知らず知らずのうちに「男とはこうあるべき」「女とはこうあるべき」という先入観を持ち、それを子どもに押し付けたらどうなるのか……?
ジェンダー問題に詳しい治部れんげさんと、男性学を専門とする田中俊之さん。専門家の視点、親としての視点から、ジェンダー教育とこれからの子育てについて語っていただきました!
この記事は2020年1月7日発売LEE2月号の再掲載です。
田中俊之さん 大正大学心理社会学部准教授。男性学の立場から、日本で"男性"と"働くこと"の結びつきがあまりに強いことに警鐘を鳴らす。『男子が10代のうちに考えておきたいこと』(岩波書店)など著書多数。2児の父。 |
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治部れんげさん フリージャーナリスト。ジェンダーに詳しく、東京都男女平等参画審議会委員(第5期)などを務める。『ジェンダーはビジネスの新教養である 炎上しない企業情報発信』(日本経済新聞出版社)など著書多数。2児の母。 |
我が家のジェンダー教育
自然に刷り込まれるジェンダーを子どもにどう教える?
田中 うちの息子が3歳のときに「おままごとをやりたい」と言い出したんです。僕は「男の子がおままごとをしちゃいけないなんてことはないから、公園で入れてって言ってごらん」と伝えました。翌日「おままごとに入れて」と言った息子は、女の子から「あっちに行きなさい」と返されたと……。
おままごとは女の子の遊び、だから男の子はダメという意識が、こんなに小さくてもある。家ではジェンダー差別なくと思って話しても、外に出ると違う状況なのは、3歳の息子は混乱するだろうなと。すごく厄介な問題が生じたなと感じたんです。治部さんのお子さんはどうですか?
治部 うちは11歳の息子は割と突破していて、8歳の娘は社会の価値観に過剰適応している印象です。
息子はワンピースを着て学校に行った男の子が主人公の本を読んで、同じように妹のワンピースを着てみたり、赤ちゃんが大好きなのにクラスの女子に「赤ちゃんのお世話をするのは女の子」と言われて「そんなの誰が決めたの?」と反論して「俺の勝ち!」と誇らしげ。
一方の娘は、うちは事実婚で私だけ名字が違うので「お友達はみんな家族と同じ名前。ママも同じ名字になろうよ〜」と言うんです。いわゆる「普通」の感覚を家庭に持って帰ってくる。どうでもいい相手ならいいのですが、娘のように尊重したい相手とぶつかったらどうするかはすごく悩みどころです。
田中 息子は最近かわいいと褒めると「かわいいじゃなくて、かっこいい!」と反論するようになったりして。どう伝えていけばいいのか、難しいですよね。
治部 外で受ける影響や知識はある程度仕方ないとして、わが家では、子どもの前で過度な一般化は避けるようにしています。
息子はいつもギリギリに宿題を仕上げるので、娘は「だから男子はダメ」と言い出す。でも男子でもしっかりした子も、やさしい子もいるよねとフォローはしています。
あと、私は運転が苦手なのですが、放っておくと女だから地図が読めないということになるといけないので「うちはこうだけど、お友達の家はママが運転するよね」と話しておく。ジェンダーの問題にぶつかったときに、地道に伝えていくしかないのかもしれません。
ジェンダーの問題は長期的な目で
社会を変えるには時間がかかる
田中 ジェンダーの問題は、現状どんな社会で、この社会をどう変えていくかという長期的な見方をしないと、根本的には変化しない。ここ数年ではわからないけれど、女性運動をしていた平塚らいてうが見たら、変わったと言うでしょう。だって、かつては女性が男性の悪口を公に言えなかったけど、今は夫の悪口とかが女性誌に平気で載ってますから(笑)。
自分たちの世代ではなく、できれば子どもの世代でこういうジェンダー差別をなくしていこうと、長い目で見て考えなければいけない。
治部 私も、私自身が生きていくうえでは、ジェンダーで不自由を感じることはあまりないんです。でも、娘が以前、安倍内閣の閣僚の写真を見て女性が1人しかいないことを「これいやだ」と言ったのに驚いて。やはり、これはどうにかしてあげたいと思います。
世界のジェンダーギャップ指数
ジェンダーギャップ指数(2020)上位国及び主な国の順位[出典:世界経済フォーラム]
※数字が1に近いほど男女平等の度合いが高い
毎年発表される、国内での男女差を比較する「ジェンダーギャップ指数」。この10年間、日本のランキングが下がり続けていて、直近の結果では153カ国中121位。先進国で最下位の結果に。
田中 そういう意味で、治部さんは事実婚を選んでいて。今は娘さんが違和感を持ったり、社会保障の面も不自由があるかもしれませんが、いつか解消するように、生きながら社会活動にコミットしているのはすごいですよね。
治部 いろいろなケースを見せて、教えて、真摯に伝えていくしかないですよね。本や映画などの作品でジェンダーを扱うものを一緒に見るのもいいですね。
田中 僕は、ジェンダーだけでなく、物事の多様性を学ぶために、図鑑がすごくいいと思うんです。オスよりもメスのほうが大きい昆虫とかおもしろいですよね。
治部 うちは娘が好きなので、ディズニー作品はよく見ます。最近のディズニー映画は、女の子がどんどん自立するのがいい。
田中 僕も好きなのですが、『アナと雪の女王』でひとつ気になることが。女の子の自立を描くと、男がバカになるんです。ハンスがダメだからこうなる、という描き方が疑問で、あれ以外の展開がないのかなと。
治部 なるほど。男を落とさずに女を上げる方法。
田中 子どもには、男女両方を持ち上げるようなお話を見せたい。または、逆転の話もいいですよね。大人向けですがNetflixの『軽い男じゃないのよ』は男女逆転劇で、男性が解放運動をしているんです。いろいろな作品を見ながら、一緒に考えたいですね。
撮影/齊藤晴香 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
この記事は2020年1月7日発売LEE2月号『言ってませんか?「男の子だから」「女の子だから」』の再掲載です。
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