ジェンダーレス時代に、男の子ママなら一度は考えること
タイムラインで一冊の書籍紹介が流れてきました。
『これからの男の子たちへ 「男らしさ」から自由になるためのレッスン』
神奈川で弁護士として活躍されている太田啓子さんの著書です。
もちろん、男児2人の母である私は瞬時に反応し、即反応しました。
これまで、「性別じゃない」「長男とかお兄ちゃんとか関係ない」そう思っていながらも、長男がべそべそした時(男の子がいつまでも泣くんじゃない!)と内心イライラしている自分に、幾度となく出会ってきましたから…。頭で理解している部分と、瞬発的に出てしまう染みついた部分と、自分の中でのねじれが生じています。しかし、自分の中での良い答えが見つからぬまま、問題を先送りにしてきました。しかし、これからのジェンダー平等時代に向けて、どう向き合っていけば?
発売前から話題の『これからの男の子たちへ』とは
同じ様な思いの方が多かったのでしょう。アマゾンでは発売前から「ジェンダー部門」で1位、総合でも36位を取得しSNSでも大変話題になりました。内容としては、男の子に日常的にかけられる「男らしさ」の呪いや、性教育のみならず、セクハラや性暴力をどう伝えるか。そして、これからの時代の男子はどう生きていけば…。これらの問題提起が、学術的な答えではなく、太田さん自身が親として日々考え、試行錯誤しながら取り組んでいる目線が非常にリアルで、勉強になりました。男の子を子育てしている母親のみならず、当事者である男子、男性たちまでが考え直すきっかけになる本だと思います。
この著書の発売記念で、ジェンダーや政治・憲法などのウェブ媒体マガジン9主催のウェビナーが開催されましたので、その時の様子を少しお伝えします。
男の子を育てる母として、ジェンダーに関する本が欲しい
まず、太田さんは弁護士として女性からの離婚相談案件が非常に多く、夫婦間のモラハラやDVなど、トラブルに潜む性差別的な考え方を数多く目の当たりにしてきました。また、ここ5年ぐらいの間で、”ふつうの若者” による集団性犯罪が社会的にも大きな問題になり、「こうした問題を起こしてしまう男性の性差別的な考え方は、一体、どこからきているのか」と、問題意識を持つようになったそうです。
ご自身が2人の男子を育てる母としても、日頃から意識的に性差別のない子育てを実践されてきました。それでも、様々なメディアが発する情報から「間違ったジェンダーバイアスを刷り込まれてしまう」と危機感を覚えるように。そんな中「男の子を育てる上で、ジェンダーに関する本が欲しい。なんなら自分で書く!」と数年前にSNSに投稿すると、編集者の目に止まり、今回の出版につながったとか。
それにしても、社会問題と日常の中の違和感を地続きで捉え、そのモヤモヤを「自分で解決してしまおう!」と執筆を始める、この熱量が素晴らしいですよね。ご本人曰く、「初めて自分の名前で本を出すのに、法律の本じゃないなんて、思ってもみませんでした」だったそうですが、これだけ話題になるということは、多くの人が今一番、気になっていたテーマだったのでしょう。では具体的に、どのように捉えれば良いのでしょうか。
「男らしさ」にも、良い面と悪い面があるということ
太田さんが男の子を育てる上で、とにかく大事にしている考え方はこの2点だそう。
①「男らしさ」の呪いから自由に生きて欲しい
②男性というマジョリティとしての特権を持っている事を自覚し、
マジョリティとして性差別・性暴力に積極的に抗って欲しい
①の「男らしさの呪い」確かにありますね…。「勇敢で、強くてたくましい」そんな男性像ばかりが理想とされ、社会に押し付けられてしまうと、そうではない気質の男の子は自分のことを否定的に捉えるかもしれません。また、痛みや恐怖、泣きたい気持ちがあった時にも「男の子でしょ!」と周囲が一掃してしまう事で、次第に自分の感情にも気づけなくなってしまうかもしれません。男らしさを強要されたことで、他者に対しても競争結果でしか評価できず、女性のことも対等に見られない。離婚事案などでみてきた男性たちには、こういう抑圧が強かったのかも…。もちろん、皆がそうではありませんが、社会があまりにも一律に「男らしさ」を肯定し続けた結果、負の一面があることを見ないできてしまったのでしょう。そこから解放されることがまず大切ですね。
②の「マジョリティとして性差別・性暴力に積極的に抗って欲しい」これは実際に今、ジェンダー格差が問題視されるときに、なぜか女性の問題にされがちで、男性の問題になっていない、と言うジレンマがいつもあります。もちろん、ジェンダー格差によって悪影響があるのは女性ですが、そこは男性にも物申して欲しい、と言う太田さんの想いが込められているのです。その期待を子どもたちの世代に。だからこそ、今の男の子の育て方が重要になってくるのですね!
男の子の子育てる上で感じる”三大問題”とは
著書にもあり、私自身も大いに反省した部分なのですが、男の子を育てる中で、大人の言動として「有害な男らしさ」のインストールになりかねない、あるある問題が3つあるそうです。
●「男子ってバカだよね」問題
→バカな言動をしたところで「男子あるある」というより「子どもあるある」なのでは?また、男子がバカというよりは、それを許容してしまっている大人・社会がある。
●カンチョー放置問題
→兄弟間でも、自分の大切なプライベートゾーンを冗談や遊びにしてはいけない。
●意地悪は好意の裏返し問題
→相手への好意があろうとなかろうと、いけないことはいけないし、相手が嫌がることをするのは、表現方法として歪んでいる。
まさに、”男子あるある”です。しかも、周囲が軽く笑って流してしまっている時点で、「有害な男らしさ」をインストールしてしまっていたなんて…!自分の中にある、甘さを省みる結果になりました。これは、ぜひ本にも詳しく書かれているので、ドキッとされた方はぜひご一読を。。。
自分も家族も、そして社会全体でアップデートしていかなければならない
太田さんの講演の後、参加者から質問コーナーがありましたが、その出てくる内容の辛辣なこと…!おそらく、このウェビナーに参加している方々は、もともとジェンダーに関しても問題意識が高く、それが故、周囲との関係性やギャップについて悩んでいる印象でした。
ママ同士でも温度差はすごくあり、夫婦間、親族間でも違います。性別や年齢にかかわらず、性差別自体に鈍感な人も多くいるでしょうし、気づいていながらも黙ってやり過ごしているサイレント・マジョリティも多数いることでしょう。やはり社会全体でアップデートしていかなければならない課題なのですが、まだまだ日本は入り口に立ったばかり。もう一度読み返し、自分自身がもっと勉強しなければならないな、と痛感。
ジェンダーについて話し合ったことのない夫にも聞いてみました。「男らしさ、で苦しかったことある?」まず「…。考えた事もなかった。」と困惑し『有害な男らしさ』についてあれこれ説明すると、「あー、なるほどね、親父にはよく『男が泣くな!』って言われて育ったよ(苦笑)。それがあるから、頑張れる事もたくさんあるけど…、逃げられる勇気があったらいいな、と思ったこともあるかな」と、興味深い回答。夫にも是非、この本を読んで感想を聞いてみたいし、夫婦間で考えをシェアするのもきっかけにもなりそうです。
次回は太田啓子さんご本人にインタビューすることができましたので、直接、お話しを伺った時の様子をお伝えいたします。お楽しみに!
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飯田りえ Rie Iida
ライター
1978年、兵庫県生まれ。女性誌&MOOK編集者を経て上京後、フリーランスに。雑誌・WEBなどで子育てや教育、食や旅などのテーマを中心に編執筆を手がける。「幼少期はとことん家族で遊ぶ!」を信条に、夫とボーイズ2人とアクティブに過ごす日々。