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LIFE

CULTURE NAVI「CINEMA」

【映画『ファーザー』】イギリスの名優アンソニー・ホプキンスが記憶を失いゆくインテリ老人をリアルに、かつユーモアを湛えた魅力で体現

2021.05.13

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cinema culture navi

『ファーザー』

© NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION TRADEMARK FATHER LIMITED F COMME FILM CINÉ-@ ORANGE STUDIO 2020

スリリングで動悸が速まる、記憶が薄れゆく父と娘の絆と真実

イギリスの名優アンソニー・ホプキンス。『羊たちの沈黙』(’91年)で同賞受賞の彼が、83歳の史上最高齢で2度目の受賞なるか。日本を含め世界30カ国以上で上演された傑作舞台の映画化で、舞台を手がけたフロリアン・ゼレールの、なんと長編初監督作ということにも驚かされる。

ロンドンで一人暮らしをするアンソニー(ホプキンス)が、またも介護人に暴言を吐いて辞めさせ、娘アン(オリヴィア・コールマン)が駆けつける。介護人を頑なに拒絶する父に、アンは恋人のいるパリで暮らすことになると告げ、“見捨てるのか”と憤慨する父に、介護人の必要性を必死で説く。

数日後、アンソニーがキッチンで紅茶をいれている間、不審な物音に驚いて急いでリビングに戻ると、見知らぬ男がソファに悠然と座っている。結婚して10年になるアンの夫ポールだという男は、ここは自分とアン2人のアパートだと主張する。

アンソニーが疑うように誰かが豪奢なアパートを奪おうとしているのか、何が嘘で何が実か、もう一人の愛娘ルーシーはどこへ行ったのか――。アンソニーの前で次々と起きる不測の事態に私たち観客も翻弄され、必死で真実を見極めようと鼓動を速めながら凝視することに。

自身も高齢のホプキンスが、記憶を失いゆくインテリ老人をリアルに、かつユーモアを湛えた魅力で体現、その深い演技力に圧倒される。なるほど“こんなの初めて”と感じたのは、そういうことか。新たな発見がもたらす理解が、我々の目を開かせる。記憶が薄れゆく状態だからこそ生まれ得たサスペンスフルな瞬間の数々が、こうも見事に結実するとは!

誰もが避けられない老いと家族の現実を見据えながら、悲しみや憂鬱だけではない、ぬくもりが残る不思議な映像体験に心が震える。(5月14日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー)
『ファーザー』公式サイト

『海辺の家族たち』

© AGAT FILMS & CIE – France 3 CINEMA – 2016

『マルセイユの恋』のロベール・ゲディギャン監督最新作

父親が倒れ、マルセイユ近郊の海辺の町に3兄妹――地元でレストランを継いだ長兄、リストラされ若い恋人に捨てられそうな次男、女優の妹が集う。

かつてにぎわったが、今はすっかり寂れた町の実家を、この先どうするか……。

そこへ、3人の難民の子どもが漂着する。人生ドン詰まった家族が、新たな出会いを通し、積極的に自分、そして他人の人生にかかわろうと一歩踏み出す姿が、サラッと心の琴線に触れる。(5月14日よりキノシネマほか全国順次公開)

『海辺の家族たち』公式サイト

※公開につきましては、各作品の公式サイトをご参照ください。


取材・原文/折田千鶴子


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