中学生のときに、いじめと不登校を経験した中川翔子さん。
母親とのやりとりや救われたこと、反発したり悲しかったこと……。当事者としての気持ちを語ってもらいました。
●この記事は2019年10月7日発売LEE11月号の再掲載です。
子どもの「不登校」に親ができることは?
「不登校」経験者、中川翔子さんにインタビュー
なかがわ・しょうこ●1985年生まれ。タレント、歌手、声優など多方面で活躍。近年は自身の経験をふまえて、NHKハートネットTV『♯ 8月31日の夜に。』などに出演して話題に。
母にいじめのことは言えなかった。でも、漫画を読んだり、笑い合うことで救われました
中川翔子さんは、中学生のときにいじめられて不登校に。靴を隠されたり、好きな絵を描いていたら「キモい」と言われたり……。
傷ついた中川さんですが、お母さんや周りの大人にはそのことを話せなかったと言います。
「一緒に旅行をしたり漫画を読んだり、親友のような母だったのですが、いじめのことは言えませんでしたね。恥ずかしいし、心配かけたくない。スクールカーストの底辺にいる自分は欠陥品みたいな気持ちにもなりました。
実際に不登校になってからもそれは変わらず『学校には行かない』の一点張り。『義務教育は行かないとダメなんだから行け!』『行かない』の繰り返しで、ついに怒った母がドアを蹴破り、私に馬乗りになったこともありました」(中川翔子さん)
そんな一連のやりとりの後、お母さんが見つけてきたのが、通信制の高校でした。
「できたての通信制の高校で、勉強内容や進学や就職ができるのかも、何もわからなかった。でも、スクーリングとレポート提出だけ守れば、できる範囲で自由に学ぶことができて私には合っていました。
最初はどうせ今回もダメだとふさぎ込んでいましたが、だんだんと学校に行こうという気持ちに。きっと母も、私に向いていると思って調べてくれたと思うので感謝しています。
それ以外にも母は、これまでどおり一緒に漫画を読んだり、好きなアクション映画を見たりしてくれて。笑い合える時間があるのはとてもありがたかったですね」(中川翔子さん)
「卒業したらラクになる」に反発!子どもに届く言葉選びも大切
親としてはつい、不登校の原因を追及して、問題を解決しようと思いがち。でも、親はまずは寄り添ってあげてほしいと中川さん。
「原因もわからず子どもが学校を休んだら、不安だと思いますが、子どもは問題が深刻なほど話せない。一緒に笑う、散歩に出かける、ごはんを食べるという時間が心を癒すと思います。ぜひ、親子で過ごすゆっくりとした時間をつくってほしい。その中で少しずつゆとりができて、学校に行こうと思える日がくるんじゃないかな」(中川翔子さん)
また、大人の言葉がけには気を配ってほしいとも。
「私は自分がいじめられているときに『私もいじめられてたよ。卒業しちゃえばラクになるから大丈夫』と言われて反発。『あなたはもう卒業したからいいけど、私は明日も明後日も学校に行かなきゃいけない。その時間は長いんだよ!』と。
こういう子どものときの気持ちは忘れずに持ちながら、大丈夫だと伝え続けていくことが大切だと思います。著書の『死ぬんじゃねーぞ!!』も、当時の私に声をかけるとしたら、どんな言葉を選ぶかなと考えながらまとめました」
中学校でのいじめ、不登校、死にたいと思ったことなど中川さんの実体験と、大人になったからこそ言えるメッセージが。自筆の漫画やイラストで子どもも読みやすい。『死ぬんじゃねーぞ!! 』¥1200/文藝春秋
「わが子が学校に行かず、昼夜逆転でゲームやインターネットばかりしていたら、親は『何してるの!』と言いたくなると思います。でも、私自身、不登校のときに、ネットで好きなアニメについて調べたり、同じ趣味を持つ人がいることを知って世界が広がりました。
将来引きこもりになったらと心配になると思うし、実際、そのまま大人の引きこもりにつながるケースもないとはいえませんが、10代のある一定期間の昼夜逆転やネット三昧は、少し我慢して見守ってあげてほしい。
そこから、将来の好きなこと、やりたいことが見つかるかもしれません。自分の力で動きだせるときがくるまで、口をはさみすぎずに、そばにいてあげてほしいですね」(中川翔子さん)
撮影/高村瑞穂 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
この記事は2019年10月7日発売LEE11月号『わが子の「学校へ行きたくない」に親ができること』の再掲載です。
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