“堀江純子のスタア☆劇場”
VOL.6:柚希礼音さん
宝塚ファンなら知らぬ者はいない、元星組トップスターとして、超絶な人気を誇った柚希礼音さん。柚希さん宝塚入団~退団の年月は、ちょうど私も熱心に宝塚観劇をしていた時期だったので、入団まもない頃からの抜擢、スター街道をグングンと進んでいく雄姿……幸運にも、そんな柚希さんの輝ける歩みを観てきました。そして…男役のレジェンドから女優へ。華麗なる転身を遂げた柚希さんは、タカラジェンヌだったときの輝く魅力は失わず、女性としてのキュートさ、凛々しさも同居する女優として大活躍。最新作『ボディガード』では稀代のシンガー、レイチェル役に。今、影を感じる世の中だからこそ求められる、その明るさと歌声が曇った心を救ってくれる!
ハンサムからハンサムウーマンへ
――初めまして……なのですが、私、幼い頃より宝塚歌劇を拝見しておりまして。柚希さんの作品は初舞台の『再会/ノバ・ボサ・ノバ』から、サヨナラ公演の『黒豹の如く/Dear DIAMOND!!-101カラットの永遠の輝き-』まで、ほぼほぼ観劇網羅しておりまして。勝手に、初めましてではない気がしております。
柚希 「そうだったんですか。ありがとうございます! 嬉しいです(笑)」
――元タカラジェンヌの方のインタビューは多くさせていただいてるのですが、男役の方が女優になるのに、皆さんいろいろご苦労されたとエピソード伺ってきて。男役から女優になることを“性転換”とおっしゃっていたり(笑)。
柚希 「しますね(笑)。やはり、男役として長い年月、“男性”を演じることを研究し続けてきたので、本当は女性であるのに、どうしても“男性”であることが染みこんでしまっているんですよね。気を付けてはいるんですけど“つい…”っていう瞬間がどうしてもあるんですよ(笑)」
――退団後の舞台を拝見して、柚希さんは、いい意味で“転換”されてないような気がするのです。男役のときはもちろん、宝塚の男役としてとても魅力的だったんですが、女性を演じられるようになっても”この人は男役だったのに……“とあまり過ることもなく。
柚希 「やっぱり“男”が出ちゃってます?」
――いやいや、そういうことではなく! ハンサムがハンサムウーマンへとすごく自然に昇華したような。男役でも女優でも、“演じる”ということに変わりがない。男役の柚希さんをずっと観てきた宝塚ファンをそう思わせるなんてすごいです!
柚希 「そうで居られているのならいいな、と思います。ガニ股にならないようにしなきゃとか、手の使い方、座り方、男役時代とは気を配るところが今まったく違うんですが、男性か女性かで無理するよりも、私が演じる女性はどういう人なのか、が大事なんじゃないかと。宝塚時代は娘役さんを守る側の男役だったのに、今回は素敵なボディガードに守っていただく立場になるので、さらに自然に女性でいられたらいいですよね」
私にとって大谷さんはコスナー超え
――大谷亮平さんと2ショット撮影したとき、大谷さん、「あれ? 膝曲げてくれてますか?」って柚希さんに聞かれてましたよね?
柚希 「そうなんですよー!! そんなこと言われることこれまでになかったので、嬉しいし、驚いちゃいました(笑)」
――膝を曲げておらず、しかもヒールを履いて横に立っていたのに、さすが大谷さんは女性としては長身の柚希さんよりも背が高かった!
柚希 「ってことは、私のこと、もっと大きいかと思ってたんでしょうか、大谷さんは(笑)」
――いやいや。そこはさすが、ボディガードです! 隣に並ぶ柚希さんの態勢まで気遣っておられる!!
柚希 「ホントだ。素敵ですね。ご一緒するときはいつも紳士的で、私を気遣ってエスコートしてくださって。本当にお優しい方なんです。大谷さんのおかげで、自分は女性なんだなぁ、っていつも以上に思わせていただいてます(笑)」
――日本のケビン・コスナー、ここにいた(笑)。
柚希 「いや、ホントに。私にとって大谷さんはコスナー超えです。これぞ!です」
――映画『ボディガード』は柚希さん演じるレイチェルをホイットニー・ヒューストンが。大谷さん演じるフランクをケビン・コスナーが演じ、全世界で大ヒットしました。私はどんぴしゃ世代なのですが、柚希さんは映画、ご覧になってましたか?
柚希 「もちろんです。私もどんぴしゃ世代…じゃないか(笑)。でも、そう思ってしまうのは、『ボディガード』の音楽のせいかな。『ボディガード』って聞けばすぐ、“エンダー!”って頭の中に流れるじゃないですか! サウンドトラックが大好きでよく聴いていたんですよ」
――有名すぎる『I Will Always Love You』ですね。ホイットニーがヒロインだけに、サントラも本当に素晴らしい!! 個人的には『I’m Every Woman』も大好きです。
柚希 「私もー!! 本当に名曲揃いで。宝塚の下級生の頃、よく大音量で聴いてたんですよ。“エンダー!”って(笑)」
歌で伝えられるように、全身全霊で
――あんなふうに歌えたらどんなにいいだろうと、夜中の3時ぐらいのカラオケで、たまにやっちゃいます。
柚希 「え! “エンダー!”してるんですか?」
――誰が何を歌ってるか気にならなくなる深夜3時ぐらいに、ですけど(笑)。
柚希 「すごい。私は勇気なくてカラオケでさえも歌ったことはなかったんですよ」
――柚希さんはプロだからです(笑)。素人の“エンダー!”はただの自己満で済みます(笑)。
柚希 「いやいや。でも、自分が昔から大好きだった歌だからこそ、それが歌える喜び以上に不安とプレッシャーがあります」
――柚希さんほどの歌い手でもそんなことを?
柚希 「思いますよー。それぐらい素晴らしい楽曲揃いだし、ホイットニー・ヒューストンの声ですぐに再生されるお客様も多いと思います」
――でも、昔の映画ですから、柚希さんのレイチェルが、『ボディガード』の楽曲に触れる初めだ…って層のお客様も多いかと思います。
柚希 「そういう方に、ちゃんと伝えられるように全身全霊で歌いたいと思います。映画が大好きな方にも、柚希の“エンダー!”もいいじゃないか、って思っていただけるようにレイチェルとなって大事に歌いたいと思います」
――物語は、いわゆる大恋愛モノですよね。全身全霊で大恋愛する、柚希さんのレイチェル楽しみにしています。
柚希 「そこはもう…大谷さんが演じるフランクを愛し、『ボディガード』の世界に浸りたいですよね」
役から教えられる女性の生き方
――昨年演じたA New Musical『FACTORY GIRLS〜私が描く物語〜』のサラといい、今回のレイチェルといい、自分というものがしっかりとある、芯と意思の強い女性が続きますね。
柚希 「本当に。サラも、苦境に立たされてもくじけることない強い女性でした」
――役を通して、女性の生き方を考えることもありますか?
柚希 「ありますね。これは女優冥利に尽きることで、時代、人種を超えた様々な女性の生き方を演じ経験することで自分の人生にとっても勉強になるし、教えられることがたっくさんあります。役を通したからこそ知る感覚もありますよね。サラを演じていたときは、サラの気持ちになって苦しみも味わいました。負けないで立ち向かうサラに私自身が勇気をもらいました」
――レイチェルからは、どんなギフトをもらうでしょう?
柚希 「素晴らしいギフトがいただけるよう、レイチェルとしっかりと向き合いたいと思います。それに、まだ『ボディガード』のエンディングは、果たしてレイチェルの決断が正解だったのか、悩むこともあるんですよね」
――単純なハッピーエンドではないですもんね。受け取り手によっても、レイチェルとフランクが選んだ道に対して、いろんな感想が生まれると思います。
柚希 「お客様の前で演じていくうちに、もしかしたら私にとっての正解が見つかるんじゃないかと。レイチェルになってわかることも多くあると思います」
――柚希さんの恋愛観だと、カセのある恋、お互いの立場、環境を考えなければならない恋に陥った場合、どういう行動をとると思いますか?
柚希 「いろいろ問題があったとしても、本当に相手のことが好きなら諦めないですね。無理だと思われることでも、必死に、何か解決する方法はないだろうかと考えると思います。たぶん…ですけど、自分にとってのハッピーエンドを探し続けると思いますよ。……そんな恋愛をいつかできたらいいですね~(笑)」
女優の日常、楽しんでます!
――男役から女優になって。今の日常を楽しんでらっしゃいますか?
柚希 「はい! まずは、宝塚時代とは違って、自分の時間が結構あること!! これが本当に嬉しい」
――宝塚のトップスターは激務といいますか、常に日本のどこかで舞台に立ってる印象あります。
柚希 「そうなんですよ。常に次に立つ舞台があることはそれはそれでものすごく幸せなことでもあるんですけど、トップになってからは特に自分の時間がなかなか取れないときもあったので」
――休みなら休みで、体を休めないとならないから、遊べなかったり。
柚希 「おっしゃる通り。今は自分の時間を持てるようになって、休みの日には、気持ちの面から休めるようになったのは大きいですね」
――今、一番お気に入りの自分の時間は?
柚希 「明日のことを気にせず、好きな香りの入浴剤を入れて、ゆっくりお風呂に入る時間!」
男役としてもひとりの女性としてもハンサムな柚希さん。キュートな甘いハスキーボイスでトークを展開してくれました。楽しかったー!! “エンダー!”がとんでもなく可愛らしかった♡ 瞳がキラキラ愛くるしくて、吸い込まれそうとはまさにこの瞳。長く宝塚ファンをやっていると、タカラジェンヌに対してまるで自分の身内のような親しみを勝手に感じてしまう錯覚に陥ることもあるのですが、ご縁あって、たくさん観る機会があった柚希さんだけに、今、新しい世界で活き活きと活躍されてる姿に、そしてその喜びを語っていただき……いち演劇ファンのライターとして、私にとっても“喜び”の時間となりました。スターが与えてくれるパワーを私もいただきました。今後もご活躍を観続けていきたいと思います。
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堀江純子 Junko Horie
ライター
東京生まれ、東京育ち。6歳で宝塚歌劇を、7歳でバレエ初観劇。エンタメを愛し味わう礎は『コーラスライン』のザックの言葉と大浦みずきさん。『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』『エリザベート』『モーツァルト!』観劇は日本初演からのライフワーク。執筆はエンターテイメント全般。音楽、ドラマ、映画、演劇、ミュージカル、歌舞伎などのスタアインタビューは年間100本を優に超える。