25人+3匹が織りなす珍展開!
にぎやかな群像小説を楽しんで
『ドミノ in 上海』恩田 陸 ¥1700/KADOKAWA
直木賞を受賞し大きな話題となった『蜜蜂と遠雷』、青春小説の名作として今も読み継がれる『夜のピクニック』など、数々のヒット作を持つ恩田さん。LEE世代ならば彼女の初期作品で、ミステリー色の濃い『六番目の小夜子』を、思春期に親しんだ人もいるのでは?
最新作『ドミノin上海』は、多作・多ジャンルを書き分けることで知られる恩田さんの、ギャグセンスとエンタメ性を味わえる長編!
物語の主な舞台となるのは、上海の人気ホテル「青龍飯店」。ホテル内にあるメインレストランの料理長、ゾンビ映画を撮影しにやってきたスタッフたち、ホテル内で催されるアートフェアに呼ばれた高名な彫刻家など。まったく無関係な人たちが、この建物の中で奇遇な出会いを繰り広げていく。一方で、香港から幻のお宝「蝙こうもり蝠」が密輸され、売り抜けを目指す骨董商と、阻止しようとする警察とのひそかなる攻防戦が……。そのほか、地元の動物園でくすぶるパンダなど、総勢25人の人間と、3匹の動物が絡み合い、出会うはずのなかった人たちの偶然が連鎖して、物語は思わぬ展開へと転がっていく――!
何しろ登場するキャラクターの数が尋常じゃないのが、本著の大きな特徴でもあり、読みどころ。「誰が誰だっけ?」となってしまいがちな人は、冒頭にあるキャラクター図を確認しながら読み進めていくと楽しさが倍増する。それぞれのキャラクターたちのアクの強さや、会話劇のおもしろさにクスクス笑いながらも、物語を動かす大きなカギとなる、パンダの厳ガンガン厳の暴走ぶりにも注目!
元は野生だった厳厳が「動物園の人口密度に耐えられない」と、飼育員の目をかいくぐって脱走していくその姿は、まさに小説でしか味わえないファンタジー要素がたっぷり。パンダ好きでもそうでなくてもキュンとしてしまうこと間違いなし。そしてラスト。登場人物とお宝捜索の攻防戦が回収される場面では強い爽快感が味わえる! それと同時に、ここまで緻密な世界を作り出せる、小説家・恩田陸さんの手腕にあらためて驚くかも。
RECOMMEND
『からだとこころを整える』
田中のり子 ¥1400/エクスナレッジ
毎日のバタバタでこころに余裕を持てず、休息してるはずなのに疲れが抜けない。さらに若かったときには感じなかった不調が出始め……話のネタに事欠かない私たちの悩み。
そんな悩みに対して、本著ではLEEでおなじみのAYUMIさんやワタナベマキさんなどの暮らしの達人それぞれの健康習慣がためになる。不調かな?と感じる人には最適な処方箋かも。
『未来をつくる言葉』
ドミニク・チェン ¥1800/新潮社
台湾とベトナムのハーフでフランス国籍を持つ父と、日本国籍を持つ母の間に生まれた著者。情報学者として注目を浴びる彼が、自らの生い立ちを語りながら、言語、翻訳、インターネットを中心に、コミュニケーションについて考察した一冊。
自身も1児の父であり、アナログとデジタルが行き交う時代を「どう生きるか?」という問いは、子育てのヒントに!
『東京のレトロ美術館』
とに~ ¥1600/エクスナレッジ
元お笑い芸人で、現在はアートテラーとして活躍している著者が、東京都内のレトロな美術館を紹介するビジュアルブック。主に20世紀前半に建てられ、今は美術館に転用されている建物の楽しみ方を、わかりやすく教えてくれます。
特別な記念日や、たまには夫と二人で出かけたいとき、女友達と息抜きをしたいときなどの心強いガイドとなってくれる一冊。
取材・原文/石井絵里
この記事へのコメント( 0 )
※ コメントにはメンバー登録が必要です。