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LIFE

CULTURE NAVI「今月の人」

尾野真千子さん 映画『茜色に焼かれる』で伝えたいのは「“生きる”ということ」

2021.05.20

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カルチャーナビ : 今月の人・今月の情報

一見、近寄りがたい美貌ながら、ひと言口を開けばまたたく間に場が笑いに包まれる。サクサクッとした物言いが痛快、かつユーモラスな尾野真千子さんが、劇中では一転、またも観る者の心をギリギリ押しつぶし、無傷では帰してくれない。その『茜色に焼かれる』で尾野さんが演じたのは、理不尽な事故で夫を亡くした良子。

尾野真千子さん「結局、私が伝えたいのは"生きる"ということ」

尾野真千子さん シャツ¥24200・パンツ¥28600/ストックマン(オットダム) ピアス/BRÜCKE

シャツ¥24200・パンツ¥28600/ストックマン(オットダム) ピアス/BRÜCKE

「思わず“やりたい”と感じる要素がてんこ盛りの台本でした。いろんなテーマがありますが、結局、私が伝えたいのは“生きる”ということ。こんなにまざまざと“生きることで闘う”姿が書かれた台本は、そうないと思いました」

とはいえ良子の生き方は、感服せざるを得ないと同時に、もう少し楽して生きればいいのに……と思わずにもいられない。謝罪の言葉がないからと賠償金の受け取りを拒絶し、亡き夫の父親の老人ホーム代や夫の隠し子の養育費まで払い続けているなんて。

「確かに“何で?”って思いますよね。でも、だからこそ良子は生きていられるんだな、とも思いました。かけ持ちの仕事の一つが風俗ですが、それも演じながら“普通のことかもしれない”と思ったんです。親って、子どもや愛する者に対して、周りが“そこまでする!?”と思うことを平気ですることがありますよね。それに生きていると、“何でそこまでやっちゃった?”みたいな、おかしなことがわりにある。良子にとって、“例えば”がその選択だっただけ。だから息子のためにそこまでする良子は、意外に“スゴすぎない”んですよね」

どんな逆境にさらされても、尊厳が傷つけられても、良子は“まぁ、
頑張りましょう”と切り替え、やり過ごし、生き抜こうとする。脚本も手がけた、『舟を編む』の石井裕也監督のコメントを読むと、こんな痛みを伴う役を尾野さんに託した、信頼の厚さがうかがえる。最初から尾野さんを想定して書かれたのだろう、と思えてくる。

「私もそう思いました。読んだらしっくりきちゃって。だってこれ、私でしょ(笑)!? 確かに私、強烈なメッセージを伝えなければならない役がついて回っていますが、自分でもそれが役目だと思っていて。もし本当にそのとおりなら、これまでやってきた甲斐があるし、ありがたい話だなと思います」

困難や理不尽を飄々とやり過ごしてきた良子だけに、怒りを爆発させるシーンの、尾野さんの圧巻の演技がよりきわだち、胸を打つ!

「何しろ監督が石井裕也さんですから。石井さんが書かれた台本どおりにすれば、そうなるんですよ」

謙遜しつつ、“台本からハミ出しすぎないよう、ギリギリを狙った”と明かす。同時に“もう少し何かできたかも”と、役者の業の深さも覗かせる。カラッと笑っている裏で、正解なき仕事を追求する真摯さに脱帽……!

さて、インタビュー中も笑顔が絶えない尾野さん。その明るさを支える、ハッピーを呼び込む秘訣が気になるところ。

「好きなものを観る、食べる、する、ですね(笑)。コロナ禍で、“あれもダメ、これもダメ”とできないことを探す人が多い気がして。そうではなく好きなことを思ってワクワクすればいい。例えば、自分の好きなことを書き出してみるとけっこう見つかるんですよ。そうだ、好きな人の名前を書いてみるのもいいかも!? うふふふ(笑)」

Profile

おの・まちこ●1981年11月4日、奈良県生まれ。’97年に『萌の朱雀』で映画主演デビュー。近年の主な作品に、『そして父になる』(’13年)、『台風家族』(’19年)、『心の傷を癒すということ 劇場版』『ヤクザと家族 The Family』(ともに’21年)など。『明日の食卓』も5月28日に公開予定。

映画『茜色に焼かれる』

7年前、85歳の元官僚が起こした自動車事故で、夫(オダギリジョー)を亡くした良子(尾野真千子)は、加害者からの賠償金を拒絶し、一人で息子を育ててきた。仕事をかけ持ちし、義父の施設費や夫の隠し子の養育費まで払い続ける良子を、13歳になった息子も、店の同僚らも理解できずにいるが――。5月21日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて公開。

©2021『茜色に焼かれる』フィルムパートナーズ


撮影/岸本 絢 ヘア&メイク/黒田啓蔵(Iris) スタイリスト/ 江森明日佳(BRÜCKE) 取材・文/折田千鶴子

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