『ジョーンの秘密』
女性スパイを突き動かしたもの、秘められし悲恋と正義感
007シリーズでジェームズ・ボンドの上司“M”役で知られるジュディ・デンチが、今度はなんと実在のスパイに! 映画『マリーゴールド・ホテル』シリーズにも主演し、ご高齢にして日本での人気も非常に高い名女優が、本作では世界中がミレニアムにわいていた’00年のイギリスを震撼させる。
なんと弁護士の息子を持ち、穏やかに暮らしていた80代の女性が、“核時代最後のスパイ”として逮捕されたのだ! なにゆえ彼女はソ連に核開発の機密を漏らしたのか、その数奇な人生とは――。
そこには、日本の悲劇的な歴史も大いに関係していた!
夫に先立たれ、イギリス郊外で一人暮らしを送るジョーン(デンチ)は、亡き外務事務次官ミッチェル卿とともにKGB とかかわっていたとして、突然MI5に逮捕される。弁護士の息子は何かの間違いだと断固、反論するが……。時はさかのぼり’38年、ケンブリッジ大学で物理学を学んでいたジョーン(ソフィー・クックソン)は、寮で知り合ったユダヤ系ロシア人ソニアに誘われ、参加した共産主義の会合で英国貴族の子息ミッチェルやソニアの従弟レオに出会う。そして会合でもカリスマを放つ情熱的なレオに、たちまち惹かれていく――。
女性の活躍などあり得なかった時代、優秀な彼女が核兵器開発機関に入り、機密任務に参加することになるとは、なんという運命の皮肉! だがレオやミッチェルに頼まれても、情報提供はキッパリ断り続ける。そんなジョーンを突き動かしたものとは?
硬派なスパイ映画というより、レオとの恋の顛末、開発機関で惹かれ合う上司との不倫、また母親の過去を何も知らなかった息子との関係をじっくり描き出す。波瀾万丈なジョーンの人生は、驚きの連続! どこまでが真実か脚色かの判断は難しいが、祖国を裏切ることになっても彼女が守ろうとしたもの、その価値観や正義感、後に歴史が示したものや彼女の行動の是非を考えると――特に被爆国の日本人としては、動悸を速めずにいられない。(TOHOシネマズ シャンテほかにて8月7日より公開)
『ファヒム パリが見た奇跡』
天才少年の成長、親子愛、師弟愛、仲間との絆に感動!
バングラデシュで天才チェス少年として有名だったファヒムが、8歳のとき父とパリに政治難民として逃れ、チャンピオンを目指す実話の映画化。
強制送還におびえながら、チェス教室のコーチや仲間と絆を育む展開がユーモラスで心温まる。一方、制度や偏見の壁に憤り熱くなる。チェスの内容がわからずともスリリングに感じられるのもうまい。コーチに名優ジェラール・ドパルデュー。(8月14日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開)
■『ファヒム パリが見た奇跡』公式サイト
※公開につきましては、各作品の公式サイトをご参照ください。
取材・原文/折田千鶴子
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