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現地ルポ連載vol.3 フランスのママたちの「おうちで過ごす家族時間」

2020.05.10

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フランスからお届けしている短期連載企画の3回め。
最終回となる今回は、日本人のご家族でパリ郊外に住む
イラストレーターの谷口唯衣さんにお話を伺いました。

パリ郊外の小さな町で家族3人、
ホームメイドを充実させた心豊かな暮らし

 

毎日のデザートは手作り。
ホームメイドクッキーで至福のおやつタイム

 

唯衣さんはヘアスタイリストの夫、佑輔さんと
9歳になる長女、響花(おとは)ちゃんの3人家族で
響花ちゃんの転校を機に学校のあるパリ郊外へ
1年前に引っ越しました。
郊外と言ってもパリの中心までは郊外快速電車で2駅、
電車に乗ってしまえば10分ほどというアクセスの良さ。
一歩パリを離れただけなのに、一日中鳥のさえずりが聞こえてくる、
そんなのどかな環境に癒されている毎日だそう。

「ここは、小さな商店街と週に一度マルシェが
出るだけの小さな町です。普段のお買い物は市場に
行くことが多いのですが、今は残念ながら閉まっているので、
食材は商店街にあるオーガニックスーパーを利用しています。
でも、外出制限令が出てからは、どこのお店も入店の
人数制限をしているので、外で長い時間並ばなくては
ならなかったりと、結構大変です」。
感染リスクを避けるためにも、いつもより意識的に
買い物の回数を減らしました。いつでも当たり前に
買えていた品物が手に入りにくい状況なので、
今まで以上に市販の物に頼らなくなったという唯衣さん。
これまでも響花ちゃんと一緒によくおやつを
作っていたけれど、おうち時間のたっぷりある今は、
毎日のようにホームメイドの焼き菓子などを作っているそうです。

また、家族みんなが大好きな和食も、イワシや昆布から
自前の粉末出汁を仕込んだり、干し椎茸を作ったり、
餃子は皮から作るなど、いつもならお店で揃えていた食材も
自分で準備するようになりました。
「これがないとできない!と諦めるのではなくて、
違う方法を考えてみる。今、目の前にあるものを
使ってちょこっと工夫すると意外な発見があるんです。
手間をかけた分だけ、より美味しく感じられるし、
食材やお料理ひとつひとつを大切にいただくようになりました。
最低限の材料で、心にも身体にも優しく
免疫力を保てる食生活が自然と習慣づいてきました」。

生地をこねて、チョコレートチップ入りのスコーン作りに挑戦中。

家族みんなが大好きな季節のフルーツを使ったケーキ。
この日は彩り鮮やかないちごのクラフティを作りました。

 

フランス語と日本語の両方を学べる学校に通う響花ちゃんは、
フランスではCM1(セーエムアン)と呼ばれる4年生で、
日本の小学4年生にあたります。
春休みと週末以外は、毎日宿題が出るので、
今は算数の宿題には主に唯衣さんが付き添い、
フランス語の文法や文章問題は家庭教師の先生との
リモートワーク、そして日本の国語は
週3回の学校のオンライン授業を受けています。
家での学習は、だいたい朝10時から宿題をスタート。
ランチ後は、学校のオンライン授業とフランス語の
プライベート授業というプログラムで進めるのが日課です。

一日の中で数時間だけ、
それぞれ好きなことをしてのんびりする

そんな響花ちゃんにとって勉強後のお楽しみは、
おやつ作りやパパと一緒のバドミントン、
お庭の散歩、草花のスケッチだそう。
「私たちが住んでいる集合住宅には、
ありがたいことに緑豊かな広いお庭があるので、
一日に一回は人の少ない時間帯に外に出るようにしています。
我が家は3人揃って、自然からエネルギーチャージすることが多い。
季節を感じる草木や花、鳥のさえずりに耳を澄ませたり、
夕焼けや夜空の星や月を観察することで浄化されます。
家族にとってかけがえのない、大切な時間なんです」。

夕食前のつかの間、パパと一緒に窓から庭を眺めるのも
楽しいひと時。

お庭散策は自然のエネルギーを感じる、かけがえのない時間。

お庭から摘んだ野花のブーケで、
テーブルに春を感じるアレンジを。

 

そして、一日のうちの数時間は、みんなが個々に
各部屋で好きなことをして過ごすのが
自然とできあがった谷口家のルール。
そんな時間を唯衣さんはお布団に寝転んでぼーっとしたり、
SNSをチェックしたり。自宅での自粛生活とはいえ、
子供の宿題や、学校の先生とのやりとりなど、
普段とは違う忙しい日々だからこそ、
短い時間でもリラックスすることで、
心を緩めることができるのです。

響花ちゃんはソファでひとり読書時間を満喫中

家族が同じ目線で景色を眺めることは、
宝物のような時間

「ヘアスタイリストという職業柄、
夫は時間が不規則なことが多いし、
私も家での作業とはいえ、みんなが仕事と学校との
バラバラのリズムで気持ちの余裕がなく、
今まではぶつかることも少なからずありました。
だけど、今は『忙しい』とか『時間がない』
のせいにできない、笑。だったらどうする
ことが一番いいのか話し合ったり、協力し合うことで、
すれ違いがなくなりました。
食事の献立をみんなで考えたり、娘の作った
おやつを囲んだり。家族が同じ目線で見る
景色が増えたことは、今回の自粛生活の
なによりの宝物です。
みんなで過ごす日々の些細なことがとても愛おしく、
豊かな時間の流れは、これからの私たちが
おだやかに暮らすヒントを与えてくれた
と感謝しています」。

明日、5/11から段階的にロックダウンが解除されるフランス。
55日間にわたる不自由で不便な生活の中で、
次々と湧き上がってくる感謝の気持ちや、家族との関わり、
人との繋がりの大切さなど、たくさんの素敵な気づきが
あったと、唯衣さんは感じています。
今後はきっといろいろなモノの在り方が変わっていく。
だからこそ、本当に必要なコトを自分の目で
しっかりとフォーカスしていきたいと言います。
「外出制限が解除されて、状況が落ちついたら
娘と一緒に電車に乗ってパリに行きます。
二人で好きなお店を巡ったり、お気に入りの
パン屋さんの美味しいパンを買って食べながら、
元気なパリを歩きたいです!」

唯衣さんと響花ちゃんが作ったマスク姿の
可愛いうさぎのお人形も一緒に”STAY HOME”中。

たにぐちゆい●パリ在住イラストレーター。
『tremplapin』というペンネームで、
自然や動物をモチーフにした手描きの作品を中心に制作。
広告、ファッション、雑誌、パッケージ等、国内外のイラストを手掛ける。
www.tremplapin.fr
@yui.tremplapin

 

取材・文/鈴木ひろこ
パリ在住29年のスタイリスト、ライター、コーディネーター、ファッションコンサルタント。
主な著書に『パリのナチュラルモダン・スタイル』『シャンペトル・シャビーの家』
@suzukichako

 

vol.1 「ゾエ・ドゥ・ラスカスさん」の記事はこちら
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