シングルマザーの貧困問題が深刻化する昨今。
離婚でひとり親になった女性の相談窓口を運営する赤石千衣子さんに、シングルマザーの現状や問題点を教えてもらいました。
この記事は2020年7月7日発売LEE8月号の再掲載です。アンケート実施:2020年3月11~18日まで。LEEweb会員455人が回答。
しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長の赤石千衣子さんインタビュー
離婚後の蓄えは?シングルマザー、お金の落とし穴
しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長
赤石千衣子さん
1980年に発足し、シングルマザー親子のサポートを行う団体「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の理事長。社会福祉士、キャリアコンサルタントの資格を持ち、シングルマザーの就業相談や支援を行う。著書に『ひとり親家庭』(岩波新書)など。
読者に聞く「離婚とお金」
今現在、離婚をしたらひとりで生活していけると思いますか?
正規雇用、パートなど含めて7割は仕事を持つLEE読者。それでも半数以上はひとりで生計を立てるのは難しいと判断。
専業主婦は「結婚後は一度も働いておらず、30代で資格もない。正規雇用の仕事は見つかりにくいと思う」という声が圧倒的。
共働きでも「子ども3人を育てるには将来の教育費が心配」「ひとり親だと残業もしにくく働きづらい」「最低限の生活だけでなく子どもに希望する教育を受けさせたい」との声も。
パート就労の月収は約10万円。生活費・教育費をどうまかなう?
長年、シングルマザーの支援を行ってきた赤石千衣子さん。相談件数は年々増えていると言います。
「シングルマザーの約8割が離婚でひとり親になっています。主婦の約60%が結婚、出産で仕事を辞めてしまうので、いざ離婚をするとなると経済的に立ち行かなくなる。
子どもがいる30〜40代は、時間の制約、仕事へのブランクでパート就労が多いので、都市部でも月収は10万円ほど。地方では10万円に届かない人も多く、パート就労の平均年収は133万円。
これでは、教育費も出せないし、いろいろな面で困ります。なんとかして正規雇用などで就労収入を上げることが急務。子どもが小さいと両立も大変ですが、1年待つだけで仕事を探しやすくなることも」
「また、今の日本社会は男女の賃金格差が大きいので、児童扶養手当などの公的支援の充実も必要だと考えます」(しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長 赤石千衣子さん)
資格の取得など、ひとり親家庭への支援も
「高等職業訓練促進給付金制度は、看護師、保育士、介護福祉士などの資格を学校に通って取得する場合、その間の生活費を援助。
住民税の非課税世帯だと、月約10万円、住民税課税世帯だと約7万円と十分ではないものの、3年間通えばかなりの金額に。
自治体で、母子・父子自立支援員さんに相談すると詳細を聞けるので、人ごとと思わずに検討してみてほしいですね。
また、簿記、医療事務、パソコンの講習など、教育訓練給付金の指定講座を受けると、受講料の約6割が戻る制度もあります」(しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長 赤石千衣子さん)
シングルマザーの貧困問題では、養育費の受け取り率の低さが大きな問題に
●養育費の受け取り率
取り決め率も全離婚の約半数ながら、受け取り率はさらに約半分の24.3%。これまでは取り立てることも難しく厳しい現実が明らかに。
<平成28年国民生活基礎調査、平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果より>
「離婚をしたら養育費が当たり前にもらえると思う方も多いのですが、取り決め率が42・9%、受け取り率は24・3%とかなり低い数字です。
取り立てしようにも、そもそも離婚時に、調停証書、公正証書、判決など“債務名義”と呼ばれる書面にしていることが少ない。
書面がないと強制執行ができず、また書面があっても、相手の住所や勤務先がわからなくなると差し押さえができないんです」
「ただこちらは、2020年4月から改正民事執行法が施行されて、養育費を支払うべき元夫の預金口座の情報開示を、金融機関に義務づけることができるように。年金機構や市町村が、健康保険や年金の情報から勤務先を開示できることも。
どれぐらい実現が可能かはまだわからないのですが、制度も少しずつ、シングルマザーを守るものに変わってきています」(しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長 赤石千衣子さん)
情報を手に入れつつ、周りにも頼って
シングルマザーとして生計を立てていくためには、こういった新しい情報も取り入れながら、恥ずかしがらずに周りに頼ることだと赤石さんは言います。
「ひとりで抱え込もうとするほど、どんどん大変な状況に陥ってしまう気がします。誰にも相談できず、ネット検索で不安要素を見つけては一喜一憂して、私たちに連絡してくるケースも。できれば同じような立場の方と出会える場所に顔を出してみて。
私たちもシンママカフェをオンラインも含め提供していますが、自分と同じような体験談や、つらい状況を抜け出して少し先を行く先輩の話が参考になると思います」(しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長 赤石千衣子さん)
悩んだときはどうすれば?シングルマザーの相談先リスト
NPO法人 しんぐるまざあず・ふぉーらむ
https://www.single-mama.com/
☎︎ 03・3239・6582
相談の受付はもちろん、食糧支援、学習支援、ママ同士の交流会などさまざまな支援活動を行う。
東京都 ひとり親家庭支援センター はあと
http://www.haat.or.jp/
☎︎ 03・5261・8687(生活)
☎︎ 03・3263・3451(就労)
生活相談、養育費相談、離婚前後の法律相談、面会交流支援などを行う。就労支援は、ひとり親家庭支援センター はあと飯田橋まで。
日本司法支援センター 法テラス
https://www.houterasu.or.jp/
☎︎ 0570・078374
法テラスの利用方法や法的トラブルの解決に役立つ情報を電話やメールで問い合わせできる。経済的に余裕のない方には無料法律相談や、弁護士・司法書士に依頼する費用の立替(分割払い)制度も。
イラストレーション/朝倉千夏 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
この記事は2020年5月7日発売LEE6・7月合併号『知っておいて損はなし!離婚の経済学』の再掲載です。
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