多様な映画を守りたい……「映画配給会社を救え!」プロジェクトにあなたの気持ちを!#stayhome
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折田千鶴子
2020.05.21
緊急プロジェクトが始まりました!
本当に、まさかここまで……と想像していなかった“対コロナとの長期戦”。色んな問題や支障が私たちの生活や多方面の業種・業界で噴き出していますが、映画ライターとして映画界の端くれに身を置く者としては、やはり気がかりなのは、“映画”をはじめとした芸術・エンタメ界の行方です。
「アーティストは必要不可欠であるだけでなく、生命維持に必要なのだ」と大規模支援をいち早く打ち出したドイツを筆頭に、次々に支援を打ち出している他の欧米諸国と違い日本は……ううっ……。
そんな状況下にあって、日本の映画ファンの心意気や映画愛を感じてついウルウルしてしまったのが、存続の危機に瀕したミニシアターをみんなで守ろうと、多数の監督さんや関係者が立ち上げてくださった運動「SAVE THE CINEMAミニシアターを救え!」や「ミニシアター・エイド基金」に対し、すごい速度と熱量で多数の賛同(署名)や寄付金が集まったこと。もちろんこの署名や寄付だけで存続が約束されたわけではないですが、少なくとも前向きな「存続させよう」「応援しよう」という、双方の気持ちを強めてくれましたよね!
でも、そうしたミニシアターで上映される映画を提供する“独立系の映画配給会社”の存在なくしては、ステキな映画は掛からない!! ということで、今、注目していただきたいのが、緊急で立ち上げられた「Help! The 映画配給会社プロジェクト」です。
Help! The 映画配給会社プロジェクト
実は私自身、かつて独立系の映画配給会社で働いていたので、大変な事情や実情を身に染みて知っています。観客の皆さんが常に存在を感じる映画館や監督やキャストとは違って、配給会社って完全に黒子的な存在。そんな配給会社が結束し、この非常事態を乗り越えるため、どんな妙案を打ち出したのか……。
なんと、この「Help! The 映画配給会社プロジェクト」は、生き残りを賭けて寄付を募るという意味合いもありますが、それよりも映画ファンを喜ばせる企画でもあるのです! 映画ファンにとっては、むしろお得感たっぷりなんです!!
世界中の名だたる監督から応援メッセージが届いている当プロジェクト曰く、「私たちの財産は、映画しかありません。世界の多様な映画です。配信で、そうした多様な映画を見てもらうことで観客の力を借り、この難局を乗り越えたいと思うのです」。ということで、各配給会社が権利を持つ過去作を、パックで配信するサービスが始まりました!
しかも、配給会社ごとに配信される作品を並べて観ると、その会社の“個性や傾向”がよ~く分かるのも、なんだか楽しいのです。きっと今後、ご贔屓の配給会社が出てくるという、新しくてちょっとマニアックな楽しみ方も出来るかもしれません!
第一弾として、既に5社による90作品が配信されています。
各配給会社が自社の過去作品をパックにして配信する「配給会社別 見放題配信パック」は、配給会社により作品数も配信期間も、それにより料金も異なりますが、そのラインナップは目移りしてしまうほど。どの会社を応援するか、大いに迷いながら選んで欲しいです。何を観るか、どの作品群を選ぼうか、迷うのも映画を観る大きな楽しみの一つですよね。
例えば、ヨーロッパの作品を中心に手掛け、今年で創立30周年を迎えるクレストインターナショナルは、ジャン・ルノワールの『ピクニック』というクラシックの名品から、私も大ファンでLeeWebでも既にご紹介したホン・サンス監督の近年の4作品『それから』の他、計12作品を取り揃えています。映画1本分の料金に数百円上乗せしただけで、12本の中から好きな作品が見放題というのですから、お得です!
クレストインターナショナル見放題パック https://www.uplink.co.jp/cloud/features/2409/
クレスト配給で、今回配信される1作『未来よ こんにちは』は、イザベル・ユペール主演のフランス映画。ミア・ハンセン=ラブ監督の持ち味でもある“瑞々しさ”がたまりません!
また、ジャン=リュック・ゴダール、アニエス・ヴァルダ、ジャック・ドゥミなどヌーヴェルヴァーグの名品を取り揃えているのは、ザジ・フィルムズ。他にもスウェーデンのイングマル・ベルイマンの作品も3作品をパックに入れてくれたりしていて、30作品にのぼる配信作すべてが、もう、どれもこれも貴重な作品ばかりです!!
ザジフィルムズ見放題パック https://www.uplink.co.jp/cloud/features/2410/
一方、セテラ・インターナショナルは、フランスのアルノー・デプレシャンの『あの頃エッフェル塔の下で』や、イタリア映画『あしたのパスタはアルデンテ』、ドイツアカデミー賞を総ざらいした『コーヒーをめぐる冒険』など、ヨーロッパ各国の新しい才能とその空気を味わえます。かと思えば、ジェラール・フィリップ主演作などクラシック作品まで網羅している多彩なラインナップです。
セテラ・インターナショナル見放題パック https://www.uplink.co.jp/cloud/features/2411/
また、配給会社としては比較的若いミモザフィルムズは、ヨーロッパを中心に気鋭の監督の意欲作を、次々日本に紹介してくれている伸び盛り真っ盛りの会社です。LeeWebでも、イタリア映画『最初で最後のキス』に出演されたリマウ・グリッロ・リッツベルガー君のインタビュー記事をご紹介したことがありますが、覚えてくださっているでしょうか? 今回は、その『最初で~』も含め、尊厳死を扱いながら静かに感動がしみてくるような大好きな映画『母の身終い』など12作品がラインナップされています。どれも観て損なしの映画ばかりですよ!
ミモザフィルムズ見放題パック https://www.uplink.co.jp/cloud/features/2412/
そしてラインナップを観ると、一瞬で「あ、こういう作品が好き&評価しているのね!」と即座にわかる配給会社ムヴィオラからは、上で紹介した『もうひとりの息子』をはじめ、割に渋めかつ前衛的な作品が多いと思われるかもしれません。でも社会派ばかりではなく、『すれ違いのダイアリーズ』などのようにチャーミングで可愛い映画もあるので、その緩急も楽しめます。今回の配信21作品の中には、不思議な世界観をもつアピチャッポン・ウィーラセタクン監督、ワン・ビン監督、ツァイ・ミンリャン監督など、アジアの異才がズラリ!
ムヴィオラ見放題パック https://www.uplink.co.jp/cloud/features/2413/
第2弾も、新たに8社が参加する予定なので、お見逃しなく!
仮設の映画館
一方、ミニシアターだけでなく配給会社も製作会社も、一緒に生き残っていけるように頑張ろう、という動きは、5月2日より劇場公開を予定していた『精神0』の想田和弘監督によって既に<仮説の映画館>で行われています。
新作『精神0』をインターネットで公開するという決断は、<映画館>という空間に対して強い思い入れをお持ちの監督方にとっては、本当に大きく苦渋のものだったと思います。とにかく停滞している「映画経済」を動かそうと、構想してくださった<仮説の映画館>には、先ほどご紹介した配給会社ムヴィオラも参加しています。
映画料金と同じ1本1800円は、ミニシアターと配給会社が折半するそう。
詳しくは、公式HP http://www.temporary-cinema.jp/ を訪問してみてください!
STAY HOME MINI-THEATER
一方で、既に大きな反響を呼んでいるオンライン映画館「STAY HOME MINI-THEATER」は、これからも不定期でイベント上映を行っていく模様です。
直近では、こんなイベントも!
“STAY HOME MINI-THEATER powered by mu-mo Live Theater”(提携協力:ミニシアターエイド基金、SAVE the CINEMA)にて、
5月21日(木)21時〜
齋藤 工 総監督『COMPLY+-ANCE コンプライアンス』オンライン体感ライブ上映!
さらに、斎藤主導の映画プロジェクトTOKYO TELEWORK FILM #2#3 のプレミア上映も決定したそうです!
劇中歌を生ラップ、生アフレコ、舞台挨拶……とかなり盛りだくさんになるという情報も。当日、何が起きるか分からない、手作り感やワクワク感が満載の体感型リモートイベント。
http://stayhome-minitheater.com
料金は1,800円で、当日券のみ、webで上映開始5分前まで販売するそうです。
それにしても、齋藤工さんの活動、目覚ましいものがありますよね。『COMPLY+-ANCEコンプライアンス』のアップデート新作『コ◯ナPLY+-ANCE』も完成間近だそう。
先日、主演女優の秋山ゆずきさんに、ZOOMで“リモートインタビュー”する機会がありましたが、お話をお聞きして、すごい映画に仕上がっていそうな期待がさらに高まりました!
5月末公開予定です!
長くなり過ぎましたが、みなさんの映画愛の、ぜひお力をお貸しください!
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折田千鶴子 Chizuko Orita
映画ライター/映画評論家
LEE本誌でCULTURE NAVIの映画コーナー、人物インタビューを担当。Webでは「カルチャーナビアネックス」としてディープな映画人へのインタビューや対談、おススメ偏愛映画を発信中。他に雑誌、週刊誌、新聞、映画パンフレット、映画サイトなどで、作品レビューやインタビュー記事も執筆。夫、能天気な双子の息子たち(’08年生まれ)、2匹の黒猫(兄妹)と暮らす。