朝8時、重たいバックパックを背負って家を出ていた時間に、今ではパジャマのままグーグルクラスルームをチェックする。
新型コロナ肺炎感染拡大を受けて、ニューヨーク市の公立校が休校になって4週目に突入。リモートラーニング(遠隔授業)が始まって3週目になりました。本来なら4月21日から学校が再開する予定が29日まで延長となり、4月9日から17日まであるはずだった春休みも返上となり授業が続くことに。学校も日常も、当たり前だと思っていた毎日のルーティンが一変した様子をお伝えします。
ソーシャル・ディスタンシングを徹底
今、ニューヨークでは人との接触を防ぐため、ソーシャル・ディスタンシングとして6フィート(約1.8m)は離れることが徹底されています。必要な買い物はオッケーですが、ドラッグストアの外にも間隔をあけるためにテープが貼られていますし、レジの前には透明なビニール幕が。
バスケットボールやサッカーなどのコンタクトスポーツが禁止されているので公園のバスケットコートでは、リングが外されています。
最終手段だった公立校の閉鎖
アメリカの中でもニューヨーク州は3月に入り感染者が急増。3月2週目にもなると、現地校3年生(8歳)の娘のクラスでも親の判断で休む子がチラホラ出てきました。
それでもギリギリまで休校に踏み切らなかったのは、「公立校の閉鎖は最終手段」とニューヨークタイムズ電子版に掲載されたように、マンハッタン島など5つの区からなるニューヨーク市には11万4000人のホームレスの子供がいるそうです。子供75万人に対しての数字なので、7人に1人は住む家のない子供だと思うとショックでしたが、彼らにとっては、公立校で提供される無償の朝と昼の食事が「命綱」。そのため公立校を閉鎖することは「最終手段」と報じられていたんです。
それでも、3月15日の日曜夕に休校が決まると、市は16日から朝、昼の2食を全ての子供に配布すると発表。23日からは子供に3食が支給されることが決まり、4月3日からは子供だけでなく大人にも3食が支給されることが決まりました。市内435カ所で朝7時半から11時半までは子供とその家族、11時半から13時半までは子供のいない大人が食事をピックアップすることができます。
我が家から徒歩5分の学校でも配給しているので取りに行ってみたのがこちら。ドアを開けて入ると大きなクーラーボックスが置かれ、自由に持っていくことができます。
市の案内では、ベジタリアンやユダヤ教徒向けの食事があるとのことでしたが、娘の学校の配給では同じようなものが繰り返し出ています。でも、休校中、3食準備するのは本当にストレスですよね。作りたくない時や困った時には学校にもらいに行けばいい。そう思うだけで気分が楽です。
遠隔授業の前に必要なセッティング
娘が通う学校は、ニューヨーク市クイーンズ区にありPre-K(4歳児クラス)から8年生(中学まで)までの1000人以上が在籍し、体育館が2つあるマンモス校です。
すごくトラディショナルな学校なので、今までオンライン授業は皆無。先生とのやり取りは手書きのメモというオールドスタイルで、当初3月12日に予定されていた先生との面談がコロナ余波で中止となりましたが、メールでのやり取りを希望しても電話がかかってくるほどでした。
23日からオンライン授業開始と市が発表したのに合わせ、前週はグーグルクラスルームや無料のアプリでもやり取りできるようにとセッティングを確認。娘は学校のIT授業でグーグルへのログインをしていたので、思ったよりサクサク作業していましたが、クラスのルームのほか、音楽、IT授業のルームもあり、ちゃんと全てにログインできてるか確認しなければいけませんでした。
経済格差が大きい街ですが、市の教育委員会は30万台のiPadを準備。家にディバイスがない子供に無償で貸し出すことを決め、新規Wi-Fi加入は無料になるなど、経済的格差が学習の影響しないように対策が取られていました。
初日に痛感したこと
迎えたリモートラーニング初日。朝からグーグルクラスルームで「課題」をチェックします。担任の先生が行う国語、算数、ソーシャルスタディ(社会のようなもの)ほか、専任の先生が行う理科、音楽、IT授業、体育まで一気に「課題」が出されて私の方が混乱!!
娘がいきなり手をつけたのは、国語のエッセイ。しかも、グーグルドキュメントにうたなければいけないので、iPadではやりにくいと私のラップトップを貸すことに。タイピングが遅いので、書く以上に時間がかかる・・・。そしてよくチェックすると、そのエッセイの課題は翌週の金曜日!! 月曜の朝一にやらなくてもいい課題に必要以上に時間を取られて、見てるだけでゲッソリ。月曜に全ての教科の「やることリスト」が出ていましたが、理科などは自分のクラスが本来授業を受ける曜日に課題に取り掛かればいいとのこと。
初日に痛感したのは、「全ての課題の量」と「締め切り」を確認してから、何を一番最初にやらないといけないのか、きちんと「優先順位」をつけないといけないということでした。
思った以上に親の負担が大きい
算数は、教科書の副教材的なオンラインサイトがあったのですが、それがそのまま授業に取って代わりました。毎回5分ほどの動画を見て、オンライン上で問題に答えていきます。計算問題や選択式の問題はオンラインで完結しますが、どうしてもプリントアウトして、やり終えてから写メして先生に送らなければならないことも。ディバイスに直接書き込めるペンがあればプリントアウトする必要はなかったと思います。
これらは算数のオンライン課題の一部です。
娘のクラスはこの動画だけがインストラクションなので、問題を解いていくと出てきます。
「ママー、これ難しい」「わかんなーい」とお呼びが・・・。
NY市が使う教科書の算数は、とにかく文章題が多い。英語が第一言語じゃない私が読むと、問題文の意味がよくわからないこともあるし、教え方があってるのか迷うことも多々あります。
国語ではエッセイの課題もありますが、娘の担任は「よく書けたね!スペルミスが多いから、次は意識して書いてみよう」とざっくりとしたフィードバックをくれるのみ。簡単なスペルや文法は私がチェックできますが、もっといい言い回しがあるのかなど、私と夫ではわからないことも多いです。
勉強面では急に家庭教師もすることになり、パソコンも貸さないといけないのでその間私は全く作業が進まず、家事をしていてもお呼びがかかる・・・。だいたい午前には課題が終わるので午後が長く、思った以上に親の負担が大きいのが現実でした。
お誕生日会もテニススクールもオンライン
そして授業だけでなく、お誕生日会や習いごともバーチャル化しています。
お誕生日会では画面越しにみんなでバースデーソングを歌い、娘が通うテニススクールでは家でもできるちょっとしたドリルの動画が送られてくるほか、ゲストスピーカーを招いての「トークショー」もありました。先日は、プロテニスのメジャー大会でも優勝経験のあるジャン=ジュリアン・ロジェという男子選手がゲスト。今までなら会うことのないトッププロ選手ともオンラインで繋がることができるのは、今までにない利点でしょうか。
遠隔授業での気がかり
全てがオンライン化する中で気がかりは、友達との交流が少なくなっていること。
先日、クラスで「お店では買えないギフトを誰かにあげるとしたら、自分はどんなものをあげられるか。みんなで考えよう」という課題がありましたが、グーグルクラスルームでチャットしあうだけ。これがもし対面のクラスだったら、みんなの意見を聞きながら感想を言い合えるのにと思ってしまいます。
娘の学校はオンラインでのクラスミーティングがないため、友達との交流がすごく限られるんです。友達とフェイスタイムで話すこともありますが、それは私が連絡先を知っているもともと仲のいい友達です。学校に行けば、まだ話したことのない友達と知り合うチャンスがあっただろうし、あまり話さない友達の意見を聞き、「この子ってこんなこと考えてるんだ」と興味を持つきっかけになったかもしれません。校庭でみんなとわいわい遊んだり、喧嘩して仲直りしたり・・・。そんな心の成長に必要であろうことが気軽にできない環境で、後々どんな影響があるのか、ないのか。わからないゆえ気がかりでもあります。
もちろん、NY市でもオンラインで授業やクラスミーティングを提供している学校もあります。比べるのは意味がないと思いつつ、遠隔授業が始まってからの数週間の様子は成績に関係しないという学校もあれば、関係する学校もあり、学校や先生によってかなり対応が違います。
ニューヨーク州には3年生から受けるステートテストという国語と算数の統一学力テストがあります。コロナ余波で今年は中止となりましたが、4年生のスコアが中学受験に、7年生のスコアが高校受験に関わってくるため比重が大きく、このまま州統一テストがない場合は、受験システムそのものにも影響が出てきます。
学校によって差がある遠隔授業をしているのに、それでも統一テストのスコアという物差しで子供を評価するのか。受験競争も激しいニューヨークで、これをきっかけに様々な評価基準ができていくことを切に願います!
希望を掲げ窓に虹を
医療機関でのコロナ患者治療を優先するため、娘の健康診断や歯のチェックアップ、私自身の乳がん検診など、急を要しない診察は全て夏以降に延期されているので、ちょっとのことぐらいじゃ体調を崩せない緊張感もあります。
まだまだ先行きが見えない状況ですが、そこはニューヨーカー!コロナに負けず希望をつなごう、感染リスクがあるにも関わらず治療にあたる医療従事者、ごみ収集やスーパーの従業員、郵便配達など私たち市民のために働き続けているエッセンシャルワーカーに感謝の気持ちをあわらそうと、金曜の夜7時に窓の外に向かって拍手をする #ClapBecauseWeCare(彼らのことを気にかけているなら手を叩こう)や、窓に虹の絵を掲げる動きが広がっています。
私の住む街にも窓に虹が。
虹ではなくメッセージを掲げるお家もあります。
そこで、私も娘と虹の絵をかいて窓にはることにしました。ごみを収集してくれてありがとう、郵便を配達してくれてありがとう、という気持ちを込めて。そして1日でも早く友達みんなでハグできるようにと希望を込めて。
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田辺幸恵 Sachie Tanabe
ライター/ライフコーチ
1979年、北海道生まれ。スポーツ紙記者を経て2006年にアメリカへ。2011年にニューヨークで長女を出産。イヤイヤ期と仕事の両立に悩みコーチングを学び、NPO法人マザーズコーチジャパン認定講師に。趣味は地ビール探しとスポーツ観戦。夫と娘(8歳)の3人家族。