ファッションや暮らしまわりについて、いつも素敵なお手本を見せてくれる、女優のともさかりえさん。今回は最新のお仕事をクローズアップ。7月9日~8月初旬まで、ミュージカル『衛生』に出演します。昭和の日本を舞台にした、「善人不在」の物語。
そして意外にも、ともさかさんはミュージカル初挑戦だそう! 作品に対する思いを語ってもらいました。
ミュージカルは「聖域」。依頼をいただいて焦りました!
女優のキャリアが長いだけに「ミュージカル初挑戦」と聞くと驚いてしまいますが、実はご本人の中では「ミュージカルはあまりにも好き過ぎて、遠くから眺めていたい世界」だったのだそう。
「初めての観劇体験は、中学生になるかならないかの頃に観た『ミス・サイゴン』。歌と人間ドラマのめくるめく世界に衝撃を受けました。ただその後、ほどなくして私は今の仕事を始めてしまい、プライベートでは20代前半から子育てに奮闘と、なかなか趣味の時間が持てなかったんです。子育てが少し落ち着いたここ数年から、本格的にミュージカルにのめり込み、いろいろな作品を観るようになりました。普通の舞台だと、どうしても作品の先に自分のお仕事を重ねてしまうのですが、ミュージカルはそういうことを気にせずに、私を異次元に連れて行ってくれる”聖域”。全てを忘れてどっぷり浸るのが楽しくて……。今回、ご依頼をいただいた時は『あの聖域に私が足を踏み入れていいの?!』と、おそれ多い気持ちになってしまいました」
音楽ともストレートプレイの芝居とも違う世界
ともさかさんと言えば、歌手デビューもしていて『エスカレーション』など、LEE世代にはその当時の自分との思い出を重ねられる代表曲も。今年に入ってからも歌番組に出演して、椎名林檎さんがシーナ・リンゴ名義で作詞・作曲した名曲『カプチーノ』を披露したりと、音楽や歌とは親和性の高い女優さんというイメージがありますが……?
「いえいえ、音楽とミュージカルはまた別モノです(汗)。デビューして30年になりますが、私のお仕事って正解がないものですし、毎回、新しい課題をいただいているような感じです」
何かあったら福原さんのせい!?、最後は腹をくくりました(笑)
脚本と演出は、近年、数々の映像や舞台作品で注目を集めている福原充則さん。彼が『衛生』で描くのは、昭和の時代に汲み取り業の経営拡大をもくろむ親子と、彼らを取り巻く人たちとの、復讐と人間劇。これまでのミュージカルの持つイメージを覆すような、ひねりの効いた設定も気になります。
「そうなんですよね。単純に華やかな歌と物語が繰り広げられるのではなく、キーワードに”悪”が入ってくるのがさすがだなと。福原さんの作品は以前から大好きだったので、いつかご一緒できればと心密かに願っていたのですが、まさかミュージカルとは! 『本当に私で大丈夫なんでしょうか』と何度もお尋ねしたら、その都度『大丈夫です』とおっしゃって下さったので、よし、なんかあったら、これはもう福原さんのせいにしちゃおうと腹をくくりました(笑)」
人はだれでも心の奥底に「悪」を秘めている
ともさかさんが演じるのは、古田新太さんが扮する汲み取り業者の社長と、ライバル関係にあった、好恵という女性。
「彼女は人当たりが良くて、一見優しく感じられる人。でも実はすごい怖いことを言ってのける女性なんです。今回の作品は、登場人物がみんなひと癖もふた癖もあるのですが、好恵の無邪気な悪人ぶりも、台本を読んでいてなかなかのものだと思いました。このキャラクター、福原さんが私のイメージを重ねて書かれたものではないことを願いつつ(笑)。だけど人って、必ずどこかに毒っ気や悪の部分を秘めていますよね。顔では笑っているけど内心では『ちぇっ』と思っていたりとか。それを上手くコントロールするのが大人の処世術だと思うんですけれども、今回は登場人物たちの悪意が色んな方向からダダ洩れになっているのが見どころ。果たしてどの役のどの悪に感情移入するのか……。私が演じる好恵の悪人ぶりも含めて、観て下さる方の反応が、今から気になっています」
昭和とは独特の熱量を持った時代だった気がします
物語の時間軸が昭和30年代と昭和50年代、ふたつの時期にまたがっているのも興味深いところ。
「私自身は1979年(昭和54年)生まれ。昭和って永遠に続くような気がしていましたけど、物心がついた頃には終わってしまったんです。『衛生』で描かれる”汲み取り”みたいなライフスタイルも、体験していないですしね。でもその一方で、ついこの間のような気もしていて……。不思議です。個人的には、今も歌い継がれている歌謡曲が次々と生まれたりと、カルチャー的にたくさんのものを残してくれた時期でもあったのかなあと。『昭和って、もはや今の若者たちには時代劇なのかも?』なんて話も、役者仲間と「昭和って~」と話すこともあります。今とはまた一味違う、独特の熱量があった時代かなと思いますね」
夏場の舞台。おうち時間でうまく気分転換を!
夏の暑い盛りにかけて上演が続きます。「初めてのミュージカルを全力で演じ切るためにも、体力維持や、気分転換を上手にしていきたい。そのためにも自宅での何気ない時間を、いつも以上に大切にしたいですね」と、ともさかさん。
「仕事を終えて家に帰ると、やらなきゃいけない家事が溜まっているのは、もちろん面倒くさくもあります。それでもわたわたとしながら部屋を片づけたり、ご飯を作ったりと、日常生活をこなすことがオンとオフを切り替える、いい方法だったりもするんですよね」
子育ては次のステージへ。息子と料理をする時間も生まれてきた
さらに最近、高校生の息子さんとも、新たなおうち生活を楽しめるようになっているとか。
「うちの息子は食べることが大好き。唐揚げひとつにしても、『今日は普通のが食べたい』、『今日は甘酢をかけたものを食べたい』とか。リクエストが細かいんですよ~。思春期の男の子って、出されたものは何でも食べるんじゃないの?と思ったりもするんですけれども(笑)。最近は、自分で作るのにも興味が出てきたみたいで。この前も家に帰ったら人参が大量に切ってありました。本人曰く『包丁を使う練習をしてたんだ』と。それじゃあ今夜は人参を美味しくいただける豚汁を作ろうか、なんてこともありましたね。気が向いた時は買い出しに行ってくれるようにもなって。どうやらスーパーで色々な食材を見るのが楽しいみたいです」
息子は、小さい頃からセリフをつぶやく母親に慣れていて
そして、こんなおうち時間のひとコマも。
「ご飯を食べたあとに、洗い物をしながらセリフを練習することが多いんです。言い回しで突っかかる部分や、覚えたい箇所って何度も繰り返して声に出すんですけれども、そうこうしているうちに横から、『違う。そこは〇〇でしょ?』と、息子からツッコミが入ることも(笑)。私がブツブツ言っているのは、彼にとっては幼い頃から馴染みのある行動ですし、傍らで聞いているほうが、憶えちゃったりするんでしょうね」
ミュージカルは夢の世界。忙しいLEE世代こそ、ぜひ心に潤いを!
そんな母子のほほえましいひと時も積み重ねながら、今回も新たなお芝居の世界へと挑戦します。
「劇場に足を運ぶって、少しハードルが高い行動と思われがちですけれども。働き盛り、子育て真っ最中のLEE世代の方にこそ、物語の中でうっとりしたり、ハラハラしたりしたりと、日常とは違う感情を味わって心を豊かにしていただけたらなと。もちろん、感染対策は万全にしていただいて。そして何よりも私自身、大のミュージカル好きの一人として、この舞台を思い切り楽しみたいと思っています」
●Profile ともさか りえ
女優 1979年生まれ、東京都出身。ファッションやライフスタイルにも造詣が深く、その世界観はLEEでも大人気。5月に立ち上げたブランド『My weakness』も話題に。最新情報はInstagram(@rie_tomosaka_official)でも発信中。
ミュージカル『衛生』 ~リズム&バキューム~
水洗トイレが普及する前の昭和33年。し尿の汲み取り業者「諸星衛生」は、社長の良夫(古田新太)、息子の大(尾上右近)を中心に、利益追求のために悪事も厭わない。その一方で従業員の禎吉(石田明)は、大に片想いの相手を奪われたことで恨みを募らせる。そして昭和50年。大に世代交代した「諸星衛生」は、ライバル業者の瀬田好恵(ともさかりえ)を始めとする、数々の組織や人物から、復讐の機会を狙われるように――。ともさかさんはもちろん、古田さん、尾上さんなど、名役者ぞろいの豪華なミュージカル。
チケットの一般発売は5月29日(土)10時から(東京)、6月26日(土)10時から(大阪、福岡)
料金・S席¥13500 A席¥10000(税込み・全席指定)
【東京公演】
2021年7月9日(金)~25日(日)TBS赤坂ACTシアター
【大阪公演】
2021年7月30日(金)~8月1日(日)オリックス劇場
【福岡公演】
2021年8月9日(月)~8月11日(水)久留米シティプラザ
【公式HP】https://musical-eisei.com/
撮影/藤澤由加 ヘア&メイク/伴 まどか スタイリスト/斉藤くみ 取材・文/石井絵里
ワンピース¥39600/デ・プレ イヤーカフ¥35200/ブランイリス エストネーション六本木ヒルズ店(ブランイリス)
●お問い合わせ=
デ・プレ/0120・983・533
ブランイリス エストネーション六本木ヒルズ店/0120・503・971
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