『子どもを守る言葉「同意」って何?』著者レイチェル・ブライアンさん特別インタビュー
【「同意」も「性的同意」も基本は同じ! 被害や加害を防ぐのに役立つ】話題の絵本『子どもを守る言葉「同意」って何? 』作者にインタビュー【後編】
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LEE編集部
2021.02.23
性的なことは一切出てこないこの本が、「性教育」にも役立つ! と、口コミで人気なわけ
この本には性的なことは書いてありません。でも、同意を求める・求められる時の、大切なルールは同じ
「子どもが友だちといい関係を作れるようになる」「性的な要素が出てこないのに性教育になる」と人気沸騰の絵本、『子どもを守る言葉「同意」って何?』。
その著者・レイチェル・ブライアンさんへのインタビュー(インタビュアー/本書翻訳家・中井はるの)が実現しました。
●レイチェル・ブライアンさんインタビュー 第1回
【学校で我が子が突然キスされた! 】性教育&人間関係の基本がわかると話題の絵本『子どもを守る言葉「同意」って何? 』作者にインタビュー【前編】
ご本人登場の動画つきでお送りする全2回。後編は、作者レイチェルさんが、この本を通じて伝えたいことを、語ってくださいました。
『子どもを守る言葉「同意」って何? 』作者レイチェル・ブライアンさんインタビュー【後編】
レイチェル・ブライアンさん 著
「子どもを守る言葉『同意』って何?」
自分のからだのことを決めるのは自分
だから「NO」と言っていいし、「気が変わってもいい」
いったん決めたことでも「気が変わっていい」&何かに同意したら他のことにも同意した、なんてことはない。それを覚えておいてほしいんです
「誰かに誘われて『それ、やってみたい!』と思ったとしても、始めてみたら『やっぱりイヤだな』ってこと、よくあります。そんな時はやめていいんです。それもあなたの権利ですから」
レイチェルさんはそう語ります。確かに、この本には何かをすると言っても、している途中でも、「気が変わっていい」ことがしっかり描かれています。
「気が変わってもいいんだよ」という考え方の前提は、実はこの本の一番最初に書かれています。
それは、「自分」という国の「王」は、自分。だから、この国=自分のからだのことを決めるのは、自分なんだ、ということが大前提です。
誰もが自分の「からだの自己決定権」を持っている
『自分のからだのことは自分が決める』
これは、「からだの自己決定権」と呼ばれていて、人なら誰もが生きているだけで持っている権利です。
「誰であっても、その人自身のからだに関わることは自分で決めることができる」。それって、よく考えてみればあたりまえなことですね。その時、その人の「イヤ」「やめる」を無視してはいけないのも当然です。つまり「人のからだのことは、その人が決めるもの。本人以外が決めてはいけない」というのと同じことだからです。
でも、人はとかく「約束は大事」「一度言ったら変えないで」と言いがちです。「やっぱりやめる」、と言ったら、怒る人もいるかもしれません。確かにやめると言ったことでのトラブルもあるでしょう。確かに、期待した相手が不服に思うのも仕方がないとも言えます。それにもこの本で触れられていますが、やっぱり結論は同じ。
「でも、キミが決めていいんだよ」(キミの「王」はキミだからね!)
「ひとつのことに同意したら、他のことにも同意したと同じ」なんてことはない
レイチェルさんは言います。
「例えば、ティーンや大人になって、デートにOKしたからって、それですべてのことに『同意』したわけではないですよね。
セックスにしても同じ。一度同意したとしても、途中でイヤだと思ったらずっとしなくてはならない義務はないんです。この本ではセクシュアルなことについては語っていませんが、同意についての考え方は大人になっても同じです」
一度何かにOKしたら、それならアレもコレもと、どんどん先に進めようとされて困ることって確かにあります。(詐欺や押し売りなどの手口にもありそう!)。
でも、ひとつのことに同意したからって、他のことにまで同意したわけではないのですから、「断っていいんだ」と聞くと、気持ちが楽になります。
迷いに迷ってとりあえず「同意」してはみたものの、「やっぱりイヤ」ってこともありがちです。そんな時だって、自分がイヤなら途中でもやめていい。からだに関わること、特に性的なことならなおさら大事です。
だからこそ、小さな頃から日常的にそうしたやりとりをして育つことは、とても大切。
大人は、子どもの「イヤ」「やめる」を、尊重してあげたいし、大人たちも「自分のからだのことは自分が決める」(人のからだのことはその人が決める)ということを実践していきたいもの。そうして理解できると、その思いはきっと子どもたちに伝わるでしょう。
キッパリとした「同意」でなければ「本当の同意」ではない
誰だって「ノー」と言えないことがある。だから、「尊重」しあうことが大事。キッパリとした「同意」でなければ「同意」と認めるべきではないんです
ただ、率直に「イヤ」とか「やめます」と、ハッキリ言うのは難しい、ということもあります。特に日本の文化ではハッキリ「いや」と言いにくい現実もありますが…。
「アメリカだってそうです。ハッキリものを言うと『攻撃的だ』って言われたりしますし。私自身だって『ノー』って言えなくて困ってるくらいですから(笑)」とレイチェルさん、意外な告白!
「ノー」と言えない事情はさまざまです。言ったら相手を怒らせるかも、と怖くて言えない場合もあるし、状況によってはノーと言うと仕事を失うかも?この町に居にくくなる…など、相手との関係性や社会の状況などで「ノー」と言えない場合もありがち。
黙っていたり、たとえ口では「いいよ」と言っても、オドオドしていたり、不安そうだったり、顔を背けていたりしていたら、「それは『本当の同意』ではありません。そういう時は同意していないんです」とレイチェルさん。
大切なのはお互いの意思と権利を尊重し合うこと
「だから、この本では『自分の気持ちをハッキリ言おう』というだけでなく、『相手の気持ちをちゃんと聞こう』ということも書いています。そして、しっかりと覚えておいてほしいのは、誰であれ『アクションを起こす側』が相手の同意(=ハッキリとしたイエス)を確認するべきだ、ということです。
ちゃんと相手の気持ちを確かめ、受け止めて、その人のことを『自分のからだのことを自分で決める権利を持った存在だ』、として向き合うことが大切なんです。
なぜなら、問題が起こるのはほとんどの場合、相手が『ノー』と言っていても、相手の本心は『ノー』だと察していても、それを無視して相手を自分の好きなようにしようとする人がいるからなので」
いじめや虐待、性暴力などの被害や加害…。あらゆる深刻なトラブルは、一方が相手や、相手の「同意」を尊重しないことから起こりえます。
だから、大切な子どもたちを被害者にさせないだけでなく加害者にもならないようにするためには、日頃からお互いの意思と権利を尊重し合うことが大切なのだということを、レイチェルさんのお話から、あらためて感じました。
レイチェルさんからLEE読者へのメッセージ
最後に、レイチェルさんに、読者へのメッセージをうかがいました。
「私の本を楽しんで、勇気が出る本だと思ってもらえたら嬉しいです。
『からだも心も、自分のことは自分がコントロールできるんだ』ということを、本を通じて子どもたちに伝えていきたいですね。そして、人との関係で『自分ってどうしたらいいんだろう?』と迷った時には、こんな言葉を思い出して、励ましにしてほしいのです。
『自分のままでいたら? ホントの自分のままでいていいんだよ』って」
さらに、インタビュー動画では、「この本に登場する子どもたちの個性がさまざまなわけ」など、より深くお話ししてくださっています。ぜひご覧ください!
● PROFILE レイチェル・ブライアン
米国有数の有名大学、ブラウン大で、生物学を学び、同大学院で教育心理学を学んで教職につく。他に生物学の研究もしていたが、同時に生来のアーティスト心が高まって、自らのスタジオを設立。教育関係などの動画を作成。
「同意」にまつわる数々の動画で人気を博す。2女、1男の3人の子どもと犬と、米国東海岸に暮らす。
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