数々のヒット小説を世に生み出し、30〜40代女性にとってもなじみの深い小説家・伊坂幸太郎さん。今回は、ミュージシャン坂本美雨さんにその魅力を語っていただきました!
“絶対的な愛を信じている”
作風に共感を覚えています
伊坂さんの小説を初めて読んだのは20代前半の頃でした。デビュー作の『オーデュボンの祈り』から10作ぐらいまで一気に追いかけながら読み続け、今に至ります。
そしてどの作品にも一貫したテーマがあると思っていて。それは「論理でもなんでもない、絶対的な強い愛を信じている」「愛によって物事が動く」こと。私の中では伊坂さんの小説って「愛の物語」なんです。そして、そこが大好きなところです。
最新作の中では『逆ワシントン』に登場する、主人公のお母さんが“愛ある人”として印象に残りました。お母さんが自分の信じることに対して、周りの目を気にせずに堂々と言い放つ場面があるのですが、伊坂さんの小説らしいキャラだなあと。そして私も彼女みたいに、世の中の理不尽さに対して、いきなり情熱的になる部分があるので共感しつつ。このお母さんみたいに、チャーミングに怒りや憤りを表現できたら、さらに最高だなあって思いました(笑)。
子育て中の身としては、私も今作で描かれる“自分の正義を貫く”のを大事にしています。娘には自分の生き方をダメな部分も含めて赤裸々に見せていると思います。「ママはこう思う」「正解ではないのかもしれないけど、ママはこう考えてる」「でも決めるのはあなただよ」って。うまく伝わっているかはわからないですが(笑)、自分を思い返すと、親が自信を持って示す正義って、たとえそれが独特でも(笑)鮮明に覚えていますからね。
愛と正義に生きる人が伊坂さんの小説にはたくさん登場するし、そこはこれからも変わらないでいてほしいです。そして人の心の動きを、細やかに言葉にし続けてくださったらなあと。その細やかさは音楽では難しい表現方法だと思うし、私が小説を書く方に、憧れている部分なんです。
坂本さんのおすすめ
『終末のフール』
ややリアルな設定と
読みやすさならコレ
小惑星の衝突により滅亡が予告された地球。その日がやってくるまでの、つかの間の平和の中で人生を見つめ直す人たちの姿を、仙台を舞台にして描いた短編集。「いろんな話がどこかでつながっているのに、読みやすい。“地球の終わり”という設定も、今はリアルに感じられます」
詳しい内容は2020年LEE8月号(7/7発売)に掲載中です。
取材・原文/石井絵里
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