濃度やミルクの多さ。この強度がガチッと合うと、ペアリングの基準が生まれるんです。深入りの場合はカカオの濃度も高いもの、といった具合。ちなみにお酒の場合はアルコール度数が当てはまります。では、具体的にいくつかのペアリングをご紹介したいと思います。」
TAOCA COFFEE×’Arhuaco のペアリング
阪本「では、早速いくつか試してみましょうか。一つ目ですが、兵庫県にあるタオカコーヒーのボリビアのノラ・ママニ農園のコーヒーで、重さと酸が特徴的。この重さと酸が出るのは、標高1950mという非常に高い地域で生産されているからなんです。因みに、カカオが取れる地域はどうでしょうか。」
山下「コーヒーと同じようにカカオでも寒暖差があるなかで栽培されると凝縮感が出て、実として美味しくなるはずと思っているので、標高の高い地域のカカオを買い付けています。」
阪本「高い標高で寒暖差があり、凝縮した味わいがするコーヒーはボリビアの代表格です。今回の豆は、焙煎は強くせずに酸を活かした焙煎度合いにしてます。」
山下「ギュっと凝縮されて、ブラックチェリーのような味ですね。」
阪本「そうですね。黒とか紫系のベリー系の味わいがありますよね。これに合わせるチョコレートは、なんでしょうか。」
山下「コロンビアのアルワコを選びました。コロンビアの野生品種を栽培用にしたカカオ豆で、ヨーロッパの品評会でも賞をもらっている商品です。口に入れた瞬間から最後の余韻まで表情が変わっていく、複雑で面白いチョコレート。口に入れると白ワインのような果実感、中盤はカカオバターの油分の甘み、後半は鼻にスッフローラルの香りがする。」
阪本「このペアリング、ばっちりですね! チョコレートのフレーバーを勉強を勉強をしたいという人には、すごく分かりやすいですね。」
山下「この組み合わせ、びっくりしましたね〜。ぶどうのような果実感がギューッと凝縮されて口の中で広がります。」
REC COFFEE×SEASONAL のペアリング
阪本「次はエチオピアのグジ シャキソウというコーヒーです。重さもあって凝縮感もあるタイプ。」
山下「オレンジのような……ダージリンとか紅茶っぽさを感じます。」
阪本「さきほどのコーヒーと比べると、こちらの方が明るい印象ですね。明るい果実の感じが口の中でパッと広がりますよね。これがこの豆の特徴です。合わせていただくチョコレートは何でしょうか。」
山下「コロンビアのアラウカという地域の、“SEASONAL”というチョコレートです」
阪本「先ほどのと全然違いますね。」
山下「私はチョコレートケーキと表現しているのですが、いかがでしょうか? チョコではなくて、チョコケーキ。生クリームのようなクリーム感や膨らみが全体にあるんですよね。」
阪本「柔らかい印象がフワッとくるような感じですよね。」
山下「はい、トロピカルフルーツのような甘さと、ヨーグルト的な乳酸の感じの要素が合わさって、チョコレートケーキを感じさせるんですよ。」
阪本「口の中にザクザクしたチョコレートを残して、早めにコーヒーを飲み合わせると、よりチョコレートケーキ感が強まりますね。」
山下「重たいチョコレートケーキをホールのままかじったような感じになりますね(笑) それにしてもコーヒー、おいしいですね。」
阪本「レックコーヒーは台湾にも出店するなど精力的に展開しているお店ですが、オーナーバリスタの岩瀬さんはバリスタ世界大会で準優勝している方です。」
STANDARD COFFEE LAB.×’Arhuaco のペアリング
阪本「北海道のスタンダードコーヒーラボのコーヒーです。ラテアートの世界チャンピオンになったオーナーバリスタのロースターなんですよ。昨年、エチオピアで初めてカップオブエクセレンスが開催された時に入賞したコーヒー豆を用意しました。生産地の標高が高く、甘さがあってソフトで柔らかい果実感があり、ピーチやトロピカル系の味わいのコーヒーです。」
山下「すごいですね、飲み比べると全然違いますよね。グレープフルーツのような感じがあります。」
阪本「そうですね、冷めてくるとそのような味わいありますね。チョコレートは先ほどと同じアルワコなんです。だけど、味の変化が全然違いませんか?」
山下「コーヒーによってアルワコの違う表情が引き出されていますね。」
阪本「コーヒーが口に入ってきた時にフッと黄色系の酸味の強いフルーツを感じて、後味がソフトに消えていき、いろいろなフルーツを感じさせる組み合わせですね。」
山下「コーヒーの酸味も分かりやすいですね。」
ベストペアリングは?
阪本「今回のペアリングで好きな組み合わせはどちらでしたか。」
山下「最初のタオカコーヒーとアルワコの組み合わせですかね。これが一番、チョコレートの良さを引き出してくれた。というのが、選んだ理由ですね。」
阪本「同じ意見です。これが本当に双方の味が引き上がりましたよね。純粋にチョコレートも楽しめ、さらに表情も変えてくれた。二段階で面白かった。それ以外の2つの組み合わせももちろん良かったのですが、一番変化が表れたのがこれですよね。」
山下「ここまで変化があると、ビックリしますよね!」
ペアリングを楽しみたい方へアドバイス
阪本「コーヒーとチョコレートの組み合わせをするとしたらこうすると良いよ。というアドバイスを、最後にもう一度教えてください。」
山下「先ほども話しましたが、強度(土台)をがっちり合わせるということを意識してみる。分かりやすく言うと、チョコレートにどの程度のカカオが配合されているかや、油分が入っているか。これを気にしてみてください。割と深煎りのコーヒーとはミルクが入っているミルクチョコレートなどの重たいチョコレート、ハイパーセンテージのカカオ80%などのカカオ濃度の高いものと合わせてみるというのが、ペアリングの入口としては分かりやすいと思います。」
阪本「コーヒーを勉強したい方におすすめの方法としては、味を解説できる人と一緒に味わってみることが勉強の早道だと思います。」
スペシャルティコーヒーとチョコレートのペアリングイベントをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。まずは、チョコのパッケージに気をくばるところから始めてみたいですね。みなさまの新たな味覚体験のきっかけとなれば幸いです。
ご紹介したチョコレートとコーヒーが買えるお店
Minimal https://mini-mal.tokyo/
TAOCA COFFEE https://taocacoffee.net/
REC COFFEE https://rec-coffee.com/pages/online-shop
STANDARD COFFEE LAB. http://standard-cafe.com/
株式会社アクトコーヒープランニング
阪本義治氏
コーヒーやカフェに携わるバリスタ育成、新規開業、新商品開発、書籍の執筆をされています。また、日本スペシャルティコーヒー協会では、スペシャルティコーヒーの知識、抽出への理解、それらの豆の導入や提供方法について啓蒙活動をされてます。その他、大手コンビニエンスストアLAWSONのコーヒーをプロデュースや、「coresゴールドフィルター」の製品化の際には丸山珈琲代表の丸山健太郎氏と共に阪本様にご協力いただくなど、コーヒー業界で多岐にわたって活躍されてます。
株式会社β ace,inc
代表取締役山下 貴嗣氏
1984年岐阜県生まれ。 チョコレートを豆から製造するBean to Bar(ビーントゥバー)との出合いをきっかけに、世の中に新しい価値を提供できる可能性を見出し、2014年に渋谷区・富ヶ谷にクラフトチョコレートブランドの「Minimal -Bean to Bar Chocolate-(ミニマル)」を立ち上げる。 年間4か月強は、赤道直下のカカオ産地に実際に足を運んで、カカオ農家と交渉し、良質なカカオ豆の買付と農家と協力して毎年の品質改善に取り組む。カカオ豆を活かす独自製法を考案し、設立から3年で、インターナショナルチョコレートアワード世界大会Plain/origin bars部門で日本初の金賞を受賞。2017年にはグッドデザイン賞ベスト100及び特別賞「ものづくり」やWIRED Audi INNOVATION AWARD 2017 30名のイノヴェイターにも選出される。モノを丁寧につくるクラフトマンシップを心から愛する。 夢は「世界中の美味しいカカオを食べること」。
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峰典子 Noriko Mine
ライター/コピーライター
1984年、神奈川県生まれ。映画や音楽レビュー、企業のブランディングなどを手がける。子どもとの休日は、書店か映画館のインドアコースが定番。フードユニットrakkoとしての活動も。夫、5歳の息子との3人家族。