子育ての呪いの手放し方とは? 心のモヤモヤ解消のコツや、スウェーデンの子育て事情もご紹介
2020.05.06 更新日:2020.12.03
子育て世代から多く声が上がった、“子育ての呪い”にまつわる心のモヤモヤ。犬山さん、堀越さんが、モヤモヤを解消するための、考え方のコツを教えます!
子どもの姿=母の育て方と世間からの目を気にするあまり、きちんとしつけなければと、知らず知らずのうちに呪いに縛られている気が。公共の乗り物や病院など、子どもたちに対して世の中は意外と厳しく、母親たちは肩身の狭い思いをしています。50〜60代の先輩方だって子育ての経験があると思うのですが、駄々をこねたり、泣くとうるさい! 静かにさせろ!と冷たい視線が送られる。人目を気にしすぎてしまう自分にもうんざりします。(ルル)
周りの目を気にするのは仕方のないこと。ただ、優先順位として、一番大事なのは自分と子どもの健やかな心だというのは忘れないで。周りを気にしすぎるあまり、自分の子どもを下げたりする人もいますよね。これはダメ。知らない人の圧よりも、まずは子どもを見てほしいです。
もしうるさくて怒鳴るような人がいても「自分がきちんと注意できなかったから」などと落ち込まずに、逃げてOK。言葉の暴力ですから罪の意識を感じる必要はなく、おかしな人から逃げたという事実だけを見ましょう。「いきなり怒るなんて怖いね」と子どもの心のフォローを。
専業主婦は、時間がいっぱいあって子どもにずっと目を向けていられるという社会の雰囲気がつらい。うちの夫もそう思っています。幼稚園の預かり保育は、特に理由がなくても預けてもOKでしたが、仕事でもない、用事もないのに利用するのはママをさぼっているような気がして、なかなか預ける勇気が出ませんでした。(りんごあめ)
会社で働く人が息抜きするのと同じで、主婦だって子どもを預けて自分の時間を持っていい。どうしても後ろめたいなら“1時間休むと、24時間ご機嫌のチケットと交換”だと思うのは? 休んだほうが余裕が生まれて家庭にもいいはず。
ボーッとする時間は誰にでも必要。自分の心のメンテナンスだと思えれば、預かり保育で預けられるのでは。そのほうが子どもにもやさしくできるはず。会社員も7時間働いたら休まないといけないんだから、働き通しは労働法違反です!
私の母親が専業主婦で、毎日学校から帰ると手作りのおやつがあり、食事も必ず肉・魚が毎日交互でメインになり、副菜も数種類ある……。それが当たり前で育ったので、これが母親として当然の姿だと自然と根づいてしまい、母のようにできない自分を責めてしまいます。(ひろ)
お母さんとの結びつきが強いのかもしれないですね。友人のお母さんの話など他のケースを知るのがよいと思います。根深い場合は、カウンセリングで相談するのも手。または、お母さん以外のメンターを作って心の支えにするのもおすすめ。
自分の親しか知らない、それが基準になるとしんどいので、世界各国のごはんを見てみては。いろいろな国や家庭のごはんやお弁当を見ると、日本がいかに特殊かわかるはず。お弁当にピーナッツバターパンだけという国もありますよ。
SNSなどで、有名人だけでなく一般の方も、素敵な生活をアップしているのをよく目にします。理想的な生活を目にすることで、心のどこかでこうしたい、こうあるべきと、ハードルが上がっている気がします……。(ムーコ)
きれいなものを見るのももちろんいいけれど、私は友達と“汚い同盟”を作っています(笑)。素敵なものだけじゃなく、こっちも共有しようと。LINEで親しい友達とグループを作って「ブロック散らかりすぎ」と写真を送っています。
憧れるだけならいいけど、憧れの対象と同じ土俵に立っていると思うとつらい。「この人はインテリアという競技で戦っているすごい人。自分は別の競技で戦おう」とほかに自信が持てることを見つけられれば、振り回されなくなるはず。
子育てママへのアンケートで上がった、呪縛が解かれてママの気持ちが軽くなった言葉や作品をご紹介!
- 子どもに「ママ大好き」と言われたこと! (かなこ)
- イライラしちゃうのは、それだけ育児に向き合っている証拠。 (むー子)
- 親戚の叔母から「小学生のうちはうんっと甘えさせていいのよ」と言われ、きちんとしつけなきゃと思っていた心が軽く。 (かなこ)
- 「時間をかけた手の込んだ食事より、チルドの食事で家族みんな笑顔で食事できるほうがいい」という育児ブロガーさんのブログを読んだとき。大切なのは母親としての自分ではなく家族だと再認識。 (ムーコ)
- 東京・神保町で「未来食堂」を営む小林せかいさんが、日経ウーマン・オブ・ザ・イヤーを受賞したときのスピーチ。「(略)そんな過程を報道で知った方から、『そうやって気ままにチャレンジできるのも独身だから』といったコメントをいただくことがよくあります。しかしそれは違います。私は結婚しており、6歳の子どもがいて、今妊娠5カ月目です。『こんなチャレンジができるのは独身だから』という発言に、私はNoと答えます。しかし私は、母であることに自分のアイデンティティはありません。ですので、これ以上のコメントは特にありません。環境が、あなたの行動にブレーキをかけるのではありません。あなたの行動にブレーキをかけるのは、ただひとつ、あなたの心だけなのです」 (関サバ子)
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©かねもと/KADOKAWA
- テレビで「海外の子育ては子どものために自分を犠牲にしない。母親が好きなことをして幸せなら、子どもも幸せ」と言っていて自分も好きなことをしていいんだ!と気持ちが楽に。 (かわさけ)
- 「あなたが生まれたとき、あなたは泣き周りは笑っていたでしょう。あなたが死ぬとき、あなたは笑い周りは泣いているように」という映画の中の言葉。子育て期間は人生のほんの短い間なのだから、楽しまなくてはもったいないと思わせてくれました。 (むー子)
- 夫に「スーパーの総菜は忙しい主婦のためにあるんだ」と言われたとき。忙しいときは上手に利用していいんだなと思えました。 (かなこ)
久山葉子さん
北欧専門の旅行会社やスウェーデンの貿易振興団体に勤務後、2010年に夫と当時2歳の娘とスウェーデンへ移住。現在はスウェーデンのミステリー作品の翻訳、日本メディアの現地取材のコーディネーターなどとして活躍。
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『スウェーデンの保育園に待機児童はいない 移住して分かった子育てに優しい社会の暮らし』¥1500(東京創元社)
北欧での育児体験を綴ったママのリアルエッセイ。
Q スウェーデンに移住されてから、日本での生活を振り返って、「いろいろ呪いにとらわれていたな」と思うことがありますか?
日本の子育て系の呪いは本当に多いですよね。私自身も日本で育ち子どもを産んだので、日本の感覚はなかなか抜けませんでした。特に「1日30品目」という呪縛には長らく縛られてきましたが、スウェーデンに来てみると平日の夕食がすごくシンプル。肉か魚を焼いて、生野菜を2種類くらい切って、それに炭水化物を添えるだけ。料理時間は30分程度です。5時過ぎに帰宅して6時過ぎには夕食を食べ終わって、その後家族で一緒に過ごせる時間があってとてもいいと思いました。入園準備も、日本では夜中にミシンをかけたりして大変だったのですが、スウェーデンの保育園では持ち物が何もなくて拍子抜け。働くママのための保育園なのに、あの大変な入園準備は何だったのだろうと。「手をかける=いい母親」にとらわれていたような気がします。
Q それでも日本のお母さんたちはまじめに受け止めてしまう人が多いです。スウェーデンのママたちは実際、どうでしょう?
スウェーデンでは、家事も仕事も育児も夫婦共同で行う感覚が浸透していて、ママたちも必要以上に無理はしません。日本は女性が仕事をしていても、昔の理想の母親像を追い求める、もしくは押しつけられているケースが多い気がします。それは実際問題、物理的に無理な条件を突きつけられているのと同じ。仕事、育児、それ以外の時間で料理も掃除もひとりで完璧にこなそうとするママなんて、共働き先進国スウェーデンにはいませんでした。
日本では、子どものときから、たったひとつの正解を追い求めすぎる気がします。漢字の書き順も算数の回答もたったひとつだと学び、大人になっても、人生や母親像の正解はひとつだけだと思いがち。理想の母親像を体現できないことに、罪悪感を感じることはないとつくづく思います。
Q 「こうしたら楽になるのでは」と久山さんが思う、ママの気持ちの切り替え方やアドバイスはありますか?
スウェーデンの学校で学ぶのは「人はみんな違うけれど、同じ価値がある」ということ。親も先生も、ほかの子と比べるような発言は一切しないし、注意するときも「もう小学生なんだから」「男の子なんだから」といった枕言葉は使いません。日本人がついそう言ってしまうのは、私たち自身がそう言われて育ったから。大人になった今、自分自身に「母親なんだから」という固定観念を押しつけていないか、振り返ってみてはどうでしょうか。私自身、子育ての呪いを解こうと努力したときに、自分こそが長年それにとらわれていたこと、そして自分もまた、子どもへ呪いをかけてしまっていると気づきました。
詳しい内容は2020年LEE5月号(4/7発売)に掲載中です。
撮影/フルフォード 海 イラストレーション/かねもと 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
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