舞台の制作過程を映画化した『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』で、両方の“いいとこ取り”を満喫して!
2020.11.13
『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』
“愛に殉ずる男”の戯曲誕生の陰に、秘めたる恋と笑いと感動あり!
久しぶりに“コスチュームもの”と呼ばれるクラシカルな時代を舞台にした、エレガントでウィットに富んだ映画が登場した。しかもとってもロマンティック! 世界中で愛され続ける舞台劇「シラノ・ド・ベルジュラック」の誕生秘話を描いた本作は、“本当にあの名作が、こんなふうに生まれたの!?”と驚くようなエピソードがたっぷり。
完成した戯曲――詩人で剣豪のシラノ(17世紀フランスに実在の人物)は、ひそかに思う従妹から自分の友人への恋心を打ち明けられ、友人のフリをして彼女にラブレターを書くが――と響き合う展開も楽しい。さぁ、劇場に足を運ぶような高揚感で、名作誕生の瞬間を目撃しよう!
29歳、崖っぷちの劇作家エドモン・ロスタンは、友人の女優サラ・ベルナールの紹介で、名優コクラン主演の舞台を執筆する機会を得る。ところが初日までたった3週間。構想はゼロ。そんなとき、舞台の衣装係に思いを寄せる親友のラブレターにアドバイスしたことで、アイデアがひらめく。そこから構想を広げたいエドモンは、親友になりすましてラブレターを書き続け、台本も着々と完成に向かっていく。ところが各所から俳優をゴリ押しされるわ、おバカな親友とラブレターの内容にギャップがありすぎるわ、エドモンの嫉妬深い妻まで入り乱れ、大騒動が勃発。果たして無事に舞台の幕は開くのか――。
執筆中のエドモンの悪戦苦闘が、戯曲に反映されたり反転されたりしながら、あんな切ない“永遠の愛に殉ずる男”の物語になったとは。
舞台の制作過程を映画化した本作は、さながら舞台空間と映画空間を自在に行き来するような、双方の魅力を“いいとこ取り”した実に贅沢な味わい。恋のさや当てゲームに噴き出しながら、終盤は芸術家や芸術を愛する者たちの情熱や心意気がスパークし、思わず感無量の境地で目頭が熱くなる。逆境をはねのけようとする彼らのパワーが、今の時代を生きる私たちに、元気と爽快感を吹き込んでくれる逸品だ。(11月13日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー)
『エイブのキッチンストーリー』
多様性が求められる今こそ観たい心温まる家族ドラマ
エイブはブルックリン生まれの12歳。両親の仲は良好だが、イスラエル系の母とパレスチナ系の父の、親族同士が事あるごとに対立するのが悩みの種。夏休みを利用し、フュージョン料理のブラジル人シェフに秘密で弟子入りしたエイブは、料理を介して親族の仲を取り持とうとするが……。
『ストレンジャー・シングス』主演ノア・シュナップ君が演じるエイブが初々しく可愛く、お料理も魅力満載!(11月20日より新宿シネマカリテほか全国ロードショー)
※公開につきましては、各作品の公式サイトをご参照ください。
取材・原文/折田千鶴子
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