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LIFE

子供も大人もハマる絵本作家インタビュー完全版

ヨシタケシンスケさん「身も蓋もないことを言える、それも絵本の可能性」

  • LEE編集部

2017.01.15

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全国の本屋さん3000人が選ぶ「第9回MOE絵本屋さん大賞2016」でなんと、3回目の第1位受賞、さらに『もう ぬげない』が1位、『このあと どうしちゃおう』が2位に輝いたヨシタケさん。異例の大ヒットを出し続けている、今、人気No.1の絵本作家の素顔は『絵本作家』のイメージとちょっと違う!?
でもだからこそ、新たな読者が増え続けているのかも。

今回はLEEの2016年11月号特集のインタビューの、なんと文字数にして4倍超となる完全版を、特別にお届けします。ヨシタケさん自身の子育ては? どんなお父さん? 本誌特集では2ページにおさめるために泣く泣く削った楽しいお話しをぜひご堪能ください。子育て読者の子供からの質問の答えとして描いていただいたイラストも必見です!

撮影/米谷 享 イラストレーション/ヨシタケシンスケ 取材・原文/原 陽子
この記事は2016年10月7日発売LEE11月号掲載のインタビューの完全版です。


――前回はヨシタケさんのありのままの子育て観をうかがいましたが、ヨシタケさんご自身は、どんなお子さんだったのでしょう

「引っ込み思案で、甘えん坊でしたよ。4人きょうだいで、2つ上の姉、自分、妹が2人。もともと気が小さかったし、場を荒立てないことが生きる目標だったんです。人に言われたことをそのままやるのはすごい得意だったんですよ、塾に行けと言われたら言ってたし。ぼく、反抗期がなかったんですよ。自分でやばいと思っていたくらい、人の言われたことに『ぼくは違う』と言える自分のベースがなかった。

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大学で、自分が課題でつくったものを人がよろこんでくれる、『自分はこういうのが好きなんだけど』と人に見せて、それが誰からも怒られないと知って、はじめて『おもしろい』と思ったんです。

逆に小中高とつまらなかったんだと、そこで気がついて。それが苦しいとも思っていなかったけど、鬱々とはしてましたね。今持っている言葉で言うとそういう状態になるんですけど、当時はつらいという意識はなく、そういうものだと思っていました。本当に子供の頃は何者でもなかったです、ぼくは。

姉が勉強も絵もすべてできる人で、何も叶わなかったけど、唯一工作だけはやらなかったんです。それをぼくがたまたまやったら、母親が『こいつはここしかない』と思ったのか、すごくほめてくれた(笑)。それがとてもうれしくて、将来は大工さんや職人さんになりたいかなというのはぼんやりとはあったんですが、高校で進路を決めるときには、それまで自分でものを考える訓練をしていなかった分、すごく悩んだしこわかったし、ものすごいコンプレックスにさいなまれました。

特に今みたいに、生まれてから身の回りになんでもある、何も足りないものがない状態で育ってきたときに、ある日いきなり、『じゃあ君何がたりないの? 何がほしいの?』と言われるほど残酷な質問はないわけですよ。『ええ~、なきゃいけないの?』って。

ハングリー精神を見せろと言われても、全然おなかすいてないわけですよ。今にして思うと、進路や将来をやたら聞かれるのは、単純に先生側の都合というか、でもがんがん求められると、すぐに決められない自分にものすごくコンプレックスを感じるわけですよね。

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『それは大人側の事情が9割だからね、その場その場でどうにかこうにかやってけるよ』という本がそのときにもしあって。それを読んでいたら、ずいぶん違っていたと思う。そういう身も蓋もないことをちゃんと言えるのが、絵本でできることのひとつじゃないかと思っていて。

『いい加減でもどうにかなる人もいるし、ならない人もいるけどね』『そもそも、十何年の経験で何十年先を見越せと言われても、わからないよね』と、丁寧に、おもしろおかしく伝えられたら、昔のぼくは救われたはずなんですよね。

漫画にしろネットにしろ、今、ファンタジーの世界、自分を楽しませてくれるものは山ほどあるわけで、選び放題。でも、いつか何者でもない自分に、現実に戻ってこなきゃいけないわけで、現実と仮想の世界での振れ幅みたいなものに悩んでしまう人って、今後どんどん増えていくと思うんです。

そこで、現実と仮想の世界をどうつなげておもしろがるか、そのヒントみたいなことを、こういう考え方やこういうことをすると案外おもしろいよね、体調のいいときに限ってだけど世の中光り輝いて見えるよね、とか、限定付きで言うことができるんじゃないか、という気はしています」

『大人になるとわかるよ』ではない伝え方を考えたい

――絵本作家になる人は小さい頃から豊かな才能を発揮して、のびのびと育ち、のようなイメージとは、ずいぶん違いますね

「そうそう、野原でちょうちょ追いかけて、大きな画用紙にクレヨンでバーって絵を描くみたいな、まったくそんなことはなくて。それこそぼく大学に入って、『よくお前これで入れたな』と先生に言われたくらい、絵が下手でした。それで、目の前にあるものを描くのはやめようと思った。

正解が目の前にあるのにできていないというのは100%ぼくのミスになるわけですよ。でも、目の前にないものを描けばこちらが非難される筋合いがなくなる、似てようが似てまいが。で、見ないで描くようになったら描けるようになった。

そんなふうに見ないで描くことで、ものの特徴を記憶して描いてズレをちょっとずつ埋めていく作業でうまくなる方法もあったりする、要はいろんな方法があるんだな、ということなわけですよ。

人生を重ねてきて何がわかりましたかと言われると、『いろんな人がいました』、それだけじゃないですか。これから大きくなっていくときに、いろんな人がいるってどういうことなのか、どう伝えるべきなのか、この年になってわかる。

いろんな人がいるなあ、みんながんばってるなあ、という気持ちは、若者にどう言うべきなのか。つらいこともあるけど楽しいこともなくならないよと、大人になるのも悪くないなと思ってもらえるためには、どういう言い方で伝えればイメージしてもらえるのか。

『大人になるとわかるよ』というのは楽なんですが、言われた側からすればずるいですよね、今知りたいんだと。

今の言葉、今の経験でわかる、12歳なら12歳がいちばんイメージできる感じは、伝える側が本来考えなきゃいけないことなんですよね。そういう具体的なアドバイスを絵本でどう発信していくかは、今後も考えていきたいです」

 

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PROFILE
ヨシタケシンスケ
’73年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。絵本デビュー作『りんごかもしれない』で第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、第61回産経児童出版文化賞美術賞などを受賞。2児の父。

 

子供から出てくる、たくさんの「不思議」「疑問」・・・意外すぎる問いに、思わず口ごもってしまうこともありますよね。そんな時は、どう答えたらいいの?
読者モニターLEE100人隊から寄せられた質問に、ヨシタケさんが特別描き下ろしで回答しちゃいます!

LEE100人隊から寄せられた
子供からの素朴な質問

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LEE編集部 LEE Editors

1983年の創刊以来、「心地よいおしゃれと暮らし」を提案してきたLEE。
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