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LIFE

美容はモテやアンチエイジングではなく「自尊心の筋トレ」のためのもの。長田杏奈さんインタビュー

  • LEE編集部

2021.06.26

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長田杏奈さん

「私のウェルネスを探して」は、心身ともに健やかに過ごしQOL、自分自身の人生の質を上げることの大切さにいち早く気づき、様々な形で発信を始めた方々のインタビュー連載。今回のゲストはLEEでもおなじみ、美容ライターの長田杏奈さんです。書籍『美容は自尊心の筋トレ』の執筆、フェミニズム雑誌『エトセトラ』の責任編集、性暴力を無くすための社会運動など、精力的に活動中の長田さんの「ウェルネスを探す旅」をたどります。(この記事は全2回の1回目です)

美容部員の母のメイク道具を遊び道具代わりに

長田さんが美容に興味を抱いたのは、美容部員として働いていた母が職場から持ち帰ったシーズン毎の新作コスメに触れていたことがきっかけ。母一人子一人で自宅で一人で過ごす時間が長く、母のメイク道具を遊び道具代わりにしていました。中学校に上がる頃に美容誌ブームが到来。齋藤薫さん、藤原美智子さん、嶋田ちあきさんといった美容界のパイオニアたちの記事が掲載されていた雑誌を一言一句詠み込み、日々美容情報に触れていましたが、この頃はまだ美容を仕事にしようとは思っていませんでした。

長田杏奈さんとお母様

小学校時代の長田さんとお母様

「当時はギャルブーム全盛期で、ルーズソックスが大流行してて。でもみんなと同じ格好をするのも、スカート丈や靴下で大人にガタガタ言われるのもすごい嫌で。だから制服を着崩すことなく校則通りに着こなしていたけど、心の中は反骨心でいっぱいでした。長時間周りに合わせるのが苦手だからか、気を抜くと変人扱いされてしまって。社会に出たら会社で浮いてしまいそうだし食いっぱぐれないよう手に職つけよう、士業の資格を取るのがいいかも……と思うようなりました」

エスカレーター式の女子高に通っていましたが内部進学することなく、大学受験をして中央大学法学部に進学。大学時代は司法試験の受験勉強に明け暮れます。司法試験受験対策のゼミと研究室に所属し、二つの司法試験予備校に通い、一日12時間勉強していました。長時間座りっぱなしなので脚がむくんでしまい、着圧ソックスが欠かせなかったそう。大学卒業間際に「生まれて初めての反抗期」を迎え、「アルバイトをしながら受験勉強を続けることは現実的ではない」と受験を断念。既卒採用でインターネット広告代理店に就職します。

会社勤めを経て週刊女性誌の記者に

就職先では、セクハラに遭ったり、男性社員とありもしない不倫を疑われたり……。生まれて初めての独り暮らしを開始するも多忙と燃え尽きで自炊する余裕がなく、食事代わりに毎日栄養補助食のクラッカーを囓っていたら、元々の肌質は乾燥性敏感肌なのに思春期にもできなかったニキビが大量発生し、スーツの縫い目が弾けそうなほど一気に体重が増加。職場で「見る影もないな」と面と向かって言われたことも。「慕っていた上司が急に退社してしまったこともあり、今振り返れば鬱のような状態になっていたと思います」。

営業先の同業他社で気に入られ、入社半年で転職。しかし次の職場でもパワハラを受けたり営業先でセクハラに遭ったりと前途多難でした。そんな中、営業として請け負ったタイアップ案件のライターが足りず自分で記事を書く機会があり「あ、楽しい。営業は出来なさ過ぎるけど、こっちなら出来るな、とチラっと思った」といいます。結局2社目も半年で退職。小学校時代の友人の結婚式の同じテーブルにいた週刊女性誌の編集者から「バイト探してるから来ない?」と声をかけられたのが、長田さんの転機となります。

ウェルネス連載長田杏奈さん

初めのうちは資料のコピー、ポジフィルムの整理、製版入稿の手伝いなど補助的な仕事をしていました。毎週金曜日は入校日で徹夜作業。ある時、長田さんが資料集めをしていた記事の執筆担当のライターに連絡がつかなくなり「資料集めてたから書けるよね!?」と急遽執筆を代打。それ以降、ライター仕事も振られるようになります。

妊娠を機にフリーランスの美容ライターに転身

「印象に残っているのは、多摩川に現れたアザラシのタマちゃんの取材。タマちゃんの写真と目撃エピソードを探すために、多摩川流域で聞き込みをしたんです。初対面の人の家に上がり込んで、最終的にはタマちゃんの姿を録画したホームビデオを貸してもらったり(笑)。週刊誌での経験は、知らない人に話しかけ、立ち止まってもらい、話を聞く訓練になりましたね。忙しいし寝られないしよく怒られたし大変だったけど、ライターという仕事は嫌じゃなかったし、自分の中でも手応えがあった。それに今思えば、先輩編集者が原稿を添削してくれて、それを更にデスクや副編集長が添削してくれて、きちんと育ててもらえて良かったな、と。そのレガシーで今までずっとやってきています」

長田杏奈さん

週刊女性誌でファッション、美容、掃除・料理・家電などの生活記事全般、といった実用ページを一通り担当してみて、幼い頃から雑誌の美容記事を多く読み込み、スキンケアやメイクの流れも把握していたおかげで「やっぱり美容がいちばん楽だししっくりくる」と感じた長田さん。妊娠を機にフリーランスの美容ライターに転身します。長男を保育園に預け昼間は撮影、寝かしつけの後に原稿執筆の日々。3年後には長女を出産、一人だった子どもが二人になり、物理的にも精神的にも追い詰められるように。

「保育園のお迎えの帰りにママチャリの前後に子どもを乗せて坂道を走っているときに、後ろの子どもが居眠りして頭がグラングランしてバランスを崩してしまい、植え込みに自転車ごと倒れ込んでしまったことも。完全にワンオペ育児で、身体もボロボロで、下の子が3歳になるまで本当に辛くて。家の玄関で行き倒れ、そのまま泣きながら友達に電話したこともありました」



超ストイックな「追い込みタイプ」

長田杏奈さん

それでも働き続けることを止めなかったのは、保育園代を稼ぐためという理由もありましたがそれ以上に、働き続けてキャリアを繋ぐことに意味を見出していたから。夫に『扶養内で働いた方が楽なのに』と言われ、悔しい思いをしたことも。当時の長田さんは、超ストイックな「追い込みタイプ」。保育園のお迎えの時間まで、LEEをはじめとする取引先のある集英社のカフェテリアで、イヤホンでアゲ系の音楽を聴きながら全集中で原稿執筆! 子どもの匂い嗅ぐと自然と母親モードにスイッチが切り替わるものの、子どもが寝た後には仕事再開! あまりに忙しく、当時の記憶が曖昧だとか。

「当時は特に、自分の限界を超えることに執着して、自分を厳しく律し、自我を出さないことにこだわっていました。とにかく自分を追い込んで追い込んで、スケジュール詰め詰めでたくさんやったら偉い。原稿にも自分を出すのは格好悪いと思ってました。自分の要素を1ミリも入れず、話してくれた人のエッセンスをキレイにまとめる方が楽だし、実は今でも原稿で自分を出すのは怖いしちょっと抵抗があるんです」

自分の思う「美容」と、世の中の思う「美容」の間にズレがある

長田杏奈さん

創立70年の印刷会社が経営するブックカフェ・ふげん社(https://fugensha.jp/)でお話しを聞かせていただきました。こだわりの自家焙煎コーヒーとブックセレクト。2階にはギャラリーもあり、定期的にアート系イベントを開催しています。

仕事では自分を出さないスタンスの長田さんでしたが、SNSでは徐々に自分を出すようになっていました。Instagramでは商品写真とともに自分のメイクを自撮りして投稿。「見ていて楽しそうなので私もやってみました!」「オススメされていたアイテム、私も買ってみました!」とフォロワーさんの声が届くように。Twitterは開始当初はいわゆる「美容アカウント」だったそうですが、徐々に長田さんの思う「美容」と、世の中の思う「美容」の間にズレがあると感じるようになり、その違和感について呟くようになります。

このツイートがきっかけで、長田さんは初の著書『美容は自尊心の筋トレ』を執筆することになります。

(インタビュー後編では、『美容は自尊心の筋トレ』執筆秘話や『エトセトラ』制作裏話、そして「女の子の自尊心を応援することをライフワークにしよう」と社会運動を始めた経緯を語っていただきます。お楽しみに!)

長田杏奈さんの年表

0歳 神奈川県で生まれる
15歳 中高一貫私立女子校の高等部に進学
18歳 中央大学法学部に進学。司法試験の受験勉強に明け暮れる
22歳 人生初の反抗期。受験勉強を断念、大学卒業後IT起業に入社、初のひとり暮らしを始める。半年で同業他社に転職するものの、やはり半年で退社
23歳 週刊女性誌で入稿整理のアルバイトを始め、徐々に記者仕事を任されるようになる
29歳
(2006)
妊娠を機に結婚。フリーランスの美容ライターに。長男誕生。
31歳
(2009)
長女誕生
41歳
(2019)
『美容は自尊心の筋トレ』を出版
42歳
(2020)
『エトセトラ』責任編集。『#8891』『#8008』ステッカー作成、配布

 

長田杏奈さん

撮影/高村瑞穂 取材・文/露木桃子

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LEE編集部 LEE Editors

1983年の創刊以来、「心地よいおしゃれと暮らし」を提案してきたLEE。
仕事や子育て、家事に慌ただしい日々でも、LEEを手に取れば“好き”と“共感”が詰まっていて、一日の終わりにホッとできる。
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