モノやサービスの価格が総額(税込み)表示に
2021年もすでに3か月が過ぎました。1年の4分の一がもう終わってしまったなんて驚きですね。4月から新年度がスタートするように、私たちの身近でも新しく始まることがあります。
一つは、モノやサービスの価格が「総額表示」になること。たとえば洋服やコスメを買う際、これまで値札に大きく書かれていたのは消費税抜きの価格がほとんどでした。本来なら税込み価格表示でなければいけないところ、販売側の負担などを考慮して、2021年3月までの特例で「価格(税抜き)」「価格+税」などの表示が認められていたという事情によるものです。いよいよ「特例」の期間が終了し、4月からは私たちが目にするのは総額表示つまり税込み価格となるわけです(ちなみにLEE本誌やLEEwebでは4月号発売日の3/5より総額表示となっています)。
たしかに、「980円+税」という表記だと、結局いくら払うのかすぐにはわかりません。レストランのメニューも店によって税込み・税抜き価格が混在していたりと、紛らわしいことは確かでした。消費者としてはありがたいことですが、店側は苦労しそう。例えばスーパーの「よりどり3品980円」といった税抜き前の数字をアピールすることは難しくなるからです。とはいえ軽減税率8%を足して「よりどり3品1058円」と言われてもピンときませんよね。
今回の総額表示では、税抜きと税込みの価格を併記することはできますが、税抜き価格をことさら目立させるのはNGのよう。現実的には「よりどり3品980円(税込み1058円)」という表示になりそうですが、これで私たちが「安い! お買い得!」と感じられるかは微妙ですね。
働き方も変わる! 2つの法律に注目
次は、働き方にまつわる変更です。「働き方改革関連法」の一環として、昨年「パートタイム・有期雇用労働法」が施行されました。
同一企業内において、正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間に基本給や賞与などについて不合理な待遇差を設けることが禁止されるのというもので、2021年の4月からは中小企業にも適用されます。
よく、同一労働同一賃金という言葉を聞きますね。職種や担当している仕事・責任の程度が正規社員と同じであれば、職務の内容は同じと判断されるようです。しかし、まったく同一待遇になるというよりも、同じ職務なのにパートだけに不合理な差がついているケースを是正し、納得して働き続けられるようにするもの。国は、どんなことが不合理・差別的な扱いに当たるかのガイドラインを示しています。
例えばパートだからという理由だけで通勤手当や時間外手当がない等の事例は不当になるでしょう。事業主は、パート等を雇い入れたときは、「昇給の有無」、「退職手当の有無」、「賞与の有無」、「相談窓口」を文書の交付などにより明示しなければならないとされ、違反の場合は 10 万円以下の過料と定めています。
また、パート側から正社員との待遇差について説明を求めた場合、事業者が応じる義務も設けられました。実際には、それぞれの現場に応じた運用がされると思われますが、パートとして働き始めても責任を持って長く働きたいと考えるなら、法律の趣旨に合った対応をしてくれる会社を選びたいですね。
さらに、70歳まで働けるようにする目的の「改正高齢者雇用安定法」も施行されます。現在は企業に対し、65歳までは雇用を確保する義務がありますが、さらに努力義務として70歳まで働く機会を与えてくださいというもの。定年引上げや継続雇用のほか、社員ではない立場での業務委託や、関連団体への社会貢献事業に従事させるなどの措置も含まれます。スタート時は努力義務ですが、いずれは義務化される可能性も。
様々な理由で非正規で働く人や、定年後も働きたいシニア層が増えていくという、現代の日本を象徴するような二つの法律ではないでしょうか。
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松崎のり子 Noriko Matsuzaki
消費経済ジャーナリスト
消費経済ジャーナリスト。雑誌編集者として20年以上、貯まる家計・貯まらない家計を取材。「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。
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