体と心を整えてくれる、中医学の知恵
夫が海外にいるため常にワンオペ、人一倍元気なタイプの9歳6歳兄妹と暮らしながらフリーランスでの仕事も精一杯取り組んでいるつもりで、なかなか多忙なを日々を送っている私…。38歳となり若い時と比べると体力低下を感じることもありますが、毎日をわりと元気に乗り切ることができている理由のひとつに、週1回通っているピラティスのクラスがあります。
ピラティスや筋膜リリースに加え、私がお世話になっている先生は「中医学」という2000年以上の歴史を持つ中国の伝統医学についても学ばれており、レッスンにはその知識も活かされています。
病気になる前に「養生」することを大切にしている考え方で、その時期に心がけると良い生活習慣や食物など、暮らしの中で気軽に心がけることのできる知識も多く、体だけではなく心まで含めて整える時間となっています。
心身共に不安の多い今の時代に嬉しい知識だと感じているので、今回は私が受けた「中医学&陰ヨガ講座」の体験レポを通して、これからの季節を元気に乗り切るためのヒントをお伝えしていきます!
これから始まる夏の時期に心がけたいことって?
日本人には馴染み深い点も多い「中医学」
「バランスの医学」とも呼ばれ、自然との調和を大切にしている中医学。
歴史があり簡単に語りつくせないほど奥深い一方で、日本人にも馴染み深く取り入れやすい点が多いところに惹かれます。
「立春」「夏至」「秋分」などを起点に1年の季節を24個に分ける「二十四節気」をもとに、例えば夏は「心(しん=心臓)」や「小腸」をケアしたあげた方が良い、苦い食べ物を摂ると体を助けてくれるなど、その季節に適した様々な心がけを伝えてくれています。
その際に大切なのが「陰」と「陽」のバランス。
世の中に存在する全ては陰と陽の二つの要素から成り立ち、互いに支え合い対立しながら影響し合っている。外の世界にも人間の体の内側にも陰と陽があり、どちらも大切なもので、そのバランスがが崩れると病気になると考えるそうです。
夏の時期に気をつけるべきことは?
先生のお話によると、夏に体調を崩しやすい要因となるのは「暑」「熱」「湿」という3つの「邪」。
冬の「陰」の気が減少し、「陽」の気が最も盛んになる「陽気最盛」の季節と言われており、「陽」の気が上に集まってくるため偏頭痛や上半身のだるさ、また血の巡りのトラブルから来る貧血や、不眠などの症状が出やすいのだとか…
簡単に言うと「体も心もぐったりしてしまう」ということで、私たちが毎年実感していることは、中医学でも昔から気をつけるように伝えられていることなのだと感じました。
「新陳代謝が活発な時期であり、とにかく外に出し切ることを意識すると良い季節です。適度な運動で汗をかくと毛穴のストレッチとなり放散できますし、また気持ちも言いたいことも我慢しない方が良いとされています。朝は早く起き、適度に日に当たり「陽」の気をとりこみ、気持ちを外へ向け焦ったり怒ったりしないことも大切。食べ物は、色で言うと赤いもの、そして苦みのあるものが夏の時期の体を助けてくれると言われています。」(※「あくまで夏に関する一般的な知識で、季節や体質に応じた食材選びが体を養生します。」とのことでした)
夏の過ごし方で秋冬の体調が左右される
「『冬病夏治(とうびょうかじ)』という「冬の不調は夏に出し切るべし」という意味の言葉もあるほどで、夏の我慢は秋冬まで影響し体調を崩す原因となってしまうため、意識してご自身を労わっていただきたい季節です。
また、熱さが厳しいところから急に涼しい秋になる時が自然界も人間も一番負担がかかるとされており、その時期に備えて中国では夏に『三伏養生』という特別な養生をする習慣もあるくらいです。」
講座に参加した方の中にも「毎年夏の終わりに体調を崩す」と話す方が多く、「こんな昔から特別気を付けるように言われている時期なのだから、普通に過ごしていたら不調が出て当たり前だね。そう考えるとなんだかほっとするね~」などと盛り上がりました。
日々の中に取り入れやすい知恵
体質によって、それぞれのタイプ診断も
季節ごとに気をつけた方が良いことに加え、中医学ではその人の体質によって、性格の傾向や気をつけた方がよい臓器や不調などもわかるとされているそうです。
今の私は「木」の要素に属する「肝」と、「火」に属する「心(しん)」が混じっているのではないかとのことでした。
診断によると本来は肝タイプだけれど、今は子育てや仕事で日々慌ただしく過ごす中で「心」に寄りがちで「陽」が多い状態だから、例えばイライラしやすかったり、忙しい時ほど夜横になっても色々考えてしまって眠れなかったり…ということが起きるのではないか。またタイプ診断の答えはひとつでもなく一定でもなく、季節や年齢、環境などによって常に変化し、日によっても異なるという考え方も興味深いと感じました。
私が日常で心がけるようになったこと
もうひとつ面白いと感じ印象的だったのが、私の場合はランニングと日記を書く習慣が、自身のバランスを整えることに繋がっているのではないかという先生の言葉でした。
以前、LEEの誌面でも取り上げられwebでも書かせていただきましたが、私はもう4~5年、毎朝20分のランニングを続けています。最初のきっかけは産後にちょっともたついた身体を引き締めたいという思いでしたが、今ではむしろ心を穏やかに保つために欠かせない習慣となっています。
また、日々暮らす中で煮詰まってしまった時ほど、時間を取って手帳やノートに気持ちを書きながら自分のことを整理するようにしています。
本来は「陽」の要素を持つというランニングですが、私にとっては仕事・家事・子育てなどから離れ、ひとりで無になれる落ち着ける時間、つまり「陰」の存在。現在の生活の中では「陽」に傾きがちな自分の中に、そうやって「陰」の要素を入れることでバランスを取っているのではないかというお話がとても心に残りました。
もともと大切に思っていた習慣ですが、それ以来、どんなに忙しくてもできる限りその時間は作るように心掛けています。
また食べ物に関しては中医学でも「自分が生まれた土地のものや旬のものは心身を健やかに保ってくれる」ということを大切に考えるそうで、日本人としても馴染み深く、これまで以上に意識するようになりました。
今は夫が不在で子ども達しかいないため、日々の食卓はついつい子どもウケするメニューに偏りがちでしたが、例えば春は山菜、夏はゴーヤなど、ちょっと子どもが敬遠しがちなものも織り交ぜ、まずは私自身が楽しく食べている姿を見せるように意識しています。
自分にも周りにも優しくなれる考え方に惹かれる
そのまんまの自分でいいよ、というメッセージ
私自身がMAYUMI先生のクラスに通い続ける大きな理由もまた、体のワークアウトだけではありません。
「このレッスンの間だけは日々の忙しさを離れてご自身と向き合い、調子の良い日も悪い日もそのままの自分を受け入れて」というメッセージをいただくことで、心まで整える時間となっています。
「外の世界も夏と冬でこれだけ気候が違うのだから、体の内側や心も常に同じであるはずがありません。常に変化していいし、例えばピラティスやヨガの動きも、この間はできたのに今日はできないとか、いつもと同じポーズなのに落ち着かないということがあっても良い。そういう不安定な落ち着かない気持ちもそのまま感じてみる、良い悪いで判断しないということが大切だと思います。」
もともと良くも悪くも頑張りすぎるタイプで気づいたら体調を崩していた…ということも多かったのですが、先生のお話に定期的に触れているうちに少しずつ、自分の心身の状態に目を向け、以前よりは自分に優しくなれるようになってきました。
すると、例えば子ども達が大人からすると理不尽に騒いだりぐずったりしている時も、「イライラする日もあるよね、できない日もあるよね」と一呼吸置けることも増えました。
心が落ち着く、ほっとできる学問
「自分が満たされていないと周りにも優しくできないから、まずご自身を大切にしてほしい」
そんなふうに話す先生ご自身も、中医学に興味を持ったきっかけは、運動後のケア不足や不摂生が原因での体調不良だったそう。
「まず、誰にでもすぐに取り入れられる身近な考えであるところに惹かれます。それでいて本当に学べば学ぶほど奥深く、例えば薬や治療といった外側からのアプローチではなく、身体のツボや経絡、心の持ち方や食養生など自分の内側にあるものを引き出してケアをするという考え方によって自分自身と向き合い直す機会にもなっています。それを通じて、家族など周りの人とも改めて向き合うきっかけにもなりました。
日常に追われ病気になってから症状を押さえるのではなく、病気にならないよう日頃から養生を心がけることは、ご自身の体を知り愛することに繋がると思っています。」
***
年を重ねると共に痛感しするのが、自分の心身を健やかに保つことの大切さです。
身体を動かし、そこに意識を向けることで心にも向き合い、両方を整える機会を作れていることはとてもありがたいことだと感じています。
まだまだ不安の多い世の中に加え、年々暑さが厳しくなる夏は体調を崩しやすい季節。お忙しい方ほど、少しでも自分と向き合う時間を作りご自身を大切にすることが、夏を元気に乗り切る一番の秘訣かもしれません。
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佐々木はる菜 Halna Sasaki
ライター
1983年東京都生まれ。小学生兄妹の母。夫の海外転勤に伴い、ブラジル生活8か月を経て現在は家族でアルゼンチン在住。暮らし・子育てや通信社での海外ルポなど幅広く執筆中。出産離職や海外転勤など自身の経験から「女性の生き方」にまつわる発信がライフワークで著書にKindle『今こそ!フリーランスママ入門』。