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現地ルポ連載vol.1 フランスのママたちの「おうちで過ごす家族時間」

2020.05.06

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フランスは3/17(火)の外出制限令からすでに7週間が経ちました。
マクロン大統領が国民に向けて声明を発表したのが、3/16(月)の夜8時。
行動が制限されるまで約半日というわずかな時間で、
がらりとライフスタイルが変わってしまったフランスの人たち。
8週めを迎えた今、どんな風に日々暮らしているのでしょうか?

パリ在住で自身も同じように自宅待機を続けている
スタイリスト兼ライターの鈴木ひろこさんが
3名のパリジェンヌたちにリモートで取材。
その様子を3回の短期集中連載でお届けします。

手間隙かけたノルマンディの別荘に移り、家族時間を大切に

 ゾエさんと長男のサシャくん、
ゴールデンレトリバーのナポレオンも足元で参加。
6月に出版される著書を準備中の日々。

 

 

人気インテリアデコレーターのゾエ・ドゥ・ラスカスさんが
3年前に偶然訪れたノルマンディで出会ったのがこの家。
「ここは18世紀に建てられた古い農家だったのですが、
長い間放置されていたので廃墟同然のひどい状態でした。
でも、使われていた建材が上質で頑丈だったのと、
家の構造がシンプルで改造しやすかったこと。
そして、なにより庭の樹齢100年近い大きなサクランボ
の木に一目惚れして、購入を決めました。
週末ごとにパリから通って、一年以上かけて自分たちの手で
少しずつリノヴェーションしてやっと去年完成したのです」。

今回の外出制限令の直前に実家や別荘に移動したパリジャンも多く、
ゾエさんの家族もノルマンディへ。
手間と時間をかけた、特別の思い入れがある家があるからこそ、
迷わず家族でパリから移ってきたと言います。

「金曜日の午後、子供たちの学校帰りを待ってその足でノルマンディに来るというのが、
ここ数年の習慣だったので、今回の滞在も違和感なくすんなりと馴染めています。
ここはパリと違って外出範囲が自宅から1キロ圏内という決まりがなく
比較的、自由ではあるのですが、食材や日用品の買い物しか外出はしていません。
子供たちは庭で走り回って遊ぶし、お天気が良い日にはテラスで宿題をします。
私も隣で勉強をみたり、自分の仕事をして過ごします。
今は一年で一番季節が良い時期だから、
とにかく庭がメインリビングのようになっていて、
気がつくと自然に家族みんなが集まっているんです、笑」。

樹齢100年を超える立派なサクランボの木の下で
本を読んだり、お昼寝したり。

子供たちは毎日PCでリモート授業をしているそう。
フランスの学校は宿題も多いから、子供たちもけっこう忙しいようです。
「夫と交代で宿題をみますが、あまり勉強のことで神経質にならないように心がけています。
もちろん学校の勉強は大切だけれど、わたしたち親も仕事のリズムが
比較的のんびりしている、今のこのタイミングでしか
一緒にできないこともたくさんあると思うんです。
空に浮かぶ雲の形を動物に例える遊びや、葉っぱや木の枝などを使って
面白いオブジェを作ったり、押し花、お菓子を作ること。。。
自由に創造する時間を子供たちと共有できることがとてもうれしいのです」。

たっぷりと光の回るアトリエでお人形と遊ぶ、長女オルヤちゃん

 

子供たちと作ったオブジェ

松ぼっくりや小石、野花などをテーピングして
それぞれの名前を記したマッチ箱を利用した標本。

見た目に涼しげで可愛らしいお花入りの氷は、
夕方のアペリティフ(食前酒)用に。

風通しの良い暮らしに欠かせないのは、ユーモアと想像力

外との関わりのない状態で家族だけで過ごして、すでに50日以上。
上手に仲良く暮らすためになにかルールはあるのでしょうか?

「規則?なにもありません。だって、ルールなんて決めても
みんながしんどくなってしまうもの、笑。
それよりもどうすれば毎日が楽しく、快適に過ごせるか
創造力を働かせること!それが一番大切だと思う。
だから時には踊ったり、冗談を言って思いっきり笑ったり。
風通しのいい環境でいるためには、ユーモアやクリエイティビティが欠かせないわ」。

 

ランチを待つ間につかの間のシエスタをするオルヤちゃんとサシャくん。

今年3歳になる愛犬のナポレオンは家族のアイドル。
特にオルヤちゃんと仲良しだそう。

この状況が収束した後は、週末だけでなく、この家で過ごす時間を長くしていきたいと語るゾエさん。
現在、同じ敷地内にもう一軒の家をリノヴェーション中で、
完成後はそこが彼女のアトリエとなり、ワークショップやセミナーを開催する予定。
「四季を感じる自然あふれる環境で、一緒にオブジェを作ったり、
暮らしの質を高めるお手伝いができたら。
お金で買うものがすべてではなく、ちょっとしたアイデア次第で、
心地よいライフスタイルが整うはず。それこそが本物の豊かさだと、
今回の自粛生活の中でますます感じています。
もうこんなに家族でずっと一緒にいる時間は一生のうちで二度と訪れないと思う。
だからこそ、このかけがえのない瞬間をできるだけ有意義な経験にしたいと思っています」。

 

ゾエ・ドゥ・ラスカス●人気インテリアデコレーターであり、
個人宅や企業向けコンサルタントとしても活躍。
夫と9歳の長女、7歳の長男、そして愛犬とともに
パリから一時間ほど離れたノルマンディ地方の別荘で自粛生活を送っています。
6月に「ゾエが選ぶパリアドレス」(仮題・アシェット社)を出版予定。
@zoedelascases

 

 

取材・文/鈴木ひろこ
パリ在住29年のスタイリスト、ライター、コーディネーター、ファッションコンサルタント。
主な著書に『パリのナチュラルモダン・スタイル』『シャンペトル・シャビーの家』
@suzukichako

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