昨年11月に宝塚歌劇団を退団するまで、絶大な人気を誇り、約5年半という長きにわたり、男役トップスターを務めてきた明日海りおさん。退団後「しばらく朝ゆっくり寝られる解放感を味わいました」と笑うが、いよいよ始動！　ディズニー最新作の実写版『ムーラン』の声優に挑んだ。

明日海りおさん
退団後、初のお仕事で好きなものに出会えました！

「ずっと宝塚が大好きで、目指して入団し、好きなことを仕事として続けられることに、本当に幸せを感じていました。だから退団後は、“これからは生きるための仕事をするのかな”と思っていたんです。ところが『ムーラン』のお話をいただき、“あ、大好きなものあった!!”と（笑）。それこそ小さな頃からディズニーの世界が大好きで、それが初仕事なんて本当に幸せ。感謝しなければ、と思いました」

しかも“美形トップスター”として鳴らしてきた明日海さんが、男装して戦場で活躍するムーラン役だとは、なんとピッタリな役！

「ムーランが男に扮しているときの声にはなじむのですが、女の子として生活しているときが……。自分では精いっぱい若々しく少女の気持ちで演じたつもりでも、後で聞くと声が太くって（笑）、キーを高くしてしゃべる練習をしたり。でも、段々ムーランを演じる女優さんの気持ちの流れに呼吸が合い始めてからは、自然に演じられるようになりました」

ムーラン役の“リウ・イーフェイさんの演技を一番大事にして声を当てた”という発言が、明日海さんらしさを物語っている。

「監督も、監督の意向を汲み取って演じるリウさんも相手役の方々も、命がけで取り組んだに違いない。だから吹き替える私は、それを大事にしたかったんです。目から入ってくる姿と耳から入ってくる声が、できるだけ同一のものであるようにしたいな、と。ムーランが何か言い終えてフッとほほえむ瞬間、私も同じ笑顔でいないと違和感が入り込む。とても繊細なんだな、とすごく勉強になりました」

アニメーション版も何度も観てきたという明日海さんから見た、実写版『ムーラン』の魅力は!?

「中国の広大な草原や雪山、砂漠の中の城壁など、壮大な世界観が音楽とともに押し寄せてくるような迫力です。数々のアクションシーンも、スピーディかつ美しい。アニメーション版より少し大人っぽい世界観ですが、変わらず“自分らしく生きるということ、愛する家族を守ること”などのテーマが根底に流れています。ムーランのほのかな恋の行方にもワクワク。本当に上質な作品だと思いました」

時折キリッとする表情はカッコいいが、目の前の明日海さんはふんわりした空気をまとい、声音も口調も優しくやわらかい。二面性のあるこの可憐さ、女優として無敵！

「今までやってきた分野が安心できますが、知らなかった表現方法にチャレンジしていきたい。知らない自分に出会えるのも、すごく楽しみで。一つ一つクリアし、手ごたえをつかむことにやり甲斐を感じるタイプなので、この先もちゃんと“過程”を楽しめる自分でありたいです。今、これまでと違う視点で映画や音楽に触れ、あらためて唯一無二の個性やスタイルで勝負されている方々があまりに多いことに驚きつつ、すごく刺激を受けています。自分を限定せず、少しずつ少しずつ陣地を広げていく作業をしていきたい、と思っています」

『ムーラン』

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愛する父に代わり、男性と偽って兵士となった少女ムーランの活躍を描いた、ディズニー・アニメーション『ムーラン』を実写映画化。ムーラン役に大抜擢されたリウ・イーフェイはじめ、ドニー・イェン、ジェット・リー、コン・リーなど豪華スターが勢揃いする。監督は『クジラの島の少女』『スタンドアップ』のニキ・カーロ。近日全国ロードショー予定。

撮影／藤澤由加　ヘア&メイク／平山直樹（wani）　スタイリスト／三浦真紀子　取材・文／折田千鶴子　ストライプドレス￥42000／モールド（チノ）　リング￥130000／カドー伊勢丹新宿店（カドー）