『BARNUM』で愛と夢を見せてくれる加藤和樹さん。日本のグレイテスト・ショーマンここにあり!【堀江純子のスタア☆劇場】
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堀江純子
2021.03.12
“堀江純子のスタア☆劇場”
VOL.8:加藤和樹さん
映画『グレイテスト・ショーマン』でも記憶に新しい、世界中の人々の心を鷲掴みにした、P.T.バーナム。ブロードウェイ、ロンドンで上演された舞台版、ミュージカル『BARNUM』が日本初演を迎え、現在、奇跡のCIRCUSと彼の人生を舞台上で繰り広げています。主演バーナムを務めるのは加藤和樹さん。バーナムの奇抜な衣装を纏い抜群のスタイルで、コレクションモデルのような出で立ちを見せ、麗しく美しい、愛すべきバーナムを作り上げています。そんな夢の世界を生み出したのは、摩訶不思議さ、ファンタジックな世界観を表現させたらピカイチと、私も長年大ファンな演出家の荻田浩一さん。そして、木下サーカスの特別協力を得て、魔法の世界と、洒落た衣装、歌、踊りが『BARNUM』には詰まっています。その魅惑の世界の真ん中に立つ加藤和樹さんに、お話を伺いました!
夢の根底にある人々を喜ばせたいという願い
──『BARNUM』日本初演、楽しみにしていました! バーナムは、夢を追いかける魅力的な男性でありながら、妻チャイリーの立場に寄り添って見ると、“いやいやちょっと待って!”って言いたくなる無茶が多いような(笑)。
「どちらかと言うと、“ちょっと待て”ってほうが多いですよね(笑)。けれども、バーナムには行動力があり、思想、考え方にも魅力を感じます。しかも、それを功績としてちゃんと残したところも。もちろん、すべてにおいて成功してきたわけじゃない。それでも常に前を向いて、諦めない姿勢に、チャイリーも“しょうがないな”と思ってくれる。チャイリーがバーナムを好きになった理由も、真っ直ぐ夢ややりたいことに向っていく彼の才能だったりするので。おそらく、男として見たら、ダメなんですよ(笑)。現代だったら、大半の女性はバーナムには付いていかないかもしれない。でも、夢を掴もうとしている瞬間って、男がいちばんキラキラしてると思うんですよね。それが決してラクな道ではないことをバーナム自身もわかっていて。夢の根底には、人々を喜ばせたい、楽しませたいという想いがあるから、彼は人間的に魅力的なんだと思います」
──苦労は多くても、心が満たされるような……。
「彼が遺した名言の中に、“至高の芸術は、人を幸せにすることだ”ってあるんですが、それは表現者としてものすごく感銘を受けたんですよね。彼の魅力はそのひと言に詰まってると思います」
──チャイリーの、夫の夢へと送り出す妻としての強さに同じ女性として心惹かれますが、加藤さん、女性にはやっぱり叶わないとリスペクトする瞬間は?
「女性は度胸ありますよね。あと、我慢強いなと。男って、これは無理だなって決めつけがちなところあるなって思うんですけど、女性は投げ出さず、女性こそ無理なこともやり遂げようとする…そういう印象はありますね」
本音を言い合える、信頼関係
──夫婦の諍いはあっても、バーナムとチャイリーには信じ合う心が。
「信頼関係って大事ですよね。そのためには、お互い本音を言い合える関係でないと信頼関係は成り立たない。チャイリーの場合は隠してもバレるんでしょうね(笑)。上っ面なだけの関係ではない…それがバーナム夫妻の魅力かと。今回描かれてないですけど、彼らってすごく若い時期に結婚してるんですよね。お嬢様育ちのチャイリーにバーナムがすごく惚れて惚れて結婚してるので、彼女を笑顔にしたい、楽しませたい、幸せにしたいって気持ちが強いんだと思います」
──チャイリー役は朝夏まなとさん。『ローマの休日』から続いての共演です。
「朝夏さんはものすごく真っ直ぐだし、まわりからの信頼も厚く…それって、彼女が振り撒く優しさ、飾り気のなさに寄るものだと思うんですよね。けれども、言うべきことははっきりと言う。そんな彼女にチャイリーはハマり役だと思っていて。もう、チャイリーにしか見えないですよ」
──役者同士、そういう信頼関係がある方とバーナムとチャイリーを演じることができるのは強みですね。
「ものすごく強みです。すごく頼りになります。『ローマの休日』でグッと距離感も縮まった気がしたところでの『BARNUM』で。お互い、表現者として、こういうことがやりたいんだな、こういうタイプなんだなってところを理解した上で、バーナムとチャイリーを演じられることはすごくいい方向に働くものになりました」
誰よりも、“彼”を理解して演じたい
──加藤さんは、ジョン・レノンや明智小五郎、最近ですと『ローマの休日』のジョー・ブラッドレー、『グレイテスト・ショーマン』であるバーナムと、すでに印象を強く持たれている有名すぎる人物を多く演じられていますが、喜びとプレッシャーはどういうバランスで?
「いつも、プレッシャーのほうがやや大きいような気もするんですけど、今回に関しては、あまりプレッシャーは感じてないですね。映画も今作もまったくの別物ではなく、P.T.バーナムというひとりの人物を描いていることに変わりはない。今回我々はさらに夫婦の関係性をより浮き彫りにした、そんな作品になってるので、親近感はもしかしたら、映画より感じてもらいやすいかもしれません」
──観客の心の中に共感など、何かを残していくお仕事って素敵ですよね。
「そう思います。だからこそ、演じているときは誰よりもその“彼”のことを理解していなきゃならない。役と出会えば、参考になるものをすべて見たり読んだりするようにしています。しかし、あくまでも参考文献や資料は参考まで。今回の『BARNUM』の中にしかいない生きているバーナムを演じる。そこに僕らのオリジナリティがあればいいなと思ってます」
──そのオリジナリティに魅せられたとき、私たちは一気にそれまでのイメージを塗り替えてしまうんですよね。そんな魔法を持つ、生の舞台の力って本当に素晴らしいと思います。
「そうですよね。ビートルズのときも、演じている僕自身も、本当にこのメンバーは存在するとしか、思えなかったですよ」
──バーナムのように、情熱的に何かにのめり込んだりすることはありますか? 昔、バラエティ番組で、ラーメン二郎のラーメンが好きなあまり、自ら研究して二郎ラーメンを作る加藤さんを拝見しましたが(笑)。
「ラーメンね。今も作ってますよ(笑)。僕にも、のめり込む…そういう要素はあり……ますね(笑)。でもいつもそうではなく、基本的にはビビリなので(笑)、石橋はよくよく叩いて渡るタイプです。たまに、叩かないでそのまま渡って大ケガしたりしますが(笑)。でも基本的には客観的に物事を見てよく考えます。マネージャーさんが、イケイケ!なときに、逆に僕が“いや、もうちょっと考えようよ!”って止めることもありますよ(笑)」
──なるほど。それは無茶するバーナムと違って、結婚相手として安心な男性ですね!
「おそらく、僕がチャイリーというか、支えるタイプになるんじゃないかな(笑)」
加藤和樹さんの魅力は、マンガから抜け出てきたような眉目秀麗さに目を奪われて、ついポーッと眺めてしまうのと同時に、男性のリアリティを感じさせる強さ! 哀しげな目、大きく笑う笑顔、男性的な厚みを感じる声…その多くの魅力は、芝居上の恋愛にリアルを味付けし、我々観客には、ときめきを残します。どんなタイプの役でも、“恋の相手はこんな相手であってほしい”と思わせる加藤さんが演じるバーナムは、客席の女性たちにもきっと“しょうがないな”と思わせてしまうことでしょう。
『BARNUM(バーナム)』現在絶賛公演中!
東京公演:3月6日~23日東京・東京芸術劇場 プレイハウス
兵庫公演:3月26日~28日兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
神奈川公演:4月2日神奈川・相模女子大学グリーンホール
Music by CY COLEMAN
Lyrics by MICHAEL STEWART
Book by MARK BRAMBLE
翻訳・訳詞 高橋亜子
演出 荻田浩一
出演 加藤和樹 朝夏まなと ・ 矢田悠祐 / フランク莉奈・綿引さやか(ダブルキャスト)/原義孝・内海啓貴(ダブルキャスト)/ 中尾ミエ 他
撮影/平郡政宏
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堀江純子 Junko Horie
ライター
東京生まれ、東京育ち。6歳で宝塚歌劇を、7歳でバレエ初観劇。エンタメを愛し味わう礎は『コーラスライン』のザックの言葉と大浦みずきさん。『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』『エリザベート』『モーツァルト!』観劇は日本初演からのライフワーク。執筆はエンターテイメント全般。音楽、ドラマ、映画、演劇、ミュージカル、歌舞伎などのスタアインタビューは年間100本を優に超える。