バイデン(当時は次期)大統領がテレビの生中継を入れながらワクチンを接種したのは、昨年12月22日のこと。安全性をアピールし、国民への接種を進めていくという姿勢をひしひしと感じましたが、アメリカでは予想を上回るハイペースで接種が進んでいます。私もついに、4月1日に1回目の接種を行なってきました。ワクチン接種が完了したのは413万人以上、5人に1人の割合で摂取が終わっているニューヨーク州の「ワクチン事情」をお伝えします。
予約はオンライン、接種は16歳以上
ニューヨーク州でも初めは医療機関に勤務するエッセンシャルワーカー、高齢者、基礎疾患を持つ人が優先でしたが、3月22日にすべての50歳以上が対象に。そこからわずか1週間足らずの3月30日に30歳以上、そして4月6日からは16歳以上のすべてのニューヨーカーが接種可能になりました。接種は強制ではなく、個人の意思に基づくものです。
お隣のニュージャージー州では現在55歳以上、東海岸のフロリダ州では4月5日から18歳上が接種対象となっており、ニューヨーク州は他州と比べても早く幅広い人への接種を行なっています。
ニューヨークでは2回接種が必要なファイザー、モデルナとともに、1回接種のジョンソン・アンド・ジョンションが認可されています。予約はすべてオンラインでできるようになっており、州の保健局や市の専用サイトではワクチンの種類も明記されているので選ぶことも可能ですが、対象年齢が一気に30歳に下がると、州と市の予約サイトはカオス状態に。アラフォーの私も、予約開始と同時にパソコンにかぶりつき1時間ほど粘りましたが、全く取れませんでした。
やっと出てきても、「ここどこ?」と思うような場所ばかり・・・。困っていたところ、友人から病院やクリニックが独自に受け付けている予約サイトを聞き、4月1日の予約を取ることができました。
流れ作業の接種、副作用は?
私は小さなクリニックでファイザーの1回目を接種しました。受付を済ますと、待合室へ。私を含め4人だけが待っていましたが、お互い熾烈な予約争奪戦を勝ち抜いた人たちだと思うと、マスクをしていても笑みがこぼれます。「いやー(予約)大変だったよねー」と周りに話しかけるマスクを二重にしたおじさんは、神経質なのか何も触ってないのに数分おきにハンドサニタイザー(笑)。
名前を呼ばれると、心拍と脈を測り、準備万端。
ナース 「気分はどう?」
私 「ちょっと緊張してる」
ナース 「私、700回は打ったから!大丈夫よ」
ささっと消毒アルコールを塗って、ブスッ。一瞬でした。
接種後は、待機室へ移動し15分待って帰っていいとのこと。注射を打っただけでこんなに嬉しいなんて、生まれて初めての経験です。
先に受けていた友人たちからは、倦怠感が出た、腕の痛みがしばらく続いたなど副作用を聞いていましたが、当日は全く痛まず、翌日に少し腕が痛む程度。翌々日にはなくなり、日常生活に全く支障はありませんでした。
2回目は自動的に予約されるので、4月22日に受ける予定です。
すべてオンライン予約ですが、インターネットアクセスがない場合などは予約をサポートする非営利団体やボランティアグループがあり、悲しいニュースも多いニューヨークで助け合いの輪も広がっています。
大リーグの本拠地もワクチン会場
接種は病院や薬局のほか、臨時ワクチン接種サイトも多く設置されており、大リーグでニューヨーク市に本拠地を持つヤンキースのヤンキースタジアムはブロンクス区の住民優先、メッツのシティー・フィールドもクイーンズ区の住民やタクシー運転手を優先にした接種会場となり、大リーグが開幕した今もヤンキースタジアムは会場として使われています。
飲食業を営む友人の旦那さんは、一足先に接種をしましたが、スーパーマーケット内の薬局で予約をしたら、まさかのビールケースが並ぶ一角とは! カーテンで区切られた椅子1つ分ほどの小さなスペースだったそうです。ビールに囲まれて打つなんて、日本では考えられない光景かも。
無料のワクチンパスポートで旅行も
ニューヨーク州は「エクセルシオール・パス」と呼ばれるワクチン接種とP C R検査、抗体検査の結果を示すアメリカ初の「ワクチン・パス」ができています。エクセルシオール(Excelsior)とはニューヨーク州の標語で、「より高みを」という意味です。パスは、ワクチン接種完了から180日間有効で、すでにマンハッタンのマディソン・スクエア・ガーデンやブルックリンのバークレーズ・センターでのプロスポーツ試合でテスト済み。個人旅行での飛行機への搭乗の際やイベント会場への入場などに使うことができます。こちらもスマートフォンのアプリのほか、プリントアウトして持ち歩くことができます。
「7月4日の独立記念日には、普通の生活に戻れるようにします」
バイデン大統領が語った言葉が、現実になりそうな期待が膨らむワクチン接種。まだまだ制約の多い生活ですが、ようやく希望が見えてきました。
(接種割合や基準は4月5日現在)
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田辺幸恵 Sachie Tanabe
ライター/ライフコーチ
1979年、北海道生まれ。スポーツ紙記者を経て2006年にアメリカへ。2011年にニューヨークで長女を出産。イヤイヤ期と仕事の両立に悩みコーチングを学び、NPO法人マザーズコーチジャパン認定講師に。趣味は地ビール探しとスポーツ観戦。夫と娘(8歳)の3人家族。