韓国でエンタメ度も社会性も120点の名作がどんどん生まれるのはなぜ?韓流エンタメライターに聞く!
2020.10.10 更新日:2020.10.30
『愛の不時着』にハマったら、観てほしい作品がもっとある!
LEE11月号では、名作がひしめく韓国エンタメを面白さはもちろん、「女性の生き方」「社会性」を踏まえてセレクト。
今回は、韓流エンタメ歴20年以上のライター安部裕子さんに、名作が生まれる循環、オススメ作品4選をうかがいました!
ライター安部裕子さん
「All About」韓国ドラマガイド、韓国エンターテインメントライター。’97年頃より韓流ドラマについてブログで綴り始め、執筆の仕事が舞い込むように。ドラマロケ地ツアーのコーディネートも。
潤沢な資金、おもしろい脚本、スター俳優が、いい循環で回っている
今、日本で『愛の不時着』ロス、『梨泰院クラス』ロスで悩める人が続出中です。意を決して探し始めると、あるわあるわ、おもしろい作品が……。現在の韓国エンタメ業界は、なぜこんなハイレベルな作品を連発できるのでしょうか。
「ステイホームもあってのNetflix人気で、それまで韓国ドラマを観てこなかった層を取り込み、日本で第四次ブームが起きました。
もともと、映画に対する国のサポートは厚いですが、最近は『パラサイト』にも出資した財閥系企業CJの子会社“スタジオドラゴン”のパワーが圧倒的です。
『ザ・キング:永遠の君主』のキム・ウンスク、『愛の不時着』のパク・ジウンなど、いい脚本家が集まり、彼女たちが書けば出演を熱望するスターが集まり、製作費も集まる。しかも国内のマーケットが小さい分、早くから外に目を向けてきたので、世界からの資金調達もうまい。
莫大な製作費をかけ、素晴らしいクリエイターのもと続々と良作を生み出す、いい循環にあるのです」(ライター安部裕子さん)
大ヒット映画の中に、社会派映画が多いこと、その多様性に驚かされます。
例えば格差社会を描いた『パラサイト』は、社会性と娯楽性のバランスの絶妙さにうならされます。人気俳優コン・ユが映画化を望み、自ら主演した『トガニ』は、実際に聴覚障害者学校で起きた性的虐待事件を描き、非常にシリアスな内容ながら大ヒット、社会を動かしました。
「韓国では“映画は芸術”であり、俳優は映画に出てこそ真の成功と見なす傾向があるので、社会派映画を志向する俳優が多いんです。
また日本では多方面に気を使うため実録映画が作りにくいですが、韓国は社会で起きたことをなしにせず世に知らしめよう、という意識がより強く働くようです。
社会の恥部すらおもしろく仕上げ、興行につなげていく。商魂たくましいエンタメ精神の賜物ですね(笑)」(ライター安部裕子さん)
力のある脚本家や俳優の層の厚さにも、理由がありそうです。
「チームで脚本を作り、やがて弟子たちが独立していく、作家を育てるシステムがうまく機能しています。
韓国ドラマは1話80分程度の16話完結という長さなので、ラブ+ファンタジー+サスペンスなど、3つ以上の要素を盛り込むのが主流で(笑)。
一方、多くの大学に演劇学科があるので、エンタメ界を目指す人は、最低限の演技法を習得している。しかも韓国エンタメは評価の目が厳しい。“演技ドル”と呼ばれる、演技力がズバ抜けたアイドルが活躍していますが、彼らも本格的に演技を学んだ人たちと対等でないと認められないのです」(ライター安部裕子さん)
映画のみならずドラマでも、さまざまな諸問題が差し込まれ、社会に問いかけようとする意欲作が多いことは周知のとおりです。
「例えば『梨泰院クラス』では、前科者の主人公、元ヤクザ、トランスジェンダー、外国人など差別を受ける側の人たちが奮闘します。
韓国は熾烈な学歴社会なので、一つ道を外れてしまうと成功の術がかなり狭まる。そんな中、前科者でも自分で道を切り開いた人はリスペクトされるべき、ホワイトカラーだけが成功者ではない、という価値観の多様化を示しました。
『愛の不時着』の、恵まれた環境のヒロインが愛の原点に戻るのは、通信網も満足にない物の乏しい状況下だった、というのも響く。これからも良作が続くと思いますよ」(ライター安部裕子さん)
韓流エンタメ歴20年以上のライター安部裕子さんに、「これが面白い!」一押し韓国ドラマ・映画を教えてもらいました!
孤立しがちなシングルマザーの奮闘を描く
『椿の花咲く頃』
’19年に韓国で地上波最高視聴率を記録! 小さな漁村にやってきて、バーを開く若きシングルマザー(コン・ヒョジン)の人生を映し出す。
「偏見と闘うヒロイン、村の人々との和解や交流、彼女に片思いする地元警官。そこにヒロインがかつて遭遇した殺人事件が絡み、ラブとサスペンスと人情ドラマ、なんと3つの要素が盛り込まれている(笑)。最後まで謎から目が離せない、本当におもしろくて、いいドラマでした!」(ライター安部裕子さん)
警察官の日常をリアルに映す
『ライブ~君こそが生きる理由~』
熾烈な競争を経て警察学校を卒業するも、最も忙しい派出所に配属された大卒女子の日常を映す。
「派出所のトイレ掃除から、命を危険にさらされる大事件まで。昼夜問わず駆け回る警察官の日常が、すごいリアリティで迫ってきて、ただリスペクトせずにいられません」(ライター安部裕子さん)
DVD-BOX 1&2 ¥15000 好評発売中 発売元:博報堂DYミュージック&ピクチャーズ/クロックワークス 販売元:TCエンタテインメント
人のつながりに癒される
『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』
『コーヒープリンス1 号店』のイ・ソンギュンと"演技ドル"トップのIU主演。
「ある男を陥れるため、送り込まれた借金を抱えた派遣女子と、標的のおじさんの交流。1 話目はとにかく暗い。でもそこで挫折せず、ぜひ頑張って見続けてほしいです。破格の感動が待っています!」(ライター安部裕子さん)
提供:コンテンツセブン/
冤罪を晴らす奇跡の寓話
『7番房の奇跡』
冤罪で逮捕された6 歳の心を持つ知的障害の父親(リュ・スンリョン)と、6歳の娘との深い絆が、少しずつ周囲を変え、奇跡を起こしていく。「裁判に対する問題提起をしつつ、ファンタジー色が濃く見やすい作品。心温まる、大好きな映画です」(ライター安部裕子さん)
DVD ¥3800 発売元:ミッドシップ 販売元:TCエンタテインメント
撮影/細谷悠美 取材・原文/折田千鶴子
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